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【書籍4巻刊行中】万魔の主の魔物図鑑 【6章完】  作者: Mr.ティン
第5章 ~新大陸への来訪者~
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第05話 ~神魔会議 神々はかく語りき~

「ど、どういう事!? 霧を消して、世界を融合させたのが、此処にいる皆がやったって!?」


 ルーフェルトの言葉に、僕は前のめりに高慢の大魔王ルーフェルトへと詰め寄りかかる。

 だけど、ソレよりも早かったのが、陽光神ハーミファスだ。

 一瞬の閃光、そして漂う焼けた空気の匂い。


「……何をするのかね」

「過程も意図も端折り過ぎと言うものぞ、高慢の。そなたは未来を見るが故に過程を抜きすぎる」


 少女の姿の太陽の神の指先から、強烈な熱戦が放たれ、ルーフェルトの額を貫いたのだ。

 陽光神ハーミファスは、太陽の化身。その力は、時に太陽のフレアを収束させたような熱線を放つこともできる。

 彼女の口ぶりからして、意図的に露悪的な表現をした大魔王を少したしなめた。そういう事なのだろう。

 ただ、流石は大魔王。恐らく牽制程度に放たれたとしても下位の位階の者なら一瞬で焼き尽くされるような熱線を受けても、まるで効いた様子がない。

 口元に浮かべた微笑を消さないルーフェルトには、何も言っても無駄だと改めて悟ったのか、太陽神ハーミファスが言葉を継いだ。


「一応言うておくが、そもそもこの事態は我らが望んだ事ではない。その事を前提に話を聞いてほしいのじゃ」


 前置きとしてそんな事を言いながら、ハーミファスはマイフィールドの霧が消えた理由を語り始めた。



 そもそもの発端は、僕がこの神々と大魔王達に、僕のマイルームの運営を頼んだことから始まったらしい。

 僕が不在の間の、マイルームの世界のバランス、そして各資源の出現調整や、希少の制御などなど。


 これらは、本来アナザーアースのマイフィールドでは必要なかった事だ。

 何しろ、幾ら広い小世界と言っても、データとして数値を調整するだけで済む。

 だけど、この世界は、そしてこの地に生きるモンスター達は、実体を持ってしまった。

 そうなると問題になってくるのが、環境の維持だ。

 なまじ実体を持ってしまったことで、この世界の環境は、容易に維持できなくなってしまったのだ。

 考えても見て欲しい。例えば僕のアクバーラ島には、無数の川や湖、そして氷河などが存在する。

 それらに水分を供給するのは雨だ。

 だけど、このアクバーラ島周辺の海だけでは、それを担うだけの雲を、雨を作り出せない。

 また、この小世界を霧の境界で区切られた閉鎖空間と見た時、南西部の大森林があるとはいえ、いずれ空気は澱んで行ったと思う。


 元々七曜神と七大魔王は、世界の運行を担う存在だけに、任せるのに不安はなかった。

 特に七曜神は、自然神の傾向が強い。

 マイフィールドの運行を任せるのに、問題はない。その筈だった。


「うむ、我らにその役目を任せたのは、間違いではない。しかし、だ。我らも知り得ぬ事であったのだが……」


 そもそも根本的な話で、マイフィールドの各世界は、恐らく東の大陸に『門』が出現した時点で、この世界に存在していたと言うのだ。

 恐らくは、今の位置そのままに、霧で周囲を囲まれた状況で。


「そんな事が?」

「憶測だが、正しいであろうな。何より、完全に閉鎖されていたわけではないのは、空を見上げればわかり切っていた事なのじゃ。我ら三天光が天空に輝いて居った時点でな。それ故、風浪神めが彼方此方彷徨うなどもしたのであろうが」


