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第百五話 天使の使い



 さっき、何と言った? 目の前にある女性の正体が…………




「せ、聖獣?」

「はい。今の姿は仮の姿ですがね」

「……驚いたな。俺は聖獣がいることを聞いたことがあるが、見るのは初めてだな」

「私も初めてになるな」

「腐腐腐っ、あれの姿が仮の姿なら、本来の姿は何かしら?」

「…………」


 それぞれの勇者達は驚きの表情から戻って口を開いていく。




「本来の姿はここでは狭いから見せられないが、私は天使の使いとして、遣わされたセラティムと言う」

「天使の使いだと?」

「ああ。私は天界から来た」


 天使の使いとして天界から降りてきたと言う。それが本当の話かわからないが、皇帝を通して勇者達を集めたのだから、証拠を見せられなくても信じるしかないだろう。




「では、私達を集めた理由を教えてくれるかしら? 天使と人間の間では協力体勢はないと聞いたことがあるのですが、間違いだったかしら?」

「いえ、天使と人間の間には協力体勢がないのは間違いではありません。ただ、お互いにとっては不具合なことが起こってしまっているので、そのことで話をしにきました」

「成る程ね……」


 勇者側はイリヤが話すようで、カズト達は黙って聞いていた。




「では、不都合についてから話をしましょう。一つ目は一匹の聖獣が魔に堕ちたことです」

「聖獣が魔に堕ちた……?」

「私達、天使側と悪魔側のことから説明は必要ですか?」

「いえ、私は知っているからいいのですが、皆は?」


 天使と悪魔についての話を知っているか、カズト達に聞くイリヤ。

 カズトはテリーヌから話を聞いたことがあるから、説明は必要と首を縦に振った。

 他の勇者達も知っているようだ。




「大丈夫よ。進めてくれるかしら?」

「ええ、最近に聖獣が魔に堕ちて、一人の魔王に従っていました」

「それはどうやって調べたのですか?」

「そうね、順番に話すとなると、悪魔王の一人が死んだことから話さなければなりませんね」

「何だと!?」


 悪魔王の一人が死んだ。そのことに驚き、イリヤは叫んでいた。

 イリヤは悪魔王のことも聞いている。魔王よりも強い実力を持ち、魔界を纏めている七人の悪魔の王がいると。




「私達、天使側がやったわけじゃないわ。誰がやったのかは不明なの」

「そうか……」

「それで、天使を一人、この世界に降りて探って貰っていたの。情報は見た瞬間に、天界に送られるやり方で情報を集めていたわ」

「それを教えに来たということは、何か掴んだと?」


 わざわざここまで来たなら情報を持っていると言うこと。

 どんな情報を……?




