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第百二十四話 黒刃の竜

『腐敗者』→『腐食者』に変更致しました。



 今、ガルムの姿は砂鉄を纏まっており、『鉄人カタキモノ』と『磁能者ミダスモノ』によって身体中に黒刃を纏う小さきの竜の姿のようになっていた。


 ガルムの背中に翼のような形をしたものが付いているが、飛べるわけでもない。

 纏っているのは砂鉄であり、飛ぶために付けているのではないからだ。




「カカカッ! そぉらよ、避けて見せやがれっ! ”竜尖鉄牙ドライグエイト”!!」




 背中にあった翼がバラバラ分解し、目に見える黄色のオーラのようなものが、バラバラに分解した翼を刃の形になり、浮いた。


 片側に浮いている刃が18本、左右の両側だと全てで36本になる。

 その36本が黄色のオーラのようなものによってガルムの本体に繋がっている。




「……黄色? 魔力だけじゃない?」

「そうだ、全てが魔力ってわけじゃないな。これは磁力だ」

「磁力……? 磁力でこんなことができるなんて聞いたことがないわよ?」


 そう、磁力では今みたいにガルムの本体と切り離した刃を繋げて操作するなんて無理なのだ。


 だが、ガルムの磁力はただの磁力ではない。

 ゼロの『零式王レイディウス』によって、この法則を書き換えられているため、常識とは違う磁力になっている。


 磁力と言えば、引力と反発が一番わかりやすい例になると思う。

 それだけではなく、磁力で浮遊に似た力を組み込んだのだ。そうすれば、ガルムがやっていることは大体わかるだろう。




「ハァァァッ!!」


 ガルムはただ突進するだけ。周りには大量の刃が浮いており、本体は刃の塊だ。

 それらが突進してくるだけでも、当たったら確実に命を奪われると二人にはわかったようだ。




「任せろ! ”爆嵌龍炎バーストドライブ”!!」




 ゴウダはいつも無言だったが、この時は大声で技を発動していた。

 両手から放たれたのは、赤黒い龍。”爆嵌龍炎バーストドライブ”は龍の形をしており、ガルムに食らい付くそうとする。




 激突する鉄の竜と爆発の龍。




 ガルムが爆発の龍に触れた瞬間に、龍がそれに反応して絡み付き…………






 ドガンドガッドォォォォォォォォォォォン!!