 陽光神に意味ありげに視線を送られ、視線を外す風浪神ゼフィロート。

 あの神性の事だ。自由に動き回れる方策を得たなら、気まぐれな風が大人しくしているはずがない。

 今考えてみれば、境界である霧は、天空高くには至っていなかった。

 だからこそ、皇都で僕らの前に彼ゼフィロートが姿を見せたのだろう。

 その証拠に、僕のマイフィールドでは多彩な顔を見せる空が良く見えている。


「あとは、さしもの赤い霧も、地中深くには届かなかったみたいね」

「ドワーフらが利用している地熱があるだろう? そして、バルカノ火山。あれらの地下のマグマなど、閉鎖した世界では直ぐに冷めてしまうだろうが、そうではなかった」


 大地母神カーラギアと、火焔神ジャスマハード。双方が言うのは、逆に地下の話。

 確かに、ドワーフ達は南東部の地下奥深く、マグマの流れを利用して強靭な魔法金属の加工を行っていたし、バルカノ火山は常に溶岩を噴き出している。

 それはデータとして『在る』と定義づけても、もっと大きなエネルギーの供給減が無かればいずれ冷めきってしまうであろうモノだ。

 つまり、小世界が実体化した時点で、どこかの世界に出現していた、そういう事なのだろう。

 あれ? だとすると、むしろマイフィールドの周囲で世界の境界線として出現していた霧って何だろう?

 そんな僕の疑問に答えたのが、老人姿の月影神トリエント・ポーだ。


「何故あの境界が発生していたのか、それはわからぬ。恐らくは、初めは『外』とやらの世界に異物とされた故、隔離されたのじゃろうがな」

「しかし、我らが世界の管理者として力を振るうたび、それらの閉鎖していない領域から、力が流れ出していったのじゃ。そして、少しづつ、それらの力を介し、境界の『外』と『内』が馴染んでいったわけじゃな」


 陽光神ハーミファスが月の神の言葉を引き継ぐ。

 だけど、アナザーアースの物が『外』の世界に異物として隔離されるのなら、僕等『プレイヤー』はどうなのだろう?


「それについては、土地と人とで扱いが違うのだろうとしか言えませんね。私達もまだまだ全てを把握したとは言えませんから。ただ、小世界が土地として出現したのが西の大陸において、だけど『門』は東の大陸に出現した。それらの理由も私達にはまだわからないの」


 未来を断片的にとは言え見通せる筈の淑女の姿の星辰神アネルティエも、過去や現在には力が及ばない。起きている事象の全てを解き明かすのは困難なようだ。


「むしろ、夜光らが『外』で活動したことが、その『馴染み』が進む要因になったのではないかと推測するぞ。そして、一定以上世界が馴染んだことで、異物とはされなくなった。その結果が、境界である霧の消滅と言えるだろう」


 そう水流神ウェタティルトが告げる。

 なるほど、確かに確かに細かい過程を省くと、マイフィールドが『外』の世界に出現した、一つになったのは、神々が力を振るったから、つまり世界を融合させたのは彼らと言えなくもない。

 だけど……内容には、多分滅びの獣の件も含まれているではないだろうか?

 アナザーアースの神の力が外に流れ込むと世界が馴染むと言うのなら、あの滅びの獣たちもまた強力な力を持つ一種の破壊神的存在だ。

 僕が遭遇したのは、<飽食>の<大地喰らい>、ナスルロンの領主を変貌させた<羨望>、そして皇都の<貪欲>。

 あとは、文官の身体で接触してきた<傲慢>もそうだろう。

 多分他の3体も、あの世界で活動しているはずだ。

 それらが外の世界で活動し、破壊をまき散らすと言う事は、その力の拡散を推し進めたのではないだろうか?


 そこまで考えて、ふと我に返る。


「結局、原因ではあるけど、この先どうしたらいいか、とかの参考にはならないなぁ」


 そう、彼らをここに集めたのは、この先どうするべきかのアドバイスや助けを求めたからだ。

 境界の霧が消えて、無数のマイフィールドが西の大陸に出現した事や、南東の領域に流れ着いた『外』の船の問題。他にも幾つも抱えている問題を処理しきれなくなったからこそ、彼らに頼ったのだ。

 それに対して、まだなぜ今の状態になったかの確認しか出来ていない。

 そこまで考え頭を抱えて……僕に向けられた視線に気づいた。

 顔を上げるとその視線は、高慢の大魔王のものだった。


「安心したまえ、我が契約者。我々が力を貸そうじゃないか。助言どころか、実務もこなして見せようとも」


 ルーフェルトが、自信ありげにほほ笑む。

 つまり、僕を助けてくれると?

 そして、同様の視線がいくつも。

 とは言え問題が一つ。

 その視線は全て、大魔王達からのものだったのだ。

書籍1巻刊行中です。


明日の朝の更新は私用により出来ないかもしれません。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 統治に必要な欲求については魔王たちのほうが詳しそうですねぇw
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