「貴方達もよく知っている最強魔王と呼ばれている彼女の屋敷を見付けたの」

「まさか、ミディ・クラシス・ローズマリーの拠点を……?」


 そうなら、とんでもない情報とも言える。




「いえ、拠点とは違っていると思います。思ったより大きくはなかったし、配下が少なすぎたから、隠れ家の一つだと思います」

「いえ、それでもいい情報になりますよ」

「そうですか。でも、重要なのはそこじゃないわ」

「と言うと?」

「あの屋敷にこっち側の天使を一人だけ侵入させました。そしたら、最強魔王と他に一人の魔王と例の聖獣がいました」

「…………」


 イリヤはなんとも言えない気分だった。人間側は魔王が協力をしたり仲良くすることはないと思っていただけに、こっちにしては、嫌な情報だったのだ。




「聖獣はもう一人の男に従っていました。顔に入れ墨が入っていました」

「ゼロ!?」


 カズトが思わず声を出していた。入れ墨だけでは判断出来ないはずなのに、カズトはゼロしか思い付かなかったのだ。




「もしかして、カズトが知っているということは、宣戦布告をした魔王ですか?」

「は、はい。ゼロといって、元は僕達と同じ日本人でした」

「はぁっ!?」

「それは初めて聞きましたが……?」

「腐腐腐っ、私達と同じだったということは、召喚されたの?」

「…………」


 ゼロが元日本人だったことと転生者であるということは伝わってなかったようだ。

 そうだろう、勇者と同じ日本人が魔王になって宣戦布告してきたことなんて言えないだろう。

 民達から勇者に対しての信頼が薄くなってしまう可能性もあるのだ。それを防ぐために、その情報は公表してないだろう。

 聞いてくる勇者達にそのことを軽く説明するのだった。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






「……転生者か、まさか本当にあるとは考えなかったな」

「ははっ! 面白ぇな、そのゼロと言う奴は」

「腐腐腐っ、『風塵の勇者』を殺したのもその魔王に関係があるとはね。腐腐腐っ…………」

「……危険だな」

「成る程。それだけやってきている魔王なら、悪魔王をやったのもそいつかも知れないな」


 『風塵の勇者』のことは推測でしかないが、魔王ラディアを殺し、強い配下を持ち、様々な村や街を潰してきたゼロなら悪魔王を殺しても不思議ではないとカズトは思っている。




「ミディ・クラシス・ローズマリーの屋敷にいたと言うことは、手を組んでいる可能性はありますね」

「ええ、魔王が減っているのはミディとゼロのせいだと考えた方がいいですね」

「待てよ、魔王が減っているって? ゼロが加わったなら、数は変わってないんじゃないのか?」

「どうやって魔王が増えるのかはわかりませんが、短期間に魔王が二人死んで、一人が新しく生まれました」

「……新しく生まれたのはゼロとして、二人が死んだ? 魔王ラディアと誰だよ」


 タイキがそうセラティムに問い掛ける。

 いつの間に、魔王が減っていた? その一人が魔王ラディアならもう一人は誰だったんだ?




「成る程、貴方達はラディアと言う者を魔王だと思っていたのですね。短期間に死んだと言ったのに、四ヶ月前に死んだ者の名前を言うのはおかしいと思いました」

「……は? 待てよ、混乱してきたわ」


 落ち着いて天使側と人間側の情報を照らし合わせてみる。

 それで、間違いがあったことにわかったのだった。









「まさか、ゼロが現れる前には魔王が12人もいて、ラディアは魔王ではなかったのか…………」

「ということは、魔王が二人も死んだのはゼロがやった可能性があると?」

「短期間に二人が死んでいますし、ゼロと言う者は活動が激しいのでしょう?」

「ああ、今まで聞いた事件が全て、ゼロがやったことなら可能性があるな」


 タイキも話に加わって可能性を話し合っていた。カズトもそうだとしか思えなかったのだ。

 天使側の情報では、魔王が12人になってから、50年程は魔王同士で戦ったことはなかった。だが、急にゼロと言う魔王が現れて魔王を二人殺して、ミディと組んでいるのだ。疑わないのはおかしなことだと思う。




「二人の魔王を殺したのがゼロだと言うなら、これからも魔王が減っていく可能性が高いですね」

「世界征服の邪魔になるから?」

「そうね。ミディと組んだのは勝てないと悟ったからか、ミディが世界征服に興味がなくて、邪魔をしないからかもしれないね」


 リイヤとタイキはそう言うが、カズトは違うと思う。

 あのゼロが勝てないからって組むなんてありえないと感じていたのだ。理由はわからないが、組んだ方がゼロに利があると考えてかもしれない。




「話を戻しても構いませんか?」

「はい。ここに来たのは人間と天使が協力するためにで間違っていませんか?」

「協力……、少し違うかもしれません。私達は堕ちた聖獣を消すために貴方達に会いに来ました。魔王が貴方達の所を攻めても天界から助けを出せません。だけど、情報はあげましょう」

「……ギブアンドテイクってとこね。貴方は情報。こっちは堕ちた聖獣を見付けたら殺して欲しいと?」

「そうなります。しかし、私もここに留まりますので、ここに攻めてきたのが堕ちた聖獣が従う魔王なら手伝いましょう」

「……皆もそれでいいね?」

「ん〜、まぁそれならいいんじゃない?」

「腐腐腐っ、契約成立ね」

「…………(コクッ)」

「僕もそれでいいです」




 今日は皇帝の間で、それらのやり取りがあった日になるのだった。




 会議が終わり、いつ魔王が攻めてくるかわからないが、もっと強くなって平和をつかみ取りたいと思うカズトはすぐにガイウスの元に戻るのだった…………







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