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第百十話 激突



 飢餓感に襲われて狂うミネアは自分の一部であった茨、それを食い続ける。

 その隙に、フォネスがミネアの配下、一人を配下の元まで行かせる。




「ゼロ様、助けましたが、私もやりますか?」

「いや、下がれ。身体能力だけはお前達を越えているから捉えることは出来ないだろう」

「了解しました」


 ゼロは一人で相手をするつもりだ。ミネアはまだ食い続けているから大人しいが、暴れ始めたら配下達では足手まといになる可能性が高い。




(始めから本気で行く。あれも使うぞ)

『……うん、準備は出来ている』


 手に持っている”白零剣ネメシス”に力を込め、ミネアに突っ込む。

 こっちに向かっていると気付いたミネアは茨の翼から茨の鞭を伸ばしてくる。

 僅かは、知能が残っているようで、迎撃してきた。




「はっ!」


 茨の鞭を”白零剣ネメシス”で切り伏せて進む。斬られた茨の鞭は再生せずに地に落ちるだけ。

 それに違和感を感じたのか、茨の鞭を出すのを止め、この場から離れた。




「逃がすか!」

「ああ、あああ……」


 ミネアの腹から茨で出来た不出来な剣を作成し、取り出していた。

 剣で相手するようだ。




「あ、あぁぁぁ!!」


 叫びながら正面から剣を打ち出してきた。ゼロはそれをまともに受けずに避けてから脇腹に剣を切り付ける。

 スピードが桁外れに上がっているなら、パワーもゼロより上だと判断して受けなかったのだ。




「隙が大きいぞ」


 さらに背中にも切り付けて、片翼を切り落とした。




「ギィィィーーー!! エサエサァァァがぁぁぁ!!」


 ミネアは斬られた場所を自分の剣で切り落として再生をしてまた突っ込んできた。




(ちっ、面倒な相手だな……)

『……塵にすれば生きてはいられない』

(それしかないな。まず、あのスピードをなんとかしないとな)


 大技で全てを消す必要があるが、発動瞬間に避けられては堪らないからまず、動きを止める。






「『魔王の証』から造り出した能力を見せてやろう。武装能力ドレススキル冥王布装マリアベル』発現!!」






 武装能力ドレススキル。それは希少スキルでも王者能力でもない新たなスキルであり、装備品そのモノになる。

 スキルとは、実体のないものであり、今まで希少スキルや王者能力で発現していた剣や物はエネルギーであり、実体のある物ではない。


 だが、武装能力は実体があるスキルであり、今まではなかった新たなスキルである。

 ゼロが持つ武装能力『冥王布装マリアベル』はゼロが今まで着ていた黒のコートにスキルのエネルギーが組み合わせられ、冥王が着るような深い闇のその物になった。




「お前の『暴狂王ベルゼータ』は何でも喰うみたいだが、何もない闇は喰えないだろう?」


 闇のように真っ暗なコートの裾が伸びて、ミネアを狙い動く。




「ガァァァ!」


 ミネアは避けずに真っ直ぐ切り付けながら進むつもりだったが…………






 スカッ! スカッスカッ、スカッ!






「ギガァ?」




 全く斬れずに通り抜けるだけだった。手で掴もうと思ったが、掴めなかった。

 まるで闇のように、何もなかった。ただ黒いのが見えるだけだった…………


 掴むことは出来なかったのに、ミネアの身体に巻き付いて動けなくなっていた。




「ギィ、ガァァァ!?」


 訳もわからずに暴れるが、黒い闇は晴れなかった。掴めないのに、巻き付かれて動けない。

 誰が見ても矛盾していると思うのだろう。


 だが、これでミネアの動きは止められた。




「動けないだろう?」

「ぎぃ、ギィィィ!!」

「って、聞いていないな。まぁ、理性が無くなっているなら仕方がないと思うが……」

「ギィィィ、ガブッ!!」


 ミネアは自分の身体ごと闇を喰らおうとしたが、闇は消えずに自分の身体がえぐれるだけで終わる。






「見苦しいな。こんなのが王者能力持ちの魔王なんて、な……。もう俺の前から消え失せろ。 ”黒炎獄竜巻ダークネスフレアタイフーン”!!」




 火と闇と風の複合魔法、”黒炎獄竜巻ダークネスフレアタイフーン”を発動した。二つの複合魔法を発動出来る魔法使いはそうそうと見つからないのに、ゼロは三つの複合魔法を発動して見せた。






