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第二十六話 参戦する勇者

少し遅くなりました。

明日からは一話ずつになりますので、よろしくお願いします。



「お疲れ様」

「ありがとうございます!」


 アリトスを燃やし尽くしたフォネスを労っていた。

 あっさりと魔王ラディアの第五の配下を倒したフォネスの実力は前より上がっているのを見て取れた。



(あっさりと倒すとはね)

『……成長している』

(やはり、魔物の死体を集める時に色々なことを試していたかもな)

『……死体が残ってないね』


 フォネスの技、”豪爆炎上ダイナログ”は今まで見たことがない技だった。

 内部から破壊し、死体も残さない技のようだ。


 アリトスは、希少スキルを持っていなかったが、固有スキル『操糸』を上手く使って、希少スキルを持っていたオズールよりの上、第五の配下に納まっただろう。

 確かに、普通の人間や魔物では糸を使った素早いスピードで翻弄され、酸攻撃を防げなかっただろう。

 フォネスがその上に行っただけでアリトスは決して、弱いのではないのだ。




「マリア、戦争の方はどうなっている?」

「うーん、魔王の方が優勢かな?」


 戦況はあまり変わってないようだ。しばらくすれば聖騎士や竜騎士が魔王と相対するが、その前に魔王が人間の王がいる城に着きそうだ。

 王様が討ち取られたなら、人間側は負けが決まってしまうだろう。






「ん、あれは……」


 魔王に向かう人間がいた。ゼロも知っている人間だった。

 そう…………




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「弱い弱いぞ!! 足止めにもならないな!! アハハハハッ!!」


