第百七十二話 エピローグ
最終回です!!
今回は八話も載せていますので、まだ読んでいない方は戻って読んで下さいね。
はい、どうぞっ!!
ルーディア帝国
戦争が終わってから一ヶ月経った。まだ戦争の傷跡が残っており、戦争が起きたことの激しさはこの傷跡が物語っている。
ルーディア帝国では、魔神ゼロを倒したと言うことで、立派なカズトの像が建っていた。たった一ヶ月だけで作り上げるなんて、呆れるとこだろう。
もし、本人が見たら顔を赤くするのが見えている…………
そう、もし(・・)だったらだ。
今はカズトはこの世界にはいない。いや、前の世界へ帰ったではなく、戦争の終幕から三日後に亡くなっているのだ。
理由は、『魔泉王』を無理な使い方をして命を削ったのと『救済神』の反動があったことにより、カズトの身体が耐えられなかったのだ。
そのような結末になってしまったが、カズトは最後に笑っていた。これから死ぬとわかっていたが、怖くはなかった。
寿命が短くなっているのは、わかっていたし、仲間が生きている、守れたことに喜んでいるのだ。
そのカズトの最後の言葉は、あのゼロと同じ「ありがとう」だった。
カズトの死を見送ったマギルやテリーヌはその言葉が心に刻まれていて、一緒にいた思い出は死ぬまでは忘れることはなかった…………
ミディの屋敷
「ふむ、近い内に約束が果たされそうだな」
「はい?約束とは……?」
ロドムは最近、約束をしたことがあったのか?と考えてみるがわからなかった。
「くくっ、まだわからなくてもいい。すぐにわかることなのだから…………ハハッ、ハハハハハハハッ!!」
ミディの屋敷では、ミディの笑い声が木霊して、響いていくのだった…………
ソナタの幻想世界
ここは、ミディの陣地であり、ミディから借りている土地だ。ソナタがここで幻想世界を作ってあり、ゼロの仲間達がここで住んでいる。
そこにはーーーー
「ねぇねぇ、まだフォネスは出てこないの?」
「ええ、困ったもんですね……、いつまで引きこもるのだか」
シルとマリアの姿があった。2人の話からには、フォネスが一つの家に引きこもっているのだ。その理由はわかりきっている。
「まさか、ゼロ様が死ぬなんて、思わないからフォネスの気持ちはわかるけどね……」
「だからって、引きこもる理由になりません。普通に生活して待てばいいのですから。ゼロ様の気配は消えましたが、必ずいつか帰ってきます」
マリアは信じている。いつか私達の元へ、待っている場所へ、必ず帰ってくると。
それはフォネスも同じだが、いつも近くにいただけに長く離れることに寂しさを感じているのだろう。マリア達はそれをわかっているけど…………
「それでも、一ヶ月は長すぎです」
「あー、メロンだ。どうやら食べてくれなかったみたいだね」
メロンが向こうでソナタて話しているのが見えた。メロンの手には飯が乗ったお盆を持っていたが、冷めたまま持っていることから、フォネスは食べなかったようだ。
フォネスの身体は不老であり、何も食べなくても魔素があれば、餓死で死ぬことはない。だが、空腹感は感じるので、食べないよりは食べた方がいいのだが、フォネスは一ヶ月も食べてない。
「はぁ、仕方がないわね……、引っ張り出しましょう。シル」
「了解ー」
二人はフォネスの家に向かい、フォネスを外へ引っ張り出そうと思っていたが…………
「あれ、フォネス?」
「あー、出てきた」
家の前には、フォネスの姿があった。何故、今に出てきたのか聞いてみたら、
「ずっと私がやりたいことを考えていたの」
やりたいこと、今まではゼロに出会ってからゼロの言うことに従って動いていたため、自分からやりたいことをやろうとは思っていなかった。いや、やりたいことがなくて、ゼロと一緒にいたいために行動してきたから、今はゼロがいないからやりたいことがなかった。
フォネスは最後、ゼロからやりたいことをやれと言っていたから、一ヶ月は悲しみに耐えながら考えていた。
「私はゼロ様を信じて待つのもいいけど、世界中を見回って、ゼロ様が帰って来た時に案内してあげたい。それが、私がやりたいこと……」
「それは面白そうわね」
ゼロに案内をしてあげたい。それはゼロがいなければ、叶わない願いなのだが、フォネス達はゼロ様が帰ってくるのを信じている。
フォネスとマリアなら転移も出来るので、いつでも帰れるから何もしないで待つよりはいいだろう。
防衛のことなら、ヨハンが地下で研究をしているし、魔王級が1人はいれば充分だと考えているので、フォネス、マリア、シルは世界中を見回ることになった。
「あら、ゼロ様から貰った指輪が光っている?」
「私のも……」
前に人間の街で貰った指輪がフォネスの案を祝福するように光っていた。
「ゼロ様も喜んでくれているのかな……」