 絡み付いた龍が数十の爆発を起こし、爆発がガルムを包み込む。

 クレーターが出来ることから凄まじい爆発だと伺えるが…………




「フハハハハハハハッ!!」


 ガルムは少しだけ動きが止まったが、すぐに何でもないようにこっちに突っ込んできた。

 ガルムはそのままゴウダに爪の刃で切り込むが、何も手応えがなかった。




「火の分身か!」

「腐腐腐、そうよ……”雷鳥壊砲ライシングバード”!!」


 今度はクスハが雷魔法で、鳥を模した雷の化身がガルムに向かう。

 ガルムは足を止めており、避けるのはしないまま、刃を足元に刺した。




「さぁ、受けてやる!!」


 ガルムは雷魔法を斬ることもせずに受けた。

 そのまま雷魔法はガルムに当たり、普通の人間なら即死という威力だったが…………




「っ! 地面に逃がしているの……?」

「そうだぜ、アースだったっけ? まぁいい、俺には雷は聞かねぇっ!!」


 雷魔法が終わってすぐに、ガルムは刺していた刃をそのままクスハに突き刺そうと動き出す。




「っ、『身体強化』発動!」


 クスハは身体中に魔力を張り巡らせ、刃から逃げる。

 クスハは魔術師だが、元の身体能力は高い。それを生かして全ての刃を避けきった。


 今のは距離があったから避けきったが、もし近距離からあの刃が一斉に来たなら逃げ切ることは難しい。

 だから、クスハは一定以上の距離を保っていく。




「カカカッ! さすが、勇者だな! 普通の魔術師だったら今ので終わっていたぜっ!!」


 クスハを褒め、笑うガルム。ガルムは戦いが楽しくてしょうがないのだ。


 今のところは勇者の方が劣勢。と、そこにクスハが言う。




「……腐腐腐、これは本気を出さないとダメみたいですね。ゴウダ、時間稼ぎを頼めますか?」

「……手があるんだな?」

「ええ、相手の武器が砂鉄なら……、手はありますが、少し時間がかかります……」

「……そうか。任せろ」


 ゴウダが前に出て、クスハは少し後ろに下がる。




「……”爆纏化ブロムエイガスト”!!」


 ゴウダは身体中を薄い膜のような物が包み込む。何かを纏ったのはわかるが、それだけで見た目はあまり変わっていない。




「なんだそりゃ? 俺みたいにかっこよく変わったりしねぇのかよ」


 ガルムには不評だったが、ゴウダは聞き耳を持たずに、徒手空拳で構える。




「ふーん、何も言わねぇか……。いいぜ、あの膜だけで戦えるならやってみせやがれっ!!」


 ガルムが動いた。ゴウダはガルムが迫ってきてもまだ動かない。

 刃の爪がゴウダの目の前まで迫り、ようやくゴウダが動いた。




「ふぅっ! はぁっ!」


 刃の刃物を避け、刃の横に触れて弾いていく。と、弾いた傍から、爆発が起きていく。

 ガルムは爆発によるダメージはないが、近距離からの風圧によってバランスを崩してしまう。その隙にゴウダはガルムから距離を取る。




「……ほぅ!」


 ガルムは体勢を立て直し、薄い膜を観察する。




「触れた場所を爆発させる膜ってことか、しかも本人には爆発のダメージは無しか」

「…………」


 再び、ガルムは突っ込む。さっきと変わらずに弾いていき、ガルムがバランスを崩したらまた離れる。




「成る程。時間稼ぎだから、とにかく攻撃を防げばいいわけか」

「…………」

「カカカッ! 時間を稼いで何をするつもりか知らんが、いつまで防ぎ切れるか見せてみろ!」


 今度は宙に浮いている36本の刃を次々と飛ばしていく。

 ゴウダは全てを弾くつもりで、次々と刃を落としていく。




「刃だけじゃなくて俺も行くぜぇ!!」




 両腕の爪を突き出し、さらに何本かの刃も同時に動き出す。これでゴウダは全てを弾いて避けることは出来ないだろうと核心していた。

 だが、ゴウダはクスハからの大声を聞いてからさっきみたいな構えから、迎撃の構えをしていた。




「カカカッ! 正面からやんのか? 無駄だぁぁぁ!!」


 凄まじい速度が入った突進に、自分の身体は大量の刃を纏まっている。迎撃してこようが、打ち破る自信はあった。






 ドバァァァァァァン!!






 激突し、ガルムはゴウダは死んだ! と思ったが…………






「…………え?」




 ピキッ、ピキピキ……パラパラ…………




 違和感を感じて、ガルムは自分の手を見てみると、爪が崩れて、肌身が丸見えになっていた。




「なっ!?」


 破られない自信があった身体を纏う砂鉄の爪、刃がボロボロになって崩れていて、信じられない心情だった。




「爆発だけで壊れるなんて、有り得ないっ!!」

「……爆発だけじゃない」

「何だと?」


 ゴウダはさらに追撃し、ガルムの顔を殴り、爆発が起きる。




「っ、ま、また!?」


 顔を纏っていた砂鉄が崩れた。爆発だけじゃないと言っていたが、まだガルムはわかっていなかった。




「腐腐腐…………」

「……お前か?」


 クスハが笑っていることから、ガルムは察した。間違いなく、あの女が何かをしたと…………




「……ええ、私の能力で貴方の砂鉄を弱らせてもらったわ」

「砂鉄を弱らせるだと?」

「腐腐腐……、私の能力『腐食者クサルモノ』でね……」


 『腐食者クサルモノ』は能力名と同様に、腐らせる能力になる。

 クスハがガルムに対してやったことは、鉄を錆び付くようにしたのだ。

 砂鉄も鉄の部類になり、錆びたら鉄の強度が弱くなる。ただ、錆びるまでには時間がかかるから、その間はゴウダに頑張ってもらった。


 砂鉄が完全に錆びたら、ゴウダの爆発に堪えられなくなってしまったのだ。しかも、錆びる状態はガルム本人には害は無かったから気付けなかった。




「こ、このクソ女がぁぁぁぁぁ!!」


 ガルムはキレて、クスハに向かおうとしたが、間にゴウダが入ってきた。ゴウダの手にはいつの間にかに、十数重になっている膜がある。




「……終わりだ」

「ち、畜生がぁぁぁ!!」


 ガルムは回避をしても間に合わないと、錆びている刃を突き出すしか出来なかった。

 だが…………






「”連重爆拳ディオボマードン”!!」






 十数の爆発を一つの拳に留め、極大爆発の威力がある拳がガルムの核がある左胸に打ち込まれた。




「がぁぁぁぁぁーーーー!!」




 身体の刃はゴウダの拳を斬れずに、粉々になって胸を突き抜けた。

 核も壊れ、ガルムの身体は灰になってゆく…………









「ははっ……、すまねぇ……」






 核が壊れる前に、放った言葉は、ミーラと同様にここにいない者への謝罪だった。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 ガルムを倒したクスハとゴウダは疲れがあり、とても連戦出来る状態ではなかった。

 魔力も二人とも、結構使っており、しばらく休むことにした。




「ここは熱いですが、周りには何もありませんからね」

「……そうだな、出口を探さんとな」


 少し休んだら、どこにあるかわからない出口を探さなければならない。

 熱い中で探さなければならないことにげんなりとなる二人だったが…………




「っ、また強制転移!?」


 クスハが言った通りに座っていた場所に魔法陣が現れて、砂漠から人が消えたのだった…………







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