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章間 小話 とても今更なアナザーアースのシステムのお話 その1

「なぁ、ライリーの兄ちゃん。俺ってどうやったら強くなれるんだ?」

「あん? 何だ急に」


 同盟(ユニオン)のリーダーである夜光が多忙なある日、新加入した盗賊めいた皮鎧姿の少年ユータは、同盟のメンバーのライリーに問いかけていた。


「いや、なんだかスナねーちゃんは忙しそうだし、俺アザッスはじめたの最近でよく知らないんだよな」

「アナザーアース、な。ああ、お前さんは初心者も初心者だったか。つまりシステム回りの何も知らんってことだな?」

「うん、そうなんだよ。スナねーちゃんはなんか俺が何しようとしても『未熟者のお前には早い』って、なあにもさせてくんねーし」

「そんなもんか? レディスナはスパルタな印象が強いんだがなあ……」


 不満そうなユータの言葉に首をかしげるライリー。その傍に控えていたメイド人形のメルティがライリーに耳打ち、補足する。


「……師は、一定の力を示すまで、非常に過保護です。恐らく、ユータさまは最初期教育チュートリアルの途中でこの世界に来られたのではないかと」

「マジかよ。だが、そんな有様じゃ、アナザーアースの成長システムも知らんわな……よし、ちょいと教えてやるか」


 新作ゴーレムのアイディアに行き詰まっていたライリーは、気分転換に丁度良いとユータに向き合う。


「まず、さっきも言った位階と称号の話だ。位階は単純にレベルと考えれば良い。経験値を積んで行くと、こいつが上がっていく、それは理解してるな?」

「うん、俺も19まで上ってる」

「その前に、下級と付いてるのも忘れるなよ? ここがむしろ重要だからな?」


 ライリーは、新作ゴーレムのアイディアを書き込んでいたノートに、さらさらと何かを書き込んでいく。

 伝説級、上級、準上級、中級、下級と記された横に、それぞれ1~100と記し、ライリーはユータに見せる。


「コレが、位階の大まかな図だ。お前さんは下級の19、俺は伝説級の100だ」

「え~っと、つまり俺とライリーの兄ちゃんとだと、400以上も位階差があるって事になるのか?」

「それは合って居るが、盛大に間違っても居るんだ、コレがな」


 そういうと、更にライリーは各位階の横に、追記していく。

 中級の横に『x10』、準上級の横に『x100』、上級の横に『x1000』、そして伝説級の横に『x10000』。


「コレが何か判るか?」

「……強さって事?」

「ああ、位階が一つ上がるとだ、その強さの桁が一つ上がっていくってこった。HPも、基礎能力も、ダメージも、全部な。そう考えると、俺っちとお前さんとの差は、5桁以上違うって事になる」


 へ~、と描かれた図をみるユータ。

 実感は無くとも、漠然とその力の差が存在すると言うのは感じ取っているようである。


「でだ、此処からが問題なんだが……実を言うとだ、位階で決まっている能力ってのは、基本的にプレイヤーキャラは共通なんだ。俺も、お前さんの今の位階、下級19の頃はお前さんと全く同じステータスだったんだぜ?」

「へ? そうなのか?」


 意外そのものの表情で、ユータがライリーを見る。

 二人はそれぞれ少年らしい姿と、青年らしい姿。それが同じ位階であると全く同じステータスになると言うのは、少し想像し難かったのだろう。


「ああ、キャラ差は基本的に無いんだ。その代わり、種族補正やら称号補正でカスタマイズして個性を出していくんだが……これは後の話だな。ともかく、そんな位階も補正が一切無いときは全員共通のステータスだってのは覚えて置けよ」

「わかった! ってことは、俺もライリーの兄ちゃんみたいに強くなれるって事だろ?」

「ああ、まあな。だが、お前さんが俺っちほどに強くなるには、ちょいとひと手間必要だ」


 そういうと、ライリーは中級と準上級、準上級と上級、上級と伝説級のそれぞれの間に、線を入れていく。


「これがひと手間だ。アナザーアースが順に拡張パックを追加していった名残でな、この線の所で特定のクエストをこなさないと、上の位階に成長できないのさ。所謂、レベルキャップと開放クエストって奴だ」

「えー? 何かめんどくさいよ兄ちゃん」

「俺っち達もそう思いつつこなして来たんだ。察しろ」


 ライリーは更に追記して、中級の上限に引かれたラインに『人』、準上級の上限に『地』、上級の上限に『天』と書き加える。


「開放クエストは、それぞれ『人の試練』『地の試練』『天の試練』って名がある。人と地の試練は、冒険者ギルドで受けて、天の試練は天界に上る必要があったんだ。これのせいで、こっちの世界では開放クエストの受注が不可能で、中級以下の位階の奴らは強くなれないんじゃないかと思ってたんだが……」


 ライリーは、夜光とその配下となった色欲の大魔王を思い浮かべた。


「ウチの同盟ユニオンのリーダーが抜け道を見つけたから、その心配も無くなった。その点、お前さんは運がいいと言えるな」

「えへへ……そうか?」

「そうなんだよ。他にこっちに流れ着いてるプレイヤーで、アナザーアース2に移行しようとしてコンバートしたような奴は、かなり苦労するはずだからな……」


 夜光の見つけた抜け道は、かなり特殊だ。

 皇都として再現されたアナザーアースの王都、その冒険者ギルドに該当する建物は、現在グラメシェル商会という皇国でも有数の大店。

 その敷地内で冒険者ギルトのギルド長をコピーし、疑似的にクエストを発生させると言う手法は、商会とかのギルド長を知るコピー能力のある存在の協力が不可欠だ。

 夜光はそれを満たし、準上級へ、そして上級も視野に入る段階にある。

 その同じ道を、夜光と同じ同盟メンバーは歩めるのだから、ユータは確かに幸運と言えるだろう。


「だが、良い事ばかりじゃないぞ? 次に話すのは、お前さんにとってもかなり深刻な話だ」

「えっ、何だよ急に。位階さえ上げて行けば強くなれるんだろ?」

「いや、弱いぞ?」


 へ? と首をかしげるユータに、ライリーはある種無慈悲に告げる。


「位階を上げても、全くスキルや魔法、それに能力補正に戦闘補正もかからん。位階で上がるのは、本当に基本ステータスだけなのさ」

「じゃぁどうしろって言うんだよ!?」


 憤るユータに、まぁまぁとなだめつつ、ライリーは告げる。


「話は最後まで聞けよ。そこで重要になってくるのが、種族と称号なのさ」


 ライリーはノートをめくるとさらさらと何やら書き込み始める。

 ユータはその姿を大人しく眺めていた。

無事2巻最終稿脱稿しました。

アース・スターノベル様の公式ページの更新に併せ、また2巻情報をお送りしていこうと思います。

今週末か来週あたりには、書影をお見せできるかと……

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