「うん、そうだね」
「楽しみ~」
ゼロがいない日常、彼女達は逞しく生きていくのだった…………
2XXX年の東京、春になって桜が咲き始めた頃…………
ここはお墓が並んでいて、1人の男が立っていた。見た目は高校生だと思える歳であり、何処にもいる黒髪に黒目である。男の前には、一つの墓があり放って置かれていないのか、綺麗な墓石だった。
「ようやく、見つけたか……」
その男はぽつりと言葉を零す。男の身なりはキチンとしたスーツの姿で手には花束を持っていた。
「あら……、どなたでしょうか?」
ジッと立っていたら、歳を取った女性から声を掛けられた。男はニコッと微笑みを浮かべて挨拶をする。
「こんにちは、私は昔、この墓の方にお世話になったことがありまして。もしかしてですが、貴方はこの墓の家族でしょうか?」
「あ、はい。息子の世話になった方なのですね。和人はいつも困っている人を放って置けない性格だったので……」
墓には『安藤和人』と名前が彫られている。母親らしきの人から話を聞いてみると、20年前にトラックに轢かれそうだった子供を助け、代わりに轢かれて死んだと言う。
目の前の歳を取った女性は毎月に一回は墓参りをしに来ているから、墓は綺麗な状態を保っているのだろう。
「あら、そういえば、貴方はまだ高校生ですよね……?」
見た目は高校生にしか見えない程に若い。だとしたら、20年前に死んだ和人とは出会えないはずだ。
本当に高校生の歳である男はその質問を予測していたように、準備していた嘘を言い放つ。
「いいえ、こう見てももう三十代ですよ。いつも、若いと言われていますので……」
「あらあら、すいませんね。本当に若く見えるのねぇ……」
あっさりと騙されてくれた。女性にしたら、嘘をつかれる理由は思いつかないし、不利益を被るわけでもないから、信じたのだ。
「では、私は水を汲んできますので」
歳を取った女性は離れた場所にある水を汲みに行く。残った男はじっと墓を見ている。
と、そこに別の女性が現れる。
「準備は終わったのか?」
「……うん」
女性はピンクのワンピースを着ていて、銀色の髪に紅く光る瞳。
手には旅行鞄があった。
「こ……」
「ちょっと待った。俺たちはこれから新しい世界が始まる…………違うか?」
「うぅん、間違っていない。なら、ゼロ(・・)でいいかな?」
「あぁ、それでいい。レイ(・・)、行こうか」
2人はあっさりとここでの名前を捨て、向こうの世界で使っていた名を呼び合う。
ゼロと呼ばれた男は手を振るだけで別世界に繋がるゲートが現れる。
「ずるいね。ゼロだけが能力を使えるなんて」
「いいじゃないか。俺もまさかこの世界に生まれても『理想神』が使えるとは思わなかったし」
そう、ここまでになれば、2人の男女が誰なのかわかっただろう。そう、転生したゼロとレイだ。
ゼロとレイはもう兄妹ではなくなったが、幼馴染として出会って、今まで生きていた。
その生活は限りなく幸せだったと言える生活だった。
満足した2人は、約束を果たすために、ここへ集まったのだ。今のゼロは『理想神』が完成されていて、異世界へ繋げたいという理想も叶えられるようになったのだ。
さて、約束とは?
「フォネス達は元気にしているかな?」
「不老になっているから、会えるんじゃないの?」
レイはニッコリと笑みを浮かべて、先にあるゲートを見つめる。ゼロもこれからの冒険にワクワクしながら、
「これからが最強で最凶な兄妹転生ってな」
「もう兄妹じゃないし、今回は最強であっても、最凶じゃないでしょ?」
「ふふっ、それはそうだな」
ゼロはもう魔王をやるつもりはなく、前みたいに戦争を起こしたりはしない。
「さぁ、行こう」
「あら、もう帰ったのかしら…………あ」
水を持ってきた女性はゼロがいないことに気づき、周りを見てみるが何処にもいない。
そして、墓の前に何かがあることに気付いた。
「綺麗…………」
そこには、ゼロが置いていった花束があった。その花びらは水晶のように輝いており、いつまでも輝きが消えてなくならないような存在になっていた。
ゼロが『理想神』で作った供えの花束であり、同時にこの世界への別れという手向けもあったかもしれない。
その真相を知る者は、もうこの世界にはいない。花の輝きは一生、消えることはない…………
〈END〉
ここまで読んで頂き、ありがとうございます!!
ついに、『最強で最凶な兄妹転生』が完結しました。皆様、ここまで応援をしてくれたお陰で、完結することが出来たと思います。
まだ他の作品も書き続けているので、こちらも読みに来てくれるとありがたいです。
『竜魂の適合者〜竜王と盟約を交わす少年〜』も連載していますので、こちらもどうぞ!
ではでは、他の作品でも会いましょう〜〜。