第十八話 遺跡の探索依頼
はい、どうぞ!
ゼロは「遺跡の探索」の依頼を請けることに決め、リディアがいる窓口に向かった。
「リディア、この依頼を請ける」
「あ、ゼロ様。ええと……、これは街から一週間ほどの距離がある遺跡の探索ですね。この探索は、遺跡にある物をいくつか持ってくることで依頼達成となります」
「あれ、もう見付けてあるのか? あと、物を持ってくるだけでいいのか?」
「はい。一週間前に見付けたと報告がありました。持ってきた物があれば、どれくらい前からあるのか、どんな技術を持っていたのか、ある程度わかりますので」
「なるほど。それぐらいなら、ギルドに依頼しなくても出来ることでは?」
「そう思われるかもしれませんが、あの遺跡には魔物が住み込んでいて、危険なのです」
「それでか……」
つまり、建物内を隅々まで歩き回らないで中にあった物を持ってくるだけでいいらしい。
ただ、魔物が入っていく姿を見た情報があったため、依頼者は研究者であり、力もないので冒険者に頼むらしい。
「了解した。請けたのは俺らだけか?」
「いえ、1、2組はいて、先に出発しました」
「この依頼は早い者勝ちなのか?」
「物は沢山あるほど、良いので物を持ってきた全ての冒険者に報酬を渡すと言っておりました」
早い者勝ちではないなら、慌てる必要はないのだが、ゼロとレイは別のことを話していた。
(レイ、遺跡はもう場所までばれているし、拠点には向かないと思えるな?)
『……うーん、ギルドまで場所を知っているなら、止めた方がいいかも……』
ゼロとレイはまだ遺跡を見つかってないと思ったから、遺跡を探すとこから始まるかと思ったが、違ったようだ。
拠点は諦めることにするとして……
(まぁ、遺跡は本物のを見たことはないし、観光に行く気分でいいんじゃない?)
『……そうだね。知らないスキルを持つ魔物がいるかも』
拠点は諦めるが、住み込んでいる魔物が気になる。
もし、仲間に出来そうならするが、役に立たなそうならスキルを奪うだけでもいいし。
「内容はわかった。期限は?」
「ありません。行くなら、準備をしてから行ってくださいね」
ゼロ達は武器以外は何も持ってないから、リディアは忠告したようだ。
そのままの装備では、旅するのに危ないと。
「わかっている。そこまでの馬鹿じゃないさ」
「そうですよね、お気をつけて下さいね!」
リディアはそうそうゼロ達が死ぬとは思えなかったので、心配はあまりしてないが、軽く忠告だけしたのだ。
(まぁ、そのまま行くけどな……)
『……リュックだけはあった方がいい』
(そうだったな。物を入れる物が必要だな。そこはアイテムボックスが欲しいな……)
『……うん、時空魔法みたいなのあるかな?』
(まっ、地道に探すしかないな)
リュックと水と食料を少しだけ買ってから出発した。
食料はほとんど現地で見つけるから、少ししか買ってない。
人間であるマリアがいるから買った食料は非常食である。
もしも、食べれる物が見つからなくても、ゼロとフォネスは魔素があれば、行動できるが、マリアはそういかないのだ。
「食料は現地で調達する。水は買ってあるが、川を見付けたらそれを優先に飲め。ただし、細菌の心配もあるから、フォネスが消毒した後に飲むこと」
サバイバルみたいな旅になるような話に聞こえる。普通の冒険者なら、買い込んでから行くのだが、ゼロ達は現地で調達する実力があるのだから、あまり荷物は少ない。
(マリアは人間だが、火を通せば、身体に被害はないよな?)
