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第百二十話 相対する者



 聖気が効かない幽腐鬼相手に、ガイウスは自分の拳に力を込める。

 ガイウスは勇者ではないが、元はSSランク。聖気だけに頼った戦いだけではなく、他にガイウスの能力もある。




「『闘喧者ブチノメスモノ』の力を見せてやる!」


 ガイウスは聖気とは違う魔力を纏い、四足の幽腐鬼に向かう。



 四足の幽腐鬼と言う個体は元々、動物の死体から造られており、天使の細胞は入っているが、人間の死体は使われていない。

 だから、動物だった時の情報に引っ張られて他の個体と違って四足で動き回る。


 動物の情報によって獣とは変わらないからサーズ王国でやった個体の様に、左手をちぎって投げるなどの発案は出ない。人間のように頭を使って戦うことはなく、ただ噛み付いたり引っ掻くしか出来ない。


 だが、獣としての本能も馬鹿には出来ない。危険察知も人間よりも鋭くて幽腐鬼はガイウスから何かを感じ取ったか距離を空ける。




「ほぅ? これがどれだけ危険なのかわかるみたいだな。だが、逃げ回ってんじゃ勝てねぇだろ!」

「ふしゅーーー!」


 幽腐鬼は逃げてもガイウスは追いつづけるのがわかったのか、逃げるのを止めて脚の太股とふくらぎが膨らんでいく。






 バァンッ!!






 幽腐鬼が一瞬でガイウスの目の前まで迫る。この動作はファイアボアが使う技に似ている。脚の筋肉を膨らませて、凄まじいスピードで突っ込む。


 ガイウスは反応が遅れた…………わけでもなかった。




「ハァッ!!」

「ふしぃっ!?」


 既に拳は幽腐鬼の顔に減り込んでいた。そのまま終わらずに殴った場所が、顔が膨らんでいく。




「しゅぃー!?」


 幽腐鬼が自分で膨れているわけではなく、これがガイウスの『闘喧者ブチノメスモノ』の能力である。




「中から爆発しろ」




 バンッ!!




 幽腐鬼の顔が爆発し、同時に核も消え去って灰になって死んだ。




「初めてガイウスの能力を見ましたよ……」

「ん? ああ、今までは聖気だけで充分だったからな」


 カズトはガイウスの能力は聖気を操れることしか知らなかった。

 『闘喧者ブチノメスモノ』は相手の体内にある魔力を殴った場所に集めて、爆発させる。


 その爆発は魔力爆発と言って、魔法の発動を失敗したら起こる現状でそれをガイウスは体内で魔力爆発を起こさせたのだ。




「終わったみたいですね」

「さすが、元SSランクでも力は落ちてないみたいだな」


 戦いが終わった時に、離れていたイリヤとタイキが近付いてくる。

 クスハとゴウダも近付こうとしたが…………






『ククッ……、幽腐鬼が時間稼ぎさえも出来ないとはね』






 何処からか声が聞こえて皆はとっさに周りを警戒する。




「誰だ!?」

『残念ながら、私はここにいませんよ。しかし、すぐに会うことになりますがね……』

「何を……なっ!?」


 足元に魔法陣が浮かぶ。この魔法陣は強制転移だ。




 皆はいきなりのことで、魔法陣から逃れることは出来ずにバラバラに転移されてしまった…………






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






「うっ!」

「……ここは?」


 イリヤとタイキは近くにいたため、二人は同じ場所に送られている。

 ここは森の中で、周りは木ばかりで向こう側が隠れて見えない。


 どうしてここに? それからここは妨害魔法で転移は使えないではなかったのか? と疑問が生まれるがまた声が聞こえて考えるのを止めた。




「あはっ、貴方達がアタイの相手になるのねっ!」




 声が聞こえた場所、目の前にある木の上。

 その太い枝に座って見下ろしているウサミミを持つ女性がいた。


 そう、大槌を持つミーラが二人を見下ろしていた。




「貴方は……、さっきの声と違うわね」

「ウサギの獣人? 何故、ここに?」

「あはっ、アタイは魔王ゼロ様の配下。さらに幹部でもあるよ! ミーラと言うのっ!!」

「幹部クラスか……」

「ええっ! 可愛い子と殺し合わないと駄目なのか!?」


 タイキはミーラが幹部で倒さなければならない敵だと理解して、焦っていた。

 出来れば可愛い子には優しくしたい、それがタイキの心情なのだ。




「魔王の配下なんて止めて一緒に暮らそうよ!?」

「アホか! こんな時に何を言っているんだ!?」

「だってよ……」

「あはっ、残念ながらアタイはこの世に生きている限りはゼロ様の配下。それ以外には何もいらない。それがアタイを造って頂いたゼロ様に対しての恩義よ」

「造って頂いた……? もしかして、貴方も?」


 イリヤは魔王ゼロが死体から兵隊を造れるのを知っている。だから、目の前のミーラも先程の幽腐鬼と同じだと。




「あの白いのと同じだと思っていたら死ぬよ? 死体集合体。それがアタイの種族よ」

「死体!?」

「そうか、それなら遠慮はいらないな。そうだろ、タイキ?」

「むぅ……、死体か……」

「何を悩むんだ? で、他の者も貴方みたいに敵が?」

「あはっ、当たりだよ〜。そろそろ戦おうか」


 肩に掛けていた大槌を片手だけで持ち上げる。

 森の中、勇者イリヤと勇者タイキはミーラと相対することに…………






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 ここは砂漠。周りを見ても砂の山しかない。

 ここでは…………




「ハハッ! 死ねっ! ”砂鉄弾サンドスチールショット”」




 ガルムとクスハとゴウダの姿があった。


 足元から砂鉄を浮かべ、クスハとゴウダの元に撃ち出される。

 だが、それで勇者を殺すには力が足りない。




「腐腐腐っ……、”砂壁サンドウォール”」


 目の前に砂が盛り上がり、ガルムの攻撃を防ぐ。その隙にゴウダが前に出て、大剣をガルムに振るう。

 ガルムは砂鉄で盾を作り出して防ぐ。




「ハハッ……、面白ぇ! 思う存分に殺し合おうじゃないかっ!!」

「…………」


 ガルムが話そうが、ゴウダは黙って大剣を振るう。ゴウダが砂鉄の盾を壊した後にすぐに下がると、ゴウダの後ろからクスハの”雷瞬矢ライオットアロー”が撃ち出ていた。




「無駄ぁぁぁ!!」


 服の中に隠していた砂鉄がクスハの魔法を逸らす。

 お互いはそう簡単にダメージを受けない。この戦いが長引くごとに、熱さに強いガルム以外は熱のダメージもある。

 だから、勇者のペアは早くガルムを倒して砂漠の世界から脱出しなければならない。




 勇者クスハと勇者ゴウダは、楽しむガルムを相手に戦い続ける…………






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 最後に残った勇者カズトパーティは魔王の間にいた。

 勇者カズトパーティは目の前にいる敵を警戒している。


 魔王の間にて、王座に座っているのは魔王ゼロ……………………ではなく、不気味な仮面に燕尾服を着た者が座っていた。






「ククッ……、ようこそ。勇者カズト、その仲間達。私は魔王ゼロ様の配下で幹部でもあります。クロトと申します……」






 王座に座っていたのは死体集合体のリーダー、クロトだった。




 今回のダンジョンを任されているのは、クロト。クロトがダンジョンのボスとして勇者カズトパーティを歓迎する…………







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