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第百四十一話 雷獣の勇者、参戦!



 ナルカミの白い角は、セラティムの血で濡れていた。浄化されてしまったため、堕聖獣から聖獣になってしまったが、今の意識はナルカミからレイに切り替わっている。

 何故、切り替わったのかは、ナルカミがゼロに提案したことに関係があるのだ。




 ナルカミが出した提案とは、「もし、浄化されて聖獣に戻ってしまったら、永遠に意識が消えるようにして欲しい」だった。意識が無くなったら、『信頼者ツタワルモノ』を通してレイが身体を操るという自分自身を犠牲にする提案だったのだ。

 永遠に意識が無くなるということは、半分死んでいるのと変わらない。ゼロは、一時的に意識がなくなるでもいいじゃないか? と考えたが、浄化されたら意識が戻ったら敵になる可能性があるからと却下された。


 ナルカミの覚悟はもう出来ており、ゼロが何かいっても無駄だとわかったので、提案を受けることにしたのだ。

 実力からにしては、ナルカミは王者能力を持っていないから、その差が出てしまうが、他の実力は余り変わらない。

 ゼロが厄介だと思うセラティムをナルカミだけで倒せたら後が楽になると考え、ナルカミの考えを尊重して送り出したのだ。




 そして、今は、『聖核』を破壊して、セラティムは人間の姿になって下に落ちていた。胸には突き刺さった跡が残っていたが、まだ生きていた。




「……さっさと消して、カズト達を消しに行かないと」


 ナルカミの身体に入っているレイはそう呟きながら角に雷の嵐が渦巻いていた。セラティムにトドメをさして、勇者達を殺しに行くつもりだ。




「ぐぅ……、使命を達っせないなんて……」


 セラティムは悔しそうに、呻くしか出来ない。レイが雷を落とす準備を終わらせた時に、……………………何かが起こった。




「っ!?」


 レイは大きく回避をしていた。何も起こってないのに、急にレイが回避動作を取ったのだから、セラティムは驚いていた。

 何故、回避動作を取ったのかは、目の前でキラキラと薄く光っている糸にある。細くて、人間の目では注視をしないと見えないぐらいなのだ。

 その糸が急に襲い掛かってきたから、レイはセラティムへの攻撃は止めにして回避をしたのだ。




「……増援ッ!」

「当たりだよっ! 神の裁きを受けなさい!!」

「余り物を壊さないでよ……」


 レイの横には、武器を持った女性が二人いて、レイに攻撃を加えようとしている。

 修道服を着たシスター、テレサは棘がついたメイスを持ち、猫の獣人、リンは三本の爪が伸びた武器を両腕につけている。


 そして…………




「さっさと、ここから消えろよ?」

「っ!?」


 また糸が襲い掛かって来る。その糸を操っているのが、『雷獣の勇者』なこと、タカオだ。


 増援は勇者タカオのパーティだった。




 テレサのメイス、リンの三本爪、タカオの糸がレイを襲う。

 だが、レイは『雷体化』をすることによって避ける。




「キャアッ!?」

「うわぁっ!?」


 近くまで迫っていたテレサとリンは直接、雷体化に触れたことによって感電してしまった。痺れて動けなくなった二人をタカオが糸で回収して、距離を取る。




「身体を雷に変えるとはな」

「……貴方はエゼルを倒した『雷獣の勇者』だね?」


 レイはあの時、幽腐鬼に乗り移っていたが、他の幽腐鬼の見ていた情報も共有していたため、『雷獣の勇者』を知っていたのだ。

 ナルカミの身体は雷になっており、バチバチと音を鳴らしている。




「ここから去らないなら、戦うでいいな?」

「……当たり前。あの聖獣にトドメをささないと駄目だし、終わったら勇者達を消すの」

「なら、なおさら行かせるにはいかねぇな」

「……む? 勇者達の中で守りたい人がいるの?」

「教える理由がねぇな」


 タカオは武装能力を持っており、今、操っている糸がそうなのだ。

 その糸を操り、レイに迫る。その糸に、何かが纏っているのがわかり、さっきみたいに、受けるわけにはいかなくなった。




「”雷遁落衝撃ラディオンブレイク”!」


 レイは避けることをせずに、正面から向かい撃つ。衝撃を持つ雷が糸と衝突に………………………ならなかった。


 糸が”雷遁落衝撃ラディオンブレイク”を避けたからだ。そのまま、”雷遁落衝撃ラディオンブレイク”がタカオに向かうことになるが、タカオは脚に雷をほとばしり、凄いスピードで避けたのだった。




「……何? 身体の一部を強化した?」


 タカオが動くスピードは雷並に速く、レイが放つ技と同じスピードで動いているため、距離がある分、追い付いていない。糸が絡み付こうとしてくるが、レイも空中を駆け回っているから同じように、当たらない。




「……遠距離攻撃が当たらないなら、接近戦でやる……!!」


 空中を蹴り、タカオに向かう。接近してからの攻撃は体当たりしかないが、当たればタカオは無事でいられないだろう。


 角だけ雷化を解除して、角をタカオの心臓に定める。だが、相手が簡単にやらせるつもりはなく…………




「させないです!」


 感電から回復したテレサが、横からメイスを殴りつけようとする。直接当てても、雷化しているため、ダメージが与えられずに、また感電をするだけだ。

 だから、メイスを直接に当てないように、ギリギリの横を通り、『後追者オワセルモノ』のスキルが二撃目を喰らわせる!!


 振り下ろしはレイにとっては、遅いぐらいだったから避けるのは簡単だったが…………




「……っ!?」


 急に、レイがピタリと止まって驚愕していた。それは、二つの要因があった。

 一つ目はタカオの糸が周りに張り巡っており、身体には大量の見えない魔力の糸が絡まっているのだ。

 二つ目はリンの能力にある。リンは正確に言えば、猫の獣人ではない。お尻辺りには、三本の尻尾があった。その正体は、魔族に分類される猫又なのだ。

 猫又のリンが使った能力は『妖念者ネンジルモノ』であり、奇怪な妖術を使える能力である。今回は動きを止める技を使い、レイの方が格上だが、タカオの助けもあり、止められているのだ。一人だけだったら、おそらく止められなかっただろう。




「神の元に召しなさいなっ!!」

「……!!」


 『後追者オワセルモノ』が雷の身体に当たり、レイは身体をバラバラにさせる。




「くっ、逃げられた!」

「こっちもだ」

「当たったのに、余りダメージがないですね」


 攻撃は当たったが、ダメージは少なかった。テレサがどのくらい強いのかわからないが、魔王に近い実力を持つナルカミの身体が能力の一撃だけで沈むわけがない。

 バラバラにした身体が元の形に戻っていく。




「……これは、本気でやった方がいいかな……」


 ナルカミの身体に乗り移ったレイは、まだ本気を出していなかった。今後は勇者達とも戦わ無ければならないから、温存していたが、本気でやらないとこっちがやられる。




 レイは強敵だと認め、本気になることに…………







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