『……うん、その心配は必要ないと思うよ。この世界の人は免疫が強いから』
レイはこの前、コーラスの身体を弄ったからわかることだが、身体の仕組みが前の世界の人間と少し違っていたのだ。
この世界には魔法の源である魔力(魔素)がある。それを通す回路がこの世界の人間にあったのだ。
さらに、病気になりにくい身体でもあった。
そのことを軽く説明してくれたゼロは感心していた。
(ほぅ、人間も魔法を使うための回路があるんだな)
『……まだ魔法使いに会ってないけど、人間は魔法を使える』
(魔法使いか、それを吸収すれば、俺も魔法を使えるかな?)
『……間違いなく使える』
(ほう! それは楽しみだな!!)
もし、旅の途中に魔法使いを見付けたら襲ってやろうと決めたゼロ。
準備も終わったので遺跡がある場所に向かう。
「お、反応があるぞ」
大体二時間ほど歩いたら、魔力察知に反応があったのだ。
二人はまだ反応に引っ掛かってない。
「二つあるな。スキルがなかったら任せるが、あったら俺が相手する」
「あの、それはマリア達を心配してですか?」
何故、スキルがあったら主であるゼロが自らから戦わなければならないのか、マリアは気になったのだ。
「そういえば、説明してなかったな。 俺はスキルを奪うというか、吸収するスキルを持っている」
「え、そうなんですか!?」
そんなスキルを持っていることに、驚愕するマリア。だが、それよりも驚愕する言葉を聞くことになる。
「ゼロ様は凄いのですよ。前に魔王の部下からスキルを吸収していましたし」
「ま、魔王の……部下……?」
「そうだ、魔王ラディアと言っていたな。 その第八の部下、オズールは俺が欲しいスキルを持っていたからな」
マリアは初めて知った情報に口をパクパクとして、次の言葉を継げないでいた。
「だから、欲しいスキルがあったら俺が吸収したいわけだ。わかったか?」
「は、はい! まさか、ゼロ様は魔王の部下を倒していたとは……」
「相手にならなかったがな」
ゼロはオズールとの戦いの時、レイの攻撃予測がなくても時間はかかるが、倒せたのだ。
武器に時間制限があったといえ、レイの攻撃予測に頼ったのは……楽に勝てるから、使っただけなのだ。
ゼロは楽に倒せるなら、使える物は使うという性格なのだ。
「あ、相手にならなかったって……」
「はい。私は見ていただけでしたが、ゼロ様は無傷で勝っていました」
「私が思っていたより、ゼロ様は凄いのですね……」
スキルに、魔王の部下のことで驚きばかりだったが、認めた主がそれ程に凄いと再認識し、嬉しくも思ったのだ。
さらに、マリアはゼロ様に出会うまでは、そこら辺の人や魔物には、実力で負けない自信があったのだ。
だが、ゼロ様の前にしては、マリア程度など、足元に及びつかない。
マリアはそれがわかり、ゼロ様のいる領域に近付けるように力を求めるようになった…………
「そろそろ、出会うから話はここまでだ」
話を切り上げ、ゼロは相手のステータスを確認した。
ゼロはガッカリと言うように、ため息を吐いた。
「何だよ、ただのオークか。二人に任せた」
「「御意に!」」
二人は新しく買った武器を試すように、身体強化されたスピードで切り捨てた。
オークは何もできずに、地に崩れるだけだった。
(オーク程度じゃ、魔素を吸収しても雀の涙にしかならないしな)
『……単体のオークはランクで、言うとFだからね』
(そうだな、ランクがD以上なら魔素も多いだろう)
『……ゴーレムぐらいの実力なら、魔素も多いしね』
魔素が少ない魔物から吸収しても少な過ぎるから、D以下でスキルがない魔物は二人に任せることにした。
「やっぱり、相手にならないな」
二人もそこら辺の魔物と実力がありすぎて、運動にもなっていないのだ。
「この依頼で大物に会えるといいんだがな……」
「そうですね、初心者の森から離れれば、ある程度の魔物に会えるかと思います」
「マリアも戦うなら強い魔物の方がいい」
二人もあの魔物程度じゃ、不燃焼気味らしい。
依頼が終わったら、強い魔物がいる場所に行くのもいいかなと考えるゼロだった。
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