 未だ、兵士達は魔王達に蹂躙され、進路は城に向かっていた。

 このままでは、聖騎士と竜騎士が向かう前に魔王が城に着いてしまうが……




「待て! この僕達が相手だ!」

「あん? テメェは誰だ?」

「勇者のカズトだ!」

「勇者? ここにもいたのか? まぁいい、誰が出て来ようが問題ねぇ!!」


 一緒に来たマギルとテリーヌも兵士と共に、魔王の配下を相手にする。

 その間にカズトが魔王と相対する。




「カズト、油断するな!」

「私達が配下達を倒すから!!」


 カズトはその声を聞き、『正義者ヒーロー』を発動し、魔王ラディアに向き合う。

 カズトはまだ成長途中で、素では魔王ラディアに勝てない。さらに、『正義者ヒーロー』を使えば勝てる可能性は少し上がるが、確実に勝てるかわからない。

 だが、今は勇者しか相手にならないため、勇者が魔王との戦いに参戦しているのだ。

 魔王ラディアのランクはSSランク、能力は余り分かっていないのだ。何故なら、戦争に身を乗り出したのは今回で三度目なのだからだ。

 今までの戦争は軍隊の後ろに構えて、指示しかしてない。だが、今回は自らも出ている。

 おそらく、この戦争は勝てる自信があったから自らも出てきたと思う。




「ハァァァ!!」

「甘ぇんだよ!! ”闇強化ダークブースト”!!」


 魔王ラディアは、闇で身体と武器を強化し、カズトと打ち合う。




「”輝剣シャインソード”!」




 カズトは光魔法が包む剣で魔王を切り伏せようと勢いをつけて切り込む。




 魔王ラディアが何故、魔王と呼ばれるのは、由縁があるのだ。

 魔王ラディアの称号には、”勇者殺し”と出ている。

 今まで勇者と出会い、二人の勇者を殺したという経歴があるからだ。

 そう、魔王ラディアは…………




「無駄だ! 『聖転闇符ロールデイモン』発動!!」




 カズトが纏まっていた剣の光魔法が闇魔法に切り替わる。




「なぁっ!?」

「ははっ! 闇なら効かねぇ!!」


 闇魔法が纏う剣は、手で掴む。

 魔王ラディアは、『闇無効』を持っているので、ダメージは皆無になる。

 何故、勇者を二人も殺せたのかはおわかりだろう。

 魔王ラディアは光魔法を闇魔法に転換させる、希少スキル『聖転闇符』を持っていて、光魔法を使う勇者の天敵なのだ。




「く、この!」


 カズトは掴まれた剣を引き抜こうとするが、力は岩鬼族である魔王ラディアの方が強かった。

 岩鬼族とは、土魔法と闇魔法を得意する種族だ。

 魔王ラディアは魔物ではなく、魔人になっており、上位魔物より力があるのだ。




「これだけか? 前の勇者の方が強かったわ!!」


 魔王ラディアは、カズトの剣を横へ振り回して、カズトごと吹き飛ばす。




「あぐっ!?」

「ははっ! まだまだだろ、楽しませてみろ!!」


 兵士がいた所に飛ばされていたので、傷は浅い。カズトはすぐに立って、光魔法は使わずに剣技だけで戦う。

 だが、カズトは日本から召喚されて一ヶ月は経ってなく、剣も素人に近いほどだ。

 マギルとテリーヌから特訓という地獄を受けて少しは前よりマシになっているが、長年、魔王をやっている相手にはキツイ。




「クソ! 当たらねぇ!?」

「遅ぇんだよ! こんな剣で俺を殺せると? ナメんな!!」

「がぁ!」


 剣のスピードは『正義者ヒーロー』のお陰でただの兵士ではついてこれないほどに速いが、魔王ラディアにとっては遅いぐらいだった。

 魔王ラディアはいたぶるためなのか、すぐに殺さずに剣ではなく拳でやっていた。

 拳でさえも、『正義者ヒーロー』で身体強化してなかったら内臓破裂を起こしているとこだった。

 手足も出ない勇者の姿に兵士達は怯え、逃げる人も出てきた。

 魔王の配下達もマギルとテリーヌを相手にしているが、一人も欠けずに善戦していた。

 マギルとテリーヌはSランクの冒険者であり、一対一なら魔王の配下を倒せる実力を持つが、魔王の配下達の連携で二人を追い詰めていた。




「がぁ、ち、畜生ぅぅぅ!!」


 急にカズトの動きが鈍くなってきた。『正義者ヒーロー』の効果が切れ、身体は凄まじい筋肉痛で魔力も切れた。




「あ? もう終わりかよ?」


 急に動きが鈍くなった勇者に失望していた。

 拳で壁まで吹き飛ばされ、勇者はまだ意識はあったが、動けなくなっていた。




「お前は勇者の中で一番つまらねぇ奴だったな」


 魔王ラディアは離していた剣を拾い、ゆっくりと歩いてカズトの元に向かっていた。

 マギルとテリーヌはそれに気付いて助けに行きたいが、背中を見せたらこっちがやられてしまう。

 他の兵士は逃げたか、死んだため、その場に残っているのは、魔王側と勇者パーティだけだった。




「最期に言いたいことはあるか?」

「うぅっ……」


 魔王ラディアは最期の言葉を聞くが、カズトは壁に打ち衝かれたため、呻き声しか出ない。




「もう話す力はないか。勇者よ、じゃあな……」


 剣を振りかぶる魔王ラディア。

 カズトはこの時、考えていた。




 もう死ぬのか………? と、恐怖が今になって湧き出てきた。だが、悔しさもあった。

 少しの時間しか動いてないのに、もう動けなくなって、仲間の足を引っ張っている。

 仲間と肩を並べて戦いたいが、自分は『正義者ヒーロー』を使わないと肩を並ぶさえも出来ない。

 今まで、仲間に良くしてくれたのに、恩返しが出来ず、何も出来ないまま死んでしまう。

 それが悔しく、死にたくないと思った。


 だが、目の前には、剣が迫りつつにある。

 カズトは最後に仲間に心の中で、謝りながら目をつぶるしか出来なかった。



……………

………






 …………あれ? 何も起こらない?




 カズトは何もないことがわかり、そっと目を開けて見ると…………






 目に入ったのは、一ヶ月前までは見慣れていた服を着た男が魔王ラディアの剣を受けていた…………






 そう、その正体はニヤニヤと嫌みな笑みを浮かべたゼロだった。







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