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第二十五話 第五の配下アリトス

はい、どうぞ。




 …………ついに、始まった。




 メイガス王国に攻める魔王ラディアの軍隊。

 メイガス王国には、近隣の街から沢山の聖騎士と竜騎士が配属されている。


 メイガス王国は、三分の一も壊滅され、人の数が減っている。もし、そこに魔王が攻めてきたら終わりだろう。

 そうならないために、復旧するまでは近隣の街から配属されている。


 ゼロは、魔王の軍隊が攻めてくる前に遠めの場所に行く依頼を受けて、街を出ているのだ。

 これで、街の中にゼロがいなくても怪しむ人はいないだろう。




「思ったより少ないね」

「ああ、大体だが、人間は2000人に魔王ラディアの軍隊は1000人だな」

「数は人間だけど、質は魔王軍だね」


 ゼロ達は戦争に巻き込まれないように、メイガス王国の隣にある山の頂上にいた。

 一番高い木の上で三人は戦争を観戦していた。


 人間の勢力は聖騎士が200人、竜騎士が100人で他が冒険者と城の兵士達だ。

 魔王の軍隊は隊を200人ずつに分けて五つの隊を作って同時に攻めていた。

 本来なら、魔物を従うオーガ達が奇襲をして、本隊が攻める予定だったが、人間側には沢山の聖騎士に竜騎士がいて、混乱しているようだ。

 だが、戦争を始めたことには、退くわけにはいかない。




「うーん、石像族に猪人族が多いから、魔法より前衛な戦いになりそうね」

「将みたいな奴はいたか?」

「うん、隊に一人が後ろで指揮をしているよ」

「それが上位の配下って奴か?」

「うーん、遠すぎて力まではわからない〜」


 三人の中で一番目が良いフォネスが教えてくれた。

 魔王の軍隊はほとんどCランクの魔物で、ネームドモンスターが一人ずつ配属されていて、その魔物が指揮をしているようだ。

 ネームドモンスターはBランクで考えると聖騎士が二人で倒せると思う。




「マリア、どっちが勝つと思う?」

「そうですね、今も魔王が出てないなら人間が勝つと思います。魔王が出てきたらわかりませんね」

「ふむ、フォネスは?」

「うーん、マリアと同じかな?」


 二人とも、人間が勝つと予想しているようだ。

 ゼロは…………魔王の方だと考えている。




『……私も魔王だと思う』

(だよな。魔王ラディアは、長く戦争してきた魔王らしいな? なら、この程度とは思えない)


 さらに、指揮している奴は強いとは思えなかった。何故なら、五つの隊の内、一つが倒されたのだ。しかも、指揮をしていた魔物はあっさりと死んだからだ。




(この中には上位の部下がいない……?)

