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第三十八話 残留思念

はい、どうぞ。



 村を見付けて潰す、また別の村を見付けて潰す。

 ゼロ達はその繰り返しを続けていた。



 結果は、二日間で四つの村を潰したのだった。

 潰した村にあった物や死体はゼロのスキル、『収納』を使って入れていく。

 このスキルは空間魔法の一種であり、魔力が多いだけ収納出来る量も多くなるのだ。

 つまり、ゼロは吸収を続ける限り、収納が出来る量が増えるのだ。




「よし、今はこれぐらいで充分だな。おい、戻るぞ!」


 四つ目の村となれば、物は沢山集まり、今の拠点では置ききれないほどだ。

 集合を掛け、拠点に戻ろうとするが、ゼロの元に戻ってきたのはフォネスとマリアの二人だけで、シルはまだ戻ってきてなかった。




「シルはどうした?」

「あれ、まだ村の中を探索しているのかな?」

「マリアが呼びに行きましょうか?」

「……いや、みんなで行こう。何かあったかもしれん」


 今、いる場所は、村の入口の様な所だ。

 ここの村は襲った四つの村の中で一番広い。だから、声が届かなかった可能性もあるが、万の一に何かがあったら困るのでみんなでシルを探すことにした。

 三人は再び別れて、シルを探した。

 外からは人の姿が見えないので、『魔力察知』を使って家の中にある魔力を探したのだ。




「ん、なんであそこに?」


 反応を見付けたゼロだったが、その場所は村から少し離れた所で、そこに一つの家とシルを見付けたのだ。




「フォネス、マリア! 見付けたからこっちに集まれ!!」


 『威圧』でフォネスとマリアを呼び掛ける。

 だが、シルはこっちに気付いてないようだ。

 普通なら間違いなく聞こえているはずなのに、こっちを見ない。




(何があった?)

『……他の魔力の反応はない』

(ということは、声を無視か?)

『……違うと思う』

(どういうことだ?)


 ゼロ達はシルがいる場所にもうすぐで着くが、シルはまだこっちに気付かない。




「シル、何があった?」

「どうして、こんな所に……?」


 目の前には一件の家があるが、どう見てもボロボロで誰かが住んでいるようには見えない。

 だが、そんなことより今はシルのことだ。




「おかしい……」

「ええ、ここまで近付いてもこっちを見ないなんて……」

「でも、『魔力察知』には他の反応はないですよ?」


 これでは何もわからないので、肩を叩いて呼ぶことに。




「シル! 聞こえているか!!」

「にゃ!? ……ゼロ様、いつの間に?」


 肩を叩いたことで、ようやくこっちに気付いたようだ。

 シルはこんなに近付いても、肩を叩くまではこっちに気付かなかったようだ。




「何があった?」

「え、何か言いました?」

「だから、何が起こったんだ?」

「…………?」


 シルはゼロが言っている言葉がわからず、首を傾けていた。




「これは……、どうやら、耳が聞こえないみたいです」

「は?」


 何を言っているんだ? 耳が聞こえなくなっているだと?

 それはおかしいと思い、ステータスを見てみた。だが、何も変わった物がない。




(レイ、聞こえなくなったって、敵の攻撃を受けたということか?)

『……ううん、敵の魔力も感じないから違う』

(しかも、聞こえないのはシルだけなら、場所は関係ないな)

『……うん、シル以外は音が聞こえるみたい』

(なら、ここにいるから聞こえないわけはないな。他の可能性は……その家か?)

『……うん、それしか思い付かない……』


 シルだけが聞こえなくなっている。

 シルはその家に近付いたから耳が聞こえなくなった可能性が高いのだ。




「どうやら、まだ拠点に帰してくれなそうだな。そこの家を調べてくるから、二人はシルを頼むぞ」

「ま、待って下さい、一人で行くんですか!?」

「危ないと思いますので、皆で行った方が……」

「いや、戦いになったらシルが危ない。叩かれるまでに気付かなかったからな。だから、二人はシルを守れ、これは命令だ」

「「は、はい」」


 シルには声が届いてないので、手で待ての命令を出した。

 シルはそれを理解したのか、頷いた。




(さて、何が出る?)

『……人間、魔物、魔人の反応はない。……物?』

(かもな。『魔力察知』は物を感じ取れないからな)


 とりあえず、中に入ればわかると思い、ボロボロの家の中を調べていく。

 中は物があんまり少ないから探しやすいのは助かる。




(ふむ、部屋は二つだけで、二階はなしか)

『……部屋の二つの、どちらかが怪しいね……』

(ああ、魔力は感じないが警戒しておこう)


 ゼロはまず、一つ目の部屋に向かう。

 扉にはドアノブがなかった。

 だから、ゼロは蹴って開けた。








 …………何も起こらない。この部屋は机と椅子しかなかった。

 周りや下を調べたが、変わったものはなかった。




(この部屋には何もないな?)

『……うん、次に行こ……?』


 一つ目の部屋はハズレだったようだ。

 この部屋には何もないとわかり、すぐに次の部屋に向かった。

 今度の扉にはドアノブが付いていた。

 今度は付いていたのだが…………






 ドバァン!!






