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第05話 ~そのモノが語る物語~

 ワタクシこと傲慢(アロガンス)が、まず初めに偉大なる万魔(マスター・オブ)の主(・パンデモニウム)に申し上げるべきは、母なるアナザーアースの求めで御座いまして。

 貴方方が大地喰らい(ランドイーター)とお呼びになっている我が同胞、飽食(エンゴージメンス)の芯核の引き渡しに御座います。

 何をとお思いでしょうが、ここは今しばらくワタクシめの言葉をお聞き願いたい。


 そも、我らが母なるアナザーアースはご存じでしょう? そう、かつての世界においての創造神にて世界を支えられていた偉大なお方で御座います。

 かつては半神たる位階に至った貴方様方ならば、その過程にて一度はお目通りなさったはずで御座いますね?


 ええ、そうですとも。

 貴方様がご自分の小世界にて再現されておられる天界(ライトスペース)、あのお方はそのオリジナルたる真なる天界中央にて世界を遍くお照らしになられておいでで御座いました。

 半神たる伝説の位階に至るには、あの方にお目通り願い、その上で試練を受けねばなりませぬ。

 そして貴方様方は試練を成し遂げられ、その位階へと至られた。

 まことに貴いことに御座います。


 そして斯様なように、世界はあの方の威光の元、七曜神の摂理の調停と七大魔王の破壊の刺激により安定と発展を繰り返していたのです。

 それは悪魔たちの住まう魔界(ダークスペース)も同様で御座いまして、光も闇も遍く聖も魔も等しく世界を構成する一要素で御座いました。

 全ては母なるアナザーアースの庇護の下、永遠の発展と繁栄がもたらされるはずで御座いました。

 ですがある時、その世界が滅ぶと決まったのです。

 ええ、皆様のご存じの世界の終わりに御座います。

 ワタクシ共滅びの獣の舞台で御座いますな?

 ええ、ご存じで何より。

 ワタクシも良く覚えております。

 その滅びが定められた瞬間、ワタクシ共が生み出されたのですから。


 …おや? ワタクシ共の誕生を詳しくお聞きになりたいと?

 まぁその辺りはまたの機会にお話ししましょう。

 今は先にお話しすべきことがございますので。

 

 かくして滅びは決定され、ワタクシ共が生み出され、世界に大いなる存在の滅びの宣誓が為されたとき、奇跡は起きたので御座います。

 そう、世界の滅びと言う死を前にして、母なるアナザーアースもまた、真なる意思と魂を宿したので御座います。


 ええ、はい。貴方様が配下に置かれた魔物達のように、で御座いますな。

 大いなる母も、当初は混乱されたようですが、しばしの後にその迫る死を受け入れられておいでで御座いました。

 何しろ免れぬ死とはいえ、生まれ変わりが約束されておいでなのですからな。

 それにワタクシ共滅びの獣としても、しっかりと働くよう申し渡されれば否もありませぬ。

 ご存じですかな?

 我ら滅びの獣は、滅びをもたらした後は世界の再生の礎となる定めなので御座います。

 例えば貴方様もご存じの飽食(エンゴージメンス)などは、増殖した銀の身体が死したのちに銀の液となって大地に染みこんだ後、多種多様な鉱脈と化すので御座いますよ。


 …失敬を、話がそれましたな。

 かくして滅びに際しての準備を成されておいでだったアナザーアース様は、ある時ある存在を察知され思いもよらぬ希望を知ったので御座います。

 世界が滅びる以上多くは生きられぬ数多の者たちへ、救いの手を差し伸べる者が居ると。

 困難と呼ばれる数多の魔物を生き物たちを、作り出した小世界にかくまう者が居ると。

 そう、貴方様に御座います。


 その喜びはいかほどのモノであったか、所詮まずは壊す事しか出来かねるワタクシ共では想像もつきませぬ。

 ただ存じ上げるのは、あのお方がご自分で成されている世界運営の権能を、七曜神と七大魔王に完全に譲り渡した事で御座います。

 七曜神と七大魔王にもその頃には当然自身の意思があり、貴方様の配下になるにしても易々とは行かなかったのは想像に難く御座いませぬ。

 ですがもしその偉業を成し遂げられた際には、あのお方無くしても世界は維持されると、そう仰られておいでで御座いました。

 そして事実貴方様は、かの偉業を、小世界による箱舟を作り上げられた。

 アナザーアース様もとてもお喜びになられておいでで、とある悪戯も…おや、今のは聞かなかったことにしていただけますかな?

 ええ、ええ! 感謝いたします!

 …あれはある意味保険であったのかもしれませぬが、ワタクシめの口からは言えませぬので。


 …また話がそれましたな。

 ともあれ、そうやって世界が終わったのは事実。

 ですが、予定した終わりは訪れなかったので御座います。

 ワタクシ共が滅びを成すまでもなく、世界は滅び去った。

 …貴方様はご存じでしょうか?

 かつての世界の裏にして滅んだ世界である『死の世界(デッド・ザ・アース)』を。

 おや? ご存じない?

 なるほど…であれば、その今現在の呼び名はご存じで御座いますかな?