『……かもしれない』


 いないなら、何処にいるのか…………




 と、魔王の軍隊が攻めてきている街の反対から門が爆発が起こった。




「あ、あそこに別の軍隊が……」

「なるほど、守りの薄い場所から攻めてきたのですね」


 そこにいたのは、たった10人だけの軍隊だった。

 その軍隊には…………




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「ま、魔王ラディアだぁぁぁ!!」

「たった10人だけだと!?」

「魔王ラディアがいようが、10人だけなら勝てる!!」


 兵士達は10人だけだとわかり、さらに魔王もいる。それをチャンスだと思い、士気を上げて攻めていく。




「ははっ!! たった10人だけだと思って考え無しに攻めるなんて、愚かな!!」


 魔王が9人の魔物、魔人に命令を出す。




「愚かな奴らを殺し尽くせ!!」


 ここにいるのは、城の兵士だけ。聖騎士や竜騎士は沢山の魔物の方に向かっていて、反対側に行くには、まだ時間がかかる。

 その時間の内に、第五の配下を除く第一〜十の配下が兵士達を殺し尽くす。




「相手にならねぇな!!」


 魔王は吠える。魔王自体も戦争に身を乗り出して人間を殺していく。

 兵士程度では、傷一つも付けられずに死体が増えていく。


 こうしてワンサイドゲームのような殺戮になっている頃…………




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「あー、人間の負けだね」

「軍隊が囮で反対側からの少数精鋭が本命だったわね。まさか、魔王自体が出て来るとはね……」

「それだけ、自分に自信があるんだろう」


 ゼロ達は冷静に勢力を分析していた。

 あの少数精鋭が魔王と上位の配下達だろうと、分析出来た。

 それはいいが…………




「そろそろ出てきたらどうだ?」


 ゼロは登っていた木から跳び降りた。続いて、二人も跳び降りる。




「まさか、気付いていましたか」


 木の影から一匹の魔物が出てきた。

 その姿は、上半身が人で、下半身が蜘蛛だった。




「では、誰か教えてもらおうか? 予測出来ているがな」

「そうですか。私は魔王ラディア様の第五の配下であるアリトスと申します」


 ステータスで確認すると、種族は蜘蛛人族アルトニーと出ていた。




「では、その部下が何故、戦争に参加せずにここにいる?」

「ふふっ、決まっているではないか。貴方はオズールを倒したのでしょう?」

「ああ、倒したが?」


 それに問題が? と言うような雰囲気を出すゼロ。

 しかし、どうやって知ったのか気になるゼロだった。あんな魔物、前に一度も『魔力察知』に引っ掛かっていなかったのだからだ。

 それから、オズールを倒したことを言ってきたが、オーガのことや街を攻めたことを言ってこないことも疑問なのだ。




「では、どうやって知ったんだ?」

「私の可愛い子供が見たのですよ。その記憶を見せてもらったのでわかりましたよ」

「なるほど。で、俺をどうするんだ?」

「魔王ラディア様の下につくか、死のどちらかになりますね」

「そうか、答えは決まっているな」


 フォネスを手で呼び、命令する。




「フォネス、俺に下につけとほざく虫けらを燃やし尽くせ」

「御意に!」


 ゼロの答えはアリトスの死だ。

 欲しいスキルがないアリトスの相手は、フォネスに任せることにした。




「おや、虫けらと言われるなんて、初めてですよ」

「貴方の相手は私がやりましょう」


 フォネスは前に出て、威嚇するように、三本の尻尾を立てる。


「おや、たかが三本だけの九尾族が相手をすると? 失笑ですね」

「そうです。貴方はこれから、たかが三本だけの九尾族に負けますよ。虫けら、来なさいな」


 その言葉に琴線に触れたのか、アリトスは怒りで覇気を放っていた。




「ふざけんな? 第五の配下の私が負けると言うのか!!」


 アリトスが動いた。周りは森で蜘蛛人族の狩場とも言える。

 アリトスが動いた時、ゼロとマリアは後ろに下がってフォネスに任せていた。

 フォネスは大剣を肩に担ぎ、剣には魔素が纏まっている。




「”蜘蛛粘糸ネバーケイト”!!」




 アリトスはまず、沢山の木に糸を吐き出して、足場を作り出してからフォネスに粘りがある糸を吐いた。

 フォネスは避けずに、大剣で切り捨てた。




「なっ、糸がくっつかないだと!」


 フォネスの大剣には魔素を纏まっており、粘りのある糸程度ではくっつかない。




「なら、これでどうだ! ”跳躍散酸ロンドウェブ”!!」


 張った蜘蛛の糸で木にドンドンと跳び移りながら上から酸を吐き散らす。

 普通なら、蜘蛛の跳躍で姿を見失い、酸も上空から予測出来ない動きで散らされて避けるなんて不可能だったが……






「この程度ですか?」






 フォネスはアリトスの後ろにいた。




「な、何だと!?」


 フォネスはアリトスの動きは完全に見え、酸も鬼火で燃やし尽くしていた。

 大剣はわざわざ汚す必要があるとは思えないので、もう鞘に仕舞い、右手をアリトスに突き出していた。




「”豪爆炎上ダイナログ”」


 アリトスに向けられた技、”豪爆炎上ダイナログ”は、小さな紅い球の様な物を身体に埋め込み、爆発を身体中に連鎖して破壊し、燃やし尽くす。




「ガァァァ! か、身体が熱いぃぃぃ!!」


 身体の中で小さな爆発が起きていて、爆発が起きた場所から燃えていっているのだから、痛みと熱さは凄まじいものだろう。




「苦しみ、ゼロ様を馬鹿にしたことを悔やんで死になさい」


 フォネスはこれで終わりだと言うように、燃えつづけ、悲鳴を上げつづけるアリトスに背を向けてゼロの元に戻る。




 魔王ラディア、第五の配下であるアリトスはフォネスの相手では何も通用もせずに、消えるしか出来なかったのだった…………







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