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第百十八話 居場所特定



 勇者カズトはまたこの前のように、皇帝の間に集められていた。

 集められたのは勇者カズトだけではなく、カズトの仲間と他の勇者達もいる。


 集めた本人は皇帝と天使の使いとして、天界から来たセラティム。




「また急に集合させて、すいません。新たな情報が天界から送られましたので……」

「いえ、その情報で助かる民の命が増えるなら私達にも聞かせて欲しいです」


 今回もイリヤが勇者側の意見を纏める係になるようだ。




「……なぁ、俺達もいてもいいのか? 貴方のことはカズトから聞いているから知っているが、前は勇者だけだったよな?」


 マギルが手を挙げて、気になった質問をする。前は勇者だけだったのに、今回は勇者のパーティメンバーも来ている。

 勇者カズトのパーティメンバーだけだが…………




「これからのことを考えると、勇者のパーティメンバーもいた方が情報の伝達もやりやすいと思いまして」

「はぁ」

「つまり、これから話す情報は私達にも関することなのね」


 まだ要領は得ないが、テリーヌは納得しておいた。




「はい。その通りです。天界からの情報の前に、まず、皇帝から新しい情報を伝えては?」

「そうだな……」


 皇帝が前に出て、説明を始める。






「……三日前に、サーズ王国が魔王の軍隊に襲われたようだ」

「な……」

「まさか、サーズ王国が負けたのですか!?」


 勇者達は絶句し、イリヤは嫌な想像をし、叫んでしまう。




「いや、サーズ王国が勝った。王も無事だ」

「良かった……」


 イリヤはホッとしていた。イリヤは国王のダリュグに直接指導してもらったことがあり、師匠として慕っているのだ。




「ただ、被害が大きすぎた。兵士と聖騎士が半分も死亡し、重傷の者が多いらしい……」

「なんと……、魔王は誰なんですか……?」

「魔王は出てきていない。話では、軍隊はサーズ王国の周りに生息する魔物が万単位で攻めてきたのだ。それらは操られていただけで、本隊は魔王の配下が一人と白い化け物が数体だと……」

「ちょっ!? それだと少数だけで攻められてそれだけの被害が出たということなのか!?」


 勇者タイキが叫ぶような問い掛けをする。

 魔物は操られていただけなら魔王の配下とは違うだろう。




「何故、操られていたとわかるのですか?」

「ああ、魔王の配下を倒したら、まだ生きていた魔物が目を覚ましたように散らばって逃げ出したからだ」

「成る程、魔王の配下は誰が? ダリュグ様が?」


 イリヤは、魔王の配下と相手出来るような実力を持つ者はダリュグかレクスしか思い付かなかった。レクスは聖騎士長で、聖騎士達を指揮しなければならないからダリュグがやったと思ったが…………




「いや、今回はたまたま『雷獣の勇者』、タカオ殿がいたからその者が倒したようだ」

「タカオが……」


 イリヤは知っているようだ。問題児の勇者だと…………




「タカオ殿に聞いた限り、魔王の配下はエゼルと言い、魔王の名前は言わなかったが、『我が神』と言っていたことから……」

「ゼロですね……」

「またかよ、エゼルって奴は死んだんだろ? 白い化け物の方が気になるな」


 白い化け物は数体はいたということから、他にいるとタイキは予想したのだ。




「聖騎士が三人で挑んだが勝てなかったことからAランク以上はあるだろう」

「聖騎士三人でも勝てないのが数体も出てこられちゃ、その被害は納得だな……」

「特徴を聞いたところ、白い身体で人型。口と目には糸が縫い止められて、凄まじい再生力に身体能力を持っていたようだ。しかも、弱点は頭だけで他の部位を壊しても一秒もしない内に完全再生し、長時間動いても疲れを見せない化け物だ」