 今のこの世界の者たちは、こうかの者を呼んでいるのですよ。

 『デザース』と。


 ええ、ええ。その通り。デザースとはこの世界の名で御座います。

 同時にこの世界における宗教、唯一神教会にて崇められている主神で御座いますよ。

 つまり、かつての世界を滅ぼしたのは、ワタクシ共ではなく、その滅びの世界の化身たる神だったので御座います。

 かの者は、母なる世界で失われたモノが集まる朽ちた世界の象徴。

 それもまた、大本たる『世界』の死に際して意思を持ったのですから皮肉なもの。

 ワタクシ共めは、所詮世界の再構築のための破壊を担うだけで御座いましたが、かの者は違いました。

 世界の裏から現れたかの者は、権能の全てを譲った母なるアナザーアース様に弑逆し、生まれ変わるべき世界を己の側と定めたので御座います。

 これに対し、ワタクシ共滅びの獣は抗いました。

 生まれ変わるべきはアナザーアース様。かの簒奪者を野放しにできぬと、己の滅びの本分を、滅びをかの者の生まれ変わりとしての世界に為し続けたので御座います。


 ですがアナザーアース様より主神としての力を奪ったかの者には叶わず、ワタクシめ共は何度も滅ぼされてまいりました。

 幸いワタクシめ共も滅びの後の再生も司っている為に、幾度滅ぼされようと復活いたしますが、再生までには時間がかるので御座います。

 その期間、おおよそ1000年。


 かくしてこの1万年。ワタクシ共と滅びの神から新たな偽神へと至りしデザースとの戦いは続いたので御座います。

 ワタクシ共は知っておりました。

 かつての英雄、賢者たる貴方様方が復活する100年を100回重ねた時、アナザーアース様もお力を取り戻すのだと。

 ですが、デザースめが力を振るえる状況での約束の時の訪れは、危険に過ぎると。

 故に遡ること1000年前、ワタクシ共は残る力の全てを以てしてデザースなる簒奪者が作りし世界に滅びをもたらしたので御座います。

 結果は、かの者はそれまでに積み上げた世界を失い、しかしてワタクシ共は、七匹の内半数は実体を失い、残りの半数は魂を砕かれました。

 実のところ、ワタクシめは実体を滅ぼされた一匹に御座いまして、今は幽気体のみの存在で御座います。

 都合よくこの者とは相性が良かったために、こうして話せておりますが…これも余談で御座いますな。


 ともあれ、今、我らが待ちに待った約束の時がやってまいりました。

 10年ほど前から現れた光る門こそ、かつての英雄賢者が現れる門そのもの。

 どうやら些細な行き違いにて、飽食(エンゴージメンス)は貴方様方の門にさえ食らいついたようで御座いますが、どうかお許しくださいませ。

 かの者は、1000年前の戦いにて魂を砕かれた内の一匹なので御座います。

 飽食(エンゴージメンス)は丘陵地にて封印されておりましたが、恐らくはデザースの者がかつての英雄を傷つけた気配でも感じたか、もしくは最早飢えしか残っていなかったので御座いましょう。

 かつての世界の住人たる貴方様方に食らいついたのも、魂が砕かれていたが故。

 貴方様方に被害が出ぬうちに打倒されしは、あの者にとっても行幸で有った事でしょう。

 ですが、あの者はワタクシめ共の同胞に御座います。

 そして力を取り戻しつつあるアナザーアース様のお力の元であれば、砕けた魂さえ癒され、本来の役割を思い出すことで御座いましょう。

 故にあの者の、飽食(エンゴージメンス)の芯核をお譲りいただきたいのです。


 無論、無償でとは申しませぬ。

 金銭や宝物などは…貴方様方が既に持ち得ているもの以上をご用意できないというのが正直なところで御座います。

 ですが、情報ならば何なりと!

 残る我ら滅びの獣や、この地以外の事も相応に調べ上げておりますれば、必ずや貴方様方のお役に立つ事で御座いましょう。

 そうですな…まずはここまでの話は前払いと致します。

 価値は相応にあると思われますが如何で御座いましょう?

 勿論お譲りいただけた際には、このフェルン侯領の文官の長も務めるワタクシめが、知り得る限りのこの世界の情報を余す事無くお教えする事をお約束致します。

 それとも、このフェルン領での助力を願われる?

 勿論力を尽くしましょうぞ。

 文官の長と言うのは中々に耳が良く手が長いもので御座いまして…この領内の事ならば、大概の事が…

 はい? 龍王殿の仕官について?

 ああ…正直なところ、断るのは難しいのでは?

 今の実体なきワタクシめは、過労で心身疲労の極致程度の人間にしか憑りつき乗っ取れぬので御座いまして…仮にも半神たる伝説級位階のシュラート様には通じぬのです。

 ああ、もし仕官なさるのであれば、この身が万全の支援を致しますとも!

 綿密な情報のやり取りに、貴方様方への便宜は欠かしませぬとも。

 勿論全てこのワタクシめにお任せくだされ、偉大なる万魔(マスター・オブ)の主(・パンデモニウム)殿。

 では、返答は如何に?

しばらくは図鑑優先で更新していきたいと思います。

一応、新作も応援していただけると幸いです。


【1章 完】幻想世界のカードマスター ~元TCGプレイヤーは叡智の神のカード魔術のテスターに選ばれました~

https://ncode.syosetu.com/n8214hg/

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― 新着の感想 ―
[一言] 怒涛の情報量w
[一言] この話が事実かどうか・・・ あ、龍王さんの仕官は是非とも断ってほしい所。
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