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第百二十七話 怨霊の群れ



 ついに、クロトが動く。こっちに向かってゆっくりと歩いて来る。


 今のカズトは『正義者ヒーロー』を発動しており、維持時間は前より長くなっているが、強者との戦いではまだ短いと思っている。

 他の勇者達もゆっくり歩いてくるクロトに油断はせず、睨んでいる。




「ククッ、掛かって来ないのですか?」

「なら、行かせてもらうぞ!」


 まず、ガイウスが動いた。このまま、隙を見付けるまで動かないで時間を無駄にするより、流れを自分から掴み取った方がよいと考え、行動することにしたのだ。




「はぁぁぁ!」

「まず、『聖気』を使った攻撃ですか」


 クロトはあまり大きく避けずに、紙一重に避けた。ガイウスは一撃だけで終わらずに次々と拳を繰り出すが…………




「クソが!」

「ククッ、見えていますよ?」


 クロトが付けている仮面の目には、紅い光が灯っていた。それを見たイリヤはすぐに気付いた。




「それは、ミーラが使っていたスキル!? ガイウス、それは予知のスキルです!!」

「また予知持ちと戦わなければならないのかよ……」


 ミーラに攻撃を当てられなかったタイキはげんなりとしていた。

 イリヤの言葉を聞いたガイウスは舌打ちしながらクロトから離れる。




「”土針アースニードル”」

「”風刃裂破ウィンドブレイク”」


 テリーヌとクスハが魔法でクロトを狙う。二人ともは数で攻めるつもりで、クロトの周りを埋め尽くすほどの魔法が放たれた。




「ククッ、これでは避ける場所がありませんね」


 『真眼者ミヌクモノ』があっても避ける空間が空いてなければ、無傷で避けるのは無理だ。

 だが、クロトはそれでも傷は一つを作ることはなかった。




 クロトを守る怨霊の群れによって…………




「なっ!?」

「弾かれた!?」


 怨霊の群れによって、二人の魔法は突破出来ずに弾かれていた。




「ククッ、これが二つ目の効果です。見て通りに、怨霊の群れを操れますよ。ククッ…………」

「お、怨霊の群れだと?」


 これも『怨霊王レギオン』の効果で、殺した者の魂を怨霊に変えて、クロトの剣と盾にすることが出来る。その強さは、自分やゼロ達に対しての怨みの強さや量によって変わる。

 今の怨みの強さは、万単位の人間の怨みがあるため、おそらく王者能力クラスの攻撃も防げる。


 試したことがないから、確実と言えないが、クロトにはわかっていた。防げるという感覚があると…………




 クロトはゼロが言っていたことを忠実に守っていた。






『有効に使え』






 と、言われていたクロトはダンジョンマスターとしてダンジョンを上手く使い、死んだミーラとガルム、死体、魂、怨みなど…………、全てを無駄せずに使って見せた。


 元々、ゼロ達に向けての怨みだったのに、その怨みさえも、クロトの能力の支配に捕われている。ゼロ達に殺された怨みがクロトの役立てされていることを思えば、滑稽な話だろう。




「ククッ、この技を防いで見せてください」


 クロトは後ろにあった仮面を七つ、横に並べた。その仮面には、七つの魔法が込められている。

 『火魔法』、『水魔法』、『風魔法』、『土魔法』、『雷魔法』、『光魔法』、『闇魔法』と仮面が同時に光り…………






「究極属性魔法”七属彗星レインボゥマスター”!!」






 クロトは全ての魔法を複合魔法として発動した。全ての魔法を複合するなんて、今まで誰も出来なかったことであり、クロトは究極属性魔法と名付けている。

 その全ての魔法が上手く調和し、天井ギリギリの所まで上がり…………






 彗星ごとく、カズト達に向かって七つの属性を持つエネルギーが沢山落ちていく。






「……っ!! 本気で守れぇぇぇ!!」


 ガイウスが全員に完全防御をし、攻撃を耐えろ! と声を張り上げる。

 避けて、反撃をしようと考えるなとも言っている。


 全員もその攻撃の危険度を悟っているのか、既に防御の体勢に入っていた。

 カズトは『守護者マモルモノ』を発動し、魔術師は最強の防御魔法を発現し、他の者はそれぞれのやり方で防ぐ構えを見せている。

 そして…………




「ぐぅっ!?」

「な、なんて威力なのよ!?」

「クソが!」

「今は耐えろぉぉぉ!!」


 前に出ていたカズト達が一番きつそうだった。カズトは盾が壊れたら、すぐに補充していくから、グングンと魔力が減っていく。まだ『正義者ヒーロー』も発動したままだから、なんとか耐えられている。

