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第百十九話 勇者連合軍



 『勇者連合軍』が組まれてから、三日間は経っている。

 場所がわかり次第に、それぞれの準備をしてメイガス王国があった場所までセラティムに転移してもらった。

 その後、一日ぐらい歩いてようやく…………




「ここがセラティムが言っていた洞窟みたいだな」

「腐腐腐……、幻覚で入口を隠されているという情報でしたが、今は幻覚が解かれていますね……」

「やはり、誘い込まれているな」

「……周りに魔物の反応がないな」


 目の前には、魔王ゼロの拠点だと思える洞窟がある。

 ここの周りには転移が出来ないようになっており、セラティムの力があってもメイガス王国までしか送ることが出来なかった。

 それ程に、強い妨害魔法を使える魔王ゼロの強さの垣間が見える。




「ここにゼロが……」

「この辺りって、前に小さな女の子と戦った場所からそんなに離れていないな」

「つまり、前からここを拠点にしていたわけね……」

「ふん、過去を振り返っても戻れない。今は今に集中しとけ」


 マギルがこの辺りに来た時に調べておけば……と考えていたが、ガイウスの言う通りに後悔しても遅いし、これから魔王と戦うことになるかもしれないのだ。だから、今に集中しなければならない。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 入口は二人か三人が入るぐらいの大きさしかなかったが、先に進むごとに広くなっていく。


