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【書籍4巻刊行中】万魔の主の魔物図鑑 【6章完】  作者: Mr.ティン
第5章 ~新大陸への来訪者~

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第02話 ~神魔会議 霧晴れし大地~

 マイフィールドの境界に存在した『霧』、それが晴れたのは僕の領域だけの事では無かった。

 僕を含むプレイヤー全てのマイフィールドの境界が、失われたのだ。


 それを知ったのは、皇王ヒュペリオン陛下との交渉の席でのこと。


「で、我が皇城に何やら耳目をばらまいたらしいが、その申し開きはあるのであろうな?」

「ええ、それはその、ですね……(拙い、完全にばれてる…!)」


 いや、正直に言えば、詰問されていた。


 僕達はの同盟(ユニオン)迷子達(ロストチルドレン)は、縁を結んだプレイヤー間の相互協力と、現実への帰還方法を探ると言う大目標を掲げている。

 その為のヒントがあると信じ、この外の世界での情報を集めて来た。

 モンスターに寄る情報網の設置は、その有力な手段だ。

 手始めに、僕やホーリィさんらの『門』がある森からほど近い港町ガーゼルに拠点を築いたし、行く先々でその地の状況に合ったモンスターを配置してきた。

 例えばガーゼルでは、夢魔の魔王であるリムスティアの配下の悪魔たちが、住人の精神に密かに潜んで、その思考の奥底まで覗いては情報を引き出していた。

 アナザーアースにおいて、イベントなどで夢魔が人の精神に潜むというのはある種の定番で、憑りつかれた本人も気づかないほどそれは巧妙だ。

 特定のイベントアイテムで直ぐに引きはがすことが可能なのだけど、逆に言うとイベントが発生していないとプレイヤーが閲覧可能な情報ウィンドウでも判別つかないほどだ。

 

 ……これに関しては、実はリムスティアがいつの間にか広めていて、密かに頭をかなえたのを覚えている。

 よそ様の精神に悪魔を仕込むと言うのは、流石にグレーを通り越して真っ黒じゃないだろうか? と、流石に咎めた僕に、リムスティアは平然としたものだった。


「大丈夫よミロード。変な所で尻尾を出す事の無いように、操ったり自意識を奪ったりはしないから。むしろあの子達、宿主のちょっとした心労を癒したりしてるもの」

「……それ、本当に気づかれない?」

「霊体化した上級位階の悪魔をどうこうできるこちらの人間は居ませんわよ、ミロード」


 その時はそう言って笑っていた彼女だけど、フェルン候達のような伝説級に至る現地の人達の存在を知ってからは止めさせることにした。

 

 透明化能力のあるモンスターに寄る調査も、同様の理由で中止した方法の一つだ。

 他にも風の精霊による盗聴や、幾つかを考え試して、一番気付かれにくい情報網として広めたのが、聖なる幽霊(ホーリーゴースト)による方法だった。

 モンスターとしての力が余りに弱く、同時に存在が希薄な聖なる幽霊(ホーリーゴースト)は、人々の願いを天に届けるという役目を持った下級天使だ。

 その伝承をもとにデザインされたアナザーアースの聖なる幽霊(ホーリーゴースト)は、基本的に倒すことが出来ないし、霊体化したら霊的な視野を持っていたとしても察知するのが困難になるのだ。

 そして人々の声の中から、僕らに必要になりそうなものをピックアップして、まとめ役の上位天使がそれを纏める。

 実際フェルン領では、この『聖なる声の網』を全域に敷設し終わっている。

 であれば、次に敷設するべき場所を考えれば、必然的にこの皇国の中心である皇都を考えるのは道理。

 だからこそ僕は皇都まで赴いたのだ。

 そしてこの時。ヒュペリオン陛下に詰問された時点で、皇都での『聖なる声の網』は終わっていなかった。

 市場で襲われて命を落としたり、ラスティリスに性別を変えられたり、フェルン候と面会したり、新たな滅びの獣とやり合う事になって、情報網敷設に専念できなかったのがその理由。

 一度フェルン候に付いて入り込んだ際に集中的に行った分、皇城の中の敷設が一番進んでいたほどだ。

 そこを指摘されたのだと思うけど、逆に疑問に思う。

 ほぼ気づけない聖なる幽霊を、どうやって見つけたのだろう?


「ああ、それは簡単だよ。似たような事を考えた例があるのさ」

「っ! もしかして……!」

「うん、私が取りまとめている異邦人隊にも、召喚術師系が居てね。皇国中央部は僕らが似たような事をしているんだよ。君がやっていることに気付けたのは、聖なる幽霊同士はお互いの事を認識できるからだね」


 答え合わせをしたは、皇王の侍従長、そして僕と同じ『プレイヤー』のカタギリさんだった。

 僕のやろうとしたことを既に行っていた彼らは、皇都内で聖なる幽霊をばらまく僕らを察知し、早々に監視をつけていたのだとか。

 皇国に歯向かうつもりなら、早急な排除もあり得たそうだけど、僕等の同盟は皇都で行ったことと言えば、商会に雇われたり、<貪欲>と争ったり。

 そこで、最終判断として、先に皇王に降っていたレディ・スナークを僕らと接触させて内情を確認させて、強大な力を持っているモノの皇国として排除するほどでもないと判断したらしい。

 となると次は・『異邦人部隊』への勧誘な訳だけど、それはそれとして僕が皇都や皇城でやってきたのはモンスターの無差別召喚だ、

 そこはまぁ咎められても仕方ないし、この後の工廠で譲歩をしないといけなくなりそうだった。


 だけど、その時だ。


「!!? 失礼、陛下。どうやら異常事態の様です」

「ン……? これは、留守を任せてる副メイド長からか?」

「へ? オタマさんから通信!?」


 極秘裏の謁見室、そこにいる『プレイヤー』全員に、急な通信が入ったのだ。

 カタギリさんは恐らく部下の『異邦人』から、ライリーさんは自信作のメイド人形から、アルベルトさんはフェルン領内で知り合った農林系称号持ちの、オタマさんという『プレイヤー』から、そして僕の元には、関屋さんから知らせが届いていた。

 その全てが、ただ一つの事実を