「うげっ……、まるっきり化け物だな……」

「凄まじい再生力があって疲れを見せない化け物か、そんなの自然に生まれたものじゃねぇな……」


 そんな化け物は今まで聞いたことがない。カズトもガイウスに聞いてみたがガイウスも知らないみたいだ。なら、その化け物は…………




「……ゼロが造った化け物かもしれません」

「カズト? 貴方は何を知っているの?」

「それは……」


 前にメイガス王国に攻めてきた化け物、アバドンのことを説明し始めた。アレが元は死体で、ゼロが造った。死体集合体と言う言葉など…………






「ち、ちょっと、それでは…………」

「はい……、白い化け物もゼロが造ったものなら、死体があれば、増量が可能かもしれません……」

「く、早めに倒さないと不死身に近いAランクの化け物が増えて被害が……!」

「ああ、厄介だな……」


 カズトの話に絶句するイリヤとタイキ。その真実を知った皇帝も顔を青くしていた。

 強い配下を増やすのは時間が掛かるし、難しいが、自分の手で化け物を生み出せるなら話が変わる。

 早めにゼロを倒さないと人間側の生きる道が潰えてしまうと理解したからだ。






「それは大丈夫です」

「は? どういう意味だ?」


 沈んでいた皆の耳に聞こえたのはセラティムの言葉だった。

 何が大丈夫なのか要領が得ないからタイキが聞いた。




「天界からの情報をお忘れですか?」

「え……? …………まさか!」


 天界からの情報。セラティムが大丈夫と言う程の落ち着きよう。

 カズトはそこから可能性を見出だした。




「ゼロの居場所を!?」


 前にミディと言う魔王の隠れ家を見付けたことがあり、セラティムが落ち着いていることから予測できた。

 結果は…………その通りだった。




「はい。ゼロの拠点の可能性が高い場所を見付けました」

「それは本当か!?」

「何処に……!?」


 それなら落ち着いていたのもわかる。すぐに討伐に行きたいイリヤは急かす。




「拠点の可能性と言いましたが、ゼロの方もヒントを出していたので罠の可能性もあります」

「ヒント……?」

「はい。わかりやすいヒントでした。二つのヒントから天使に探らせて見せたら、幻覚で入口を隠されている洞窟を見付けました」


 拠点のような場所を見付けたが、二つのヒントをわざと出している感じがあったので罠の可能性もある。




「二つのヒントとは、サーズ王国が攻められていた時、魔物は南方向から攻めてきたこと。同時期に空間の揺らぎを見付けました」

「空間の揺らぎ?」

「ええ、空間の揺らぎとは、転移をする時に起きる現象です。その空間の揺らぎが南からありましたので、念のために天使に調べさせたら…………見付けたのです」

「……つまり、空間の揺らぎもワザと?」

「ええ、魔王クラスとなれば隠すのも出来ますからね。魔王ゼロは今まで転移を多用しているはず。だけど、反応を見付けたのは今回の一回だけです」


 それならワザと空間の揺らぎを隠さなかったと予想出来る。

 拠点のような洞窟を見付けたのはいいが……、それは罠の可能性もある。しかし、調べに行く価値はある。




「罠だとしても、調べる価値はあるな」

「そうですね。行くなら勇者だけで行った方がいいわね」

「腐腐腐……、そうね。兵士を送っても魔王が造った罠で全滅も予測出来るし、魔王本人がいると考えてここにいる勇者全員で攻めた方がいいわね」

「……ああ、早い方がいい」


 今まで黙っていた勇者クスハが案を出し、ゴウダも了承する。もし、魔王が待ち構えていたら兵士では役に立たないし、勇者一人だけでは前の二の舞になる可能性が高い。

 『風塵の勇者』の件があるのだから…………




「俺も着いて行きたいが、いいか?」

「私も。カズトと一緒に戦うと決めているのだから」

「ふん、ワシも行くぞ。前の借りを返さんとな」


 勇者カズトのパーティメンバーも着いていくと。




「……よし、行くメンバーは決まったな? 皇帝もそれで構いませんか?」

「ここの護りが弱くなってしまうが、ここで勝負を決めるためなら仕方がなかろう…………」

「私は念のために、ここで待機しておきますので、安心して魔王を討伐しに行って下さい」




 皇帝も了承し、勇者カズト、勇者タイキ、勇者イリヤ、勇者クスハ、勇者ゴウダ、カズトのパーティメンバー三名が魔王ゼロ討伐を組まれ、『勇者連合軍』が生まれたのだった…………







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