 今は三つのグループに分け、それぞれの距離を空けて進んでいく。


 一番目に進むグループは勇者タイキ、勇者イリヤであり、機動力に優れたペアになっている。

 罠があっても回避出来るように一番目にしてある。


 二番目は勇者カズトパーティだ。人数が多い勇者カズトパーティは、真ん中に置いて前と後ろのどちらかに危険があってもすぐに援護出来るようにするためだ。


 三番目は勇者クスハ、勇者ゴウダであり、ゴウダが前衛でクスハが後衛と展開出来るペア。




 それぞれの役割を持ち、第一層と呼ばれる場所を歩いていく。

 だが、第一層で出てくるモンスターはゴーストやスケルトン等で弱い魔物しか出てこない。しかも、罠もまだ見付かっていない。




「なんだ? 本当にここが拠点なのか? 守りが薄すぎだろ!」

「黙っていなさいと言いたいけど……、その通りね……」

「ただの洞窟でしたと言うオチはいらねぇーからな!」

「いえ、それはないでしょう。この辺りに転移が出来ないように妨害魔法が掛かっているし、魔王がそんな無駄なことはしないと思うわ」

「確かに、こんだけの妨害魔法をただ洞窟のために使うわけねぇな」


 ここは何なのか話しつつ、先に進んでいくタイキとイリヤ。


 しばらく探索すると、下に向かう階段を見付けた。




「この階段……、自然に出来た物じゃないね」

「自然に出来た階段ってどんなのだよ?」

「坂になっていて降りられるのがあるでしょ?」

「それは階段と言わねぇよ!?」


 罠がなくて魔物が弱かったせいか、この会話をするぐらいに緊張感が薄くなっているようだ。

 そのまま階段を降りていくと…………








 空があった








「なっ!?」

「何なのよ……」


 階段を降りたら、先程のように洞窟ではなく、空が見えて草原があった。

 二人の後から降りてきた人も驚きの表情を浮かべていた。


 ここは階段で降りたから地下で間違いはないはずなのに、外に出たような感覚だった。太陽もあり、雲が出ている。




「まさか、外じゃねぇよな?」

「腐腐腐……、これは造られた世界みたいだね……」

「造られた世界……?」

「もしかして、結界のこと?」


 魔術師であるクスハとテリーヌは気付いたようだ。

 ここは結界で造られた世界だと。この認識は正解だ。


 ソナタの『自然幻想モトムモノ』、別離結界で出来た草原が広がった世界なのだ。




「こういう結界は、必ず出口はあるから無理にこの結界を破らなくてもいいわ」

「成る程……、結界を壊すことに体力を使うより出口を探した方がマシなのだな」

「ええ、この世界は本物の世界と変わらない程よ。無理に壊せたとしても修復されて体力と魔力の無駄になる可能性が高いわ」


 結界のことはわかった所で、入口はまだ残っているが戻るつもりはない。




「さて、進むか……」

「魔王を倒しに来たのに、探索するハメになるとはね……」


 出来れば体力は温存したいのに、探索することになったので溜息を吐きたくなるのだった。




 その勇者達を見る者がいた…………






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






「ククッ……、ようやく来ましたか」


 その者は王座に座り、ダンジョンの全てを見通す水晶玉を手に浮かべ、見ていた。




「まず、その力を見せてもらいましょうか」


 水晶玉に手を沿える。化け物を送るために…………






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






「止まれ!」

「敵のようだな」


 前にいた二人は気付いた。目の前の空間がヒビ割れていることに。

 そこから白い人型の化け物、幽腐鬼が五体も現れた。




「あれが、サーズ王国を襲った白い化け物か……」

「うぇっ、気持ち悪い化け物だな!?」


 勇者達は展開し、勇者ペアは二体を受け持ち、勇者カズトパーティは一体を相手にする。




「コイツが白い化け物か……」

「気をつけろ。コイツはAランクを超えているみたいだからな」

「そして、頭が弱点で……」

「馬鹿みたいな再生能力っとね! ゼロって奴はどうすればそんな化け物を生み出せるのよ?」

「ああ、ゼロは油断ならない魔王だ。おそらく、今までの歴史ではここまでの最悪な魔王はいなかったはず」

「魔王ミディはあまり攻めて来ないからそうなるかもね」


 魔王としては、最悪な部類に入るぐらいだとわかる。何せ、目の前みたいな化け物をいくらでも生み出せるのだから…………




「ふしゅーーー!!」


 幽腐鬼は二足から、動物の魔物みたいに四足に立ち、襲って来る。

 不揃いで鋭い歯を相手に見せるように噛み付いてくる。

 とっさに四人は横に避ける。




「狼みたいだな!?」

「狼なんかよりも早いわよ!? ”炎槍突撃ファイアランス”!!」


 テリーヌは頭を狙って魔法を放つが、幽腐鬼は脚の力だけではなく、腕の力も加わって一瞬で魔法の射程から逃げ切っていた。

 そのままテリーヌに向かう。




「テリーヌ! 『守護し……』」

「駄目よ!」

「っ!?」


 カズトは『守護者マモルモノ』で盾を出そうとしたが、テリーヌから止められた。

 カズトはテリーヌが言葉にせずとも、言いたいことは伝わっていた。


 あの盾を生み出すには、大量の魔力が必要になる。だから、まだ使うなと。

 ここはまだ序盤で敵も幹部クラスさえもないのだ。




「コイツはワシに任せな」


 聖気を纏った拳で幽腐鬼の腹にぶち込み、ぶっ飛ばす。




「ありゃ、聖気を無効するのは本当だったか。今のはただのパンチにしかならなかったな」

「それでも充分、強いですよ……」


 今のだけで普通なら肋骨はバラバラに砕けていたはずだが幽腐鬼はなんでもないようにまた襲い掛かってくる。

 打撃だろうが、斬撃でも回復するから弱点以外の箇所を狙っても無駄だ。




「面倒な相手だな」

「強い魔法で一気にぶっ飛ばす?」

「いや、ここはワシに任せろと言っただろ?」


 ガイウスが前に出て、残り三人はサポートを務めることに。




「さて、やろうじゃないか。化け物、来い!!」

「ぷしゃーー!!」






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






「この強さだったら聖騎士では手こずるのもわかるわ」

「だが、勇者相手には相手にならないみたいだな」


 二人はもう戦いが終わっており、目の前には灰になった幽腐鬼があった。




「腐腐腐……、終わったみたいね」

「…………」

「あ、向こうも終わったか? 強さはどうだ?」

「腐腐腐……、ゴウダに二体を任せましたが、相手にはなっていませんでしたわ」


 勇者相手では幽腐鬼は相手にならないみたいだ。




「あれ、まだ戦っているのか?」

「あら……、これからガイウスがやるみたいだからもうすぐで終わるでしょうね」


 イリヤはガイウスの実力を知っている。ガイウスならすぐに終わらせるだろうと、待つのだった…………







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