 だが、他の人はそういかない。




「う、も、もう駄目……」

「く、まだかよ……」


 テリーヌとマギルはヤバいと感じていたが…………




「誰一人もやらせねぇ!!」

「ガイウス!?」


 ガイウスが二人の前に出て、『聖気』を出せるだけ出して身体を纏う。






「うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」









 しばらくしたら、攻撃が止んだ。カズト、テリーヌ、マギル、勇者達はなんとか無事だったが…………




「へへっ……、皆、生きているな……?」

「ガイウス!」


 ガイウスも生きていた。だが、攻撃を防ぐために両手を前に出して聖気を纏っていたが、その手は…………






 ボロボロだった。よく見ると、身体中にも大量の傷が見えていた。致命傷はないといえ、すぐに治療しないと、失血で死んでしまうほどだった。




「ガイウスは、後ろで治療を!!」

「い、いや、治療をしている暇があったら…………」


 と、そのままガイウスは倒れてしまった。

 カズトが駆け寄り、まだ息をしているか確認して、生きていることにホッとする。




「治療が出来る人はいますか……」

「私がやるわ。魔力がまだ少ないから、戦いに加われないわ」


 イリヤが治療をすると言ってきた。イリヤは治療魔法を使えるが、魔力も少ないから治療で魔力が切れてしまうだろう。

 ガイウスはイリヤに任せ…………




「なんだ? また律儀に待ってくれていたのか?」

「ククッ、脱落したなら最後に殺せばいいですし。まだまだ楽しませて貰いたいのですよ? だから、せいぜいと足掻いてみせてな」

「それは、いつでも殺せると言う余裕なのか……」


 マギルは手を強く握っていて、白くなる程だった。






「ククッ、どうせ貴方達ではこの盾を破れないでしょう?」






 そう言って、怨霊を操作していく。確かに、この怨霊があれば、全方位から攻撃されようが、全てを弾くことが出来るのだから。




「ククッ、一つだけ面白いことを教えてあげましょう! この怨霊達はねぇ、元は人間の魂から作られていて、破壊したら魂ごと消えちゃいますよっ!」

「な……」

「魂は何処から来ているのかわかりませんが、魂が消えてしまったら、元に戻らないのは確実ですね。それでも壊せるなら壊して見せなさいなっ!! クククククッ…………」


 今度はカズトが怒りで震えることになる。怨霊といえ、元は人間の魂なのだ。それを破壊したら、もう元に戻らない。

 カズトは出来れば、怨霊から魂に戻して、助けたいと思っていた。だが…………




「お前は、何を考えている? まさか、魂まで救いたいと思っているのか?」

「っ!?」


 カズトに近付いて、話しかけてきたのはタイキだった。図星を突かれて、ビクッと身体を震わせた。




「はぁ……、お前は甘い。甘すぎんだよ」

「しかし……」

「しかしじゃねぇよ! 目的を忘れるな。俺達は魔王を倒しにきた。敵に使われている魂を救うためじゃねぇ! そこを間違えるな! 俺達の肩には人々の未来が掛かっているのも忘れるな!」

「…………」

「そこで、魂を救おうとしてここにいる誰かを死なさすつもりか?」

「そ、それは!」

「わかったか? クロトって奴はマジで強い。俺達の本気をぶつけないと勝てないぐらいにはな……。自分の実力を理解し、自分の出来ることをやれ!」


 話は終わりだと言うように、カズトの横を通り抜けて、クロトに向かう。




「待たせたな?」

「ククッ、青臭い青春を見せてもらい、なかなか面白かったですよ?」

「ふん、俺達がその怨霊を突き破ってお前を倒してやるよ」

「ククッ、やってみなさい!!」


 タイキが前に出た。タイキの狙いは時間稼ぎだ。

 後ろでは、カズトを含めたまだ戦える者があることをやるために、力を溜めていた。




 これはクスハの提案で、「複合魔法と同じように、それぞれが自分の最大技を複合させ、あの怨霊の盾を壊す」と言う案だった。

 だが、最大技を放つのに時間が掛かるから、タイキが時間稼ぎをすることに決めたのだ。

 いや、時間稼ぎなら、タイキの領分であり、得意なことだ。




 ここからは『跳ね馬の勇者』の戦いを見せることに…………







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