「ぎぃあぁぁぁ、あ、アィィィィィイ、ガァァァァァァァァ!!」






 この魔法は一箇所だけに留め、地獄の炎が風によって強化されて焼き削っていく。少しずつ身体から削って塵さえも残さない。

 まだ『冥王布装マリアベル』によって動きを止められているから炎の渦から逃げ出せない。

 そして…………




「あ、あ、あぃあぁぁぁ……………………」


 最後に顔も消え去り、叫び声も聞こえなくなってきた。




『……終わった』

(これぐらいはしないと死なないか。死体が使えないのは勿体ないけどな……)


 炎の竜巻を消すと、真ん中には『魔王の証』が二つ浮いていた。

 二つの『魔王の証』をゼロが使ったら間違いなく強くなるが、ミネアみたいに狂う可能性もあるからゼロは吸収しない。




「おい、フォネス。一つはお前の分だ」

「え、あ、はい」


 ゼロは一つをフォネスに投げ渡す。受けとったフォネスはゼロと『魔王の証』を往復に見てオロオロしていた。




「使えばお前はさらに強くなれるからな。一つはお前が倒したからお前の物だ」

「は、はい!」


 フォネスは覚悟を決め、自分の胸に『魔王の証』を沿えると、吸い込まれるように消えていく。




「こ、これが魔王の力……?」




 フォネスの呟きと同時に光に包まれた。

 目を覆いたくなるほどの眩しさを放つフォネス。


 尾がついに、九本に増えて光が落ち着いたらその姿が少し変わっていた。

 身長は変わってないが、服装は黒の着物で鳳仙花の絵が描かれている。フォネスが何かに気付いたのか右手の裾をめくるとゼロとレイと同じような入れ墨があった。


 その入れ墨が何なのかわからないが、気にしなくても問題はない。




「確実に力を付けたな」

「はい! 力が溢れて出る程です!」


 フォネスのいう通りに、前と比べにならないほどに実力が違っていた。

 新たな力を手に入れたのも予想出来るが、それは後でいい。


 まず、ミネアの配下の一人に話を聞きたいからだ。






「で、ミネアの配下だったな? お前は」

「……はい」


 正直に答える女性。ここから逃げるのは諦めているのだ。

 魔王級が二人に、配下達も自分から掛け離れた実力を持っているのがわかったからだ。




「まず、名前を聞かせてもらおう」

「……エナです」

「エナか。ミネアと余り話せなかったから聞いていないが、『魔王の証』を手に入れた後はどうするつもりだったんだ?」

「すいません、私にはわかりません。おそらく、他の人も聞いていないと思います」


 他の人とは、ここに来ていないミネアの配下だった者のことだろう。




(うむ、嘘は言っていないみたいだな?)

『……独断で? 配下達にも相談もせずに、チャンスを見付けたから拠点から直接来た。で、二人は慌てて追ってきたってとこかな?』

(かもしれないな。こいつはもう用がないんだが、どうする?)

『……配下にしたら?』

(ふむ……)




 ゼロは考える。配下にしても従うかどうか。

 メリットがあるか…………




「……そうだな、お前はこれからはどうするつもりだ?」

「え、ええと……、拠点に戻りたいのですが、駄目でしょうか?」

「いや、戻った後はどうするって意味だ。ミネアはいないんだぞ?」

「あ……、考えていません」

「なら、こっちの配下になるか? 残っている奴も纏めて。だが、なりたくない奴は自由にしていい」

「え、いいのですか?」


 今のエナは捕虜に近い状態なのだ。だが、そこに自由にしていいと言われて驚いたようだ。




「…………私でも何かが出来るのでしょうか? 戦いではおそらくは役に立たないと思います」


 エナでも戦う力はあるが、ゼロ達の実力を見て、差が大きいとわかったようだ。




「仲間になったら無理に戦わせようとは思っていない。お前達にピッタリな仕事があるからそれを頼みたいだけだ」

「……わかりました。私を仲間に入れさせて下さい。そのことを他の人にも伝えても?」

「いいぞ。マリア、ミーラも着いて行ってこい。もし襲い掛かれたら敵対する者だけ消せばいい」

「「はっ!!」」


 エナにはマリアとミーラが着いていく。話をして、仲間になる者がいたら転移を使って送るためにマリアが行き、ミーラは敵対する者を潰すために。




 予想外のことが色々起こったが、無事に『魔王の証』を手に入れたので良しとするゼロである…………







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