第百四十七話 光輪凱旋砲(メギドラ)
”光輪凱旋砲”が撃ち出され、50%の出力といえ、帝国の中心に向かっているから当たれば破滅から逃れないだろう。
だが、そこに動く者がいた。23人の勇者達だ。
「”光盾”!」「”炎盾”!!」「させるか! ”雷遁盾”!」「止めるっ! ”水源壁”!!」「うおぉぉぉぉぉ!! ”大鉄壁”ぇぇぇ!!」…………
勇者達が様々な守りの魔法を発動して、”光輪凱旋砲”を止めようとする。だが…………
「止められない!?」「ウオォォォォォ!」「負けるかぁぁぁ!!」「重いっ!?」「このままじゃ……」…………
勇者達は力負けしていた。一つ一つと、守りの魔法が破られて行き、ついに最後の盾が壊れた瞬間、皆は終わったと思った。まさか、大戦が始まって一分もしない内に終わることになるとは思わないだろう。
だが、まだ諦めてない者が一人だけいた。それは…………
「させるか! 『聖救剣』、来い!」
その者はカズトだった。カズトの最強である剣、『聖救剣』を発現して、”光輪凱旋砲”の前に出る。
「”四獄聖撃昇天”!!」
クロトを葬った、最大技だった攻撃を”光輪凱旋砲”にぶつけ、四体の光る龍が食らい付く。
「うらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
なんと、カズトは”光輪凱旋砲”を上空へ軌道を逸らすことに成功していた。暴力的な光の放流は空へ消えて行き、この場に歓声が上がる。
「カズトの奴、やりやがった!」
「前より強くなっていない?」
「確かに、あの技はカズトの最大技じゃなかったか? 魔力は大丈夫なのか……?」
そう、”四獄聖撃昇天”は、カズトの最大技だった(・・・)のだ。
跳び上がっていたカズトがマギル達がいる場所に降りてきた。今のカズトは空を駆けることが出来るようになっている。
「あんな技を出して、魔力は大丈夫なのか!?」
「あ、うん。今、凄い勢いで魔力が回復されているから」
「凄い勢いで……?」
普通なら魔力は一晩は休まないと、回復しないはずなのだが、カズトの魔力はどんどんと回復していた。
「あの時、タカオから力を貰ったんだ。それで魔力の回復が速いんだ」
そう、魔力の回復が速いのは、タカオが与えた能力にある。『雷獣王』は、魔力を無限に生み出す能力で、魂をカズトに与えたことによって、その能力は受け継がれている。ただ、『雷獣王』ではなく、『魔泉王』と言う名に変わっている。効果は泉が湧き出るように、無から魔力を生み出せる。
「あと5分で全回復出来るんだ」
「5分で!?」
異常とも言える回復だが、それは王者能力の範疇に入る。その能力のお陰で、”四獄聖撃昇天”を序盤から撃とうと思えたのだ。
『ふふふっ、ふはははっ!! まさか、逸らせるとはな。この”光輪凱旋砲”は充填が必要だから、次は一時間後に100%の出力で撃とう』
次は、さっきの二倍の攻撃をするという言葉に兵士達は青ざめる。さっきは逸らすことが出来たが、逸らすことしか出来なかったのと同様であり、もしかしたら、次は逸らすことさえも出来ないかもしれないのだ。
「落ち着け! 勇者カズト達はその船に乗り込んで、止めるから、お前達は国を守れ!!」
皇帝が魔道具を使って、皆に喝を入れる。始まったばかりなのに、萎縮するのは良くないことだと判断してのことだ。
『くくっ、乗り込むか? いいぜ、乗り込めるならやってみせろ!!』
方舟から何かが飛んで来る影が見える。それも数十だけではなく、溢れ出るように、次々と現れる。
「姿が白い……あの白い化け物か!」
「やっぱり、造れるんだな……」
「あれ、翼がある……」
勇者タイキ達も戦ったことがあり、姿が少し違っていることに気付いた。天使のような翼が背中に付いており、右手が異様に膨らんでいるのが見取れた。
『この新生幽腐鬼、100万はいる。それらを抜けて来れた者だけが、我である魔神ゼロと幹部が相手をしよう。タイムリミットは一時間になるだろうな。くくっ……』
タイムリミットは一時間。確かに、100%の出力で”光輪凱旋砲”を撃たれては、防ぐ術はないに等しい。なら、直接に乗り込んで、魔神ゼロを倒す道しかない。
だが、魔神ゼロの元へ行くには、100万の新生幽腐鬼を抜け、幹部達を打倒しなければならない。
「厳しいが、皆は着いてくれるか……?」
カズトが必然に、リーダーになってあの方舟へ乗り込むことになる。だが、一番危険な場所になる所へ、仲間達はついてくれるか怖かったから、そんな声を出していた。
「当たり前だ。ゼロを倒さないと、人類は終わるんだのもあるが、俺は最後までカズトに着いていくことに決めているんだ!!」
「マギル……」
「だから、俺達も行くんだぜ。な?」
マギルは振り返って、皆を見る。皆も頷いていた。
「……ありがとう。絶対に、平和にしてやろう!!」
「「「「おおっ!!」」」」
カズトの仲間、クロトと戦ったメンバーで方舟へ乗り込むことになったのだった…………