 また蹴り飛ばしていた。

 何故、ドアノブで開けないんだと思うかもしれないが、ここはボロボロであり誰も住んでない。

 だから、遠慮はしなかっただけなのだ。




「ここは寝室か?」


 二つ目の部屋は、ベッドがあった。だから、寝室だと予測した。

 そこで、ゼロはここにあるはずはない物があることに気付いたのだ。









(……なんで、ここにこれが?)

『……どういうこと?』


 ベッドの上で見付けた物は、ゼロとレイが良く知っている物だった。

 それは…………






 音楽プレイヤー






 だった。

 四角い形で、手の平程度の大きさ。

 まさに、地球にいた頃に良く見たものであり、ここにあるのは有り得ないことだったのだ。




(おかしい、ここにあるはずが……)

『……あ、もしかして……』


 ゼロは混乱したが、レイは一つの推測を思い付いた。

 そう、召喚だ。




『……勇者の名前、日本人っぽかった』

(そういえば、そうだったな。まさか、これも召喚された者が持っていたと?)

『……でも、この持ち主は多分……』

(死んでいるか)


 この音楽プレイヤーはなんとか形を持っているが、ボロボロなのだ。

 つまり、この音楽プレイヤーは今よりずっと前に召喚された者が持っていた可能性が高い。

 攻撃を受けてない限り、5〜10年でこんなにボロボロになるとは思えなかったからだ。




(音楽プレイヤーか、シルが聞こえなくなった原因はこれっぽいな)

『……でも、何故、シルはこれを持ち出さなかった……?』


 そう、シルにとっては見たことがない物だ。それをここに放っているわけがないのだ。

 なら、何かあったということだ。




(シルならボタンでも押していそうだな……)

『……ありそうだね……』


 シルはまだ精神的には子供に近い。おそらく、知らない物を見付けて興味を持ったのだろう。

 そして、弄ったら耳が聞こえなくなり、外に出されたのだろう。




「ふむ、やってみるか」


 弄ったら危険なのはわかっているが、このままではシルは耳が聞こえなくなったままだ。

 ゼロはシルのためでもあるが、興味が出たのだ。

 自分が弄ったらどうなるか…………






 〜〜〜〜〜♪






 弄ったらなんと、音が出たのだ。

 音楽プレイヤーは壊れているから音は出ないはずが、音楽が聞こえていた。




『……なんか、悲しい音楽だね……』

(……ああ)


 曲はわからないが、悲しい音楽だと理解した。

 音楽はまだ続くと、だんだん、人の言葉になっていることに気付いた。






 〜〜〜コ、〜〜わす〜〜こわす!〜〜くに、を〜〜ヒトを〜〜コワァァァァァ〜〜〜すぅぅぅ〜〜!!!






 音楽に混じって人の声が出ていて、壊す、国、人などの言葉が出ていた。




(……何かわかったか?)

『……うん、魔法じゃない』


 ゼロも音楽が流れたとこから気付いたのだ。

 この音楽プレイヤーからは魔力を感じないが、別のものを感じたのだ。

 それは、ゼロだからわかったことなのだ。

 フォネスとマリアだったら訳もわからずに、シルのようになっていただろう。




(俺が霊だからわかったみたいだな)

『……うん』


 そう、霊の魔物であるゼロだからわかったのだ。

 音楽プレイヤーから感じる、その正体は、妖気だったのだ。

 これは魔力ではないので、シルも正体がわからないまま、音楽で術を掛けられて音が聞こえない状態にされただろう。

 ゼロには、正体がわかったので、防げた。

 妖気には、妖気で防いで術に掛からないようにしたのだった。




(これは大きな発見だな?)

『……うん、妖気は妖気でしか防げない』

(これで、妖気を使えない相手には防げない術を使えるな)


 妖気と魔力は違った性質で、魔力は魔力で防げるが、妖気は魔力では防げない。

 霊の魔物だから、ゼロはすぐに気付いて使えたが、妖気はまだ謎が多い。

 だから、検証が必要だが、配下達にも出来れば使えるようになってほしいなと思うゼロだった。




(正体はわかった。この召喚された人は何故かわからないが、召喚されたことを恨んでいたみたいだな)

『……召喚された人は全員が幸せになれるわけがないと、言うことだね……』

(おそらく、あの勇者は待遇が良い方だろうな)

『……だね。この残留思念は、勇者になれなかったかな?』

(多分な。そろそろ終わらせよう)


 ゼロはまだ音楽が流れ続ける音楽プレイヤーに吸収を使った。




「この恨みは、俺が果たそう。だから、ゆっくり眠れ」


 その言葉に呼応するように、だんだんと音楽が弱くなって…………









 最後にはボロボロだった音楽プレイヤーが砂の様に崩れたのだった。






 更なる力を手に入れたゼロは、手に残った砂の様な物を「ここがお前のお墓だ」と言うように、部屋に撒き散らして部屋から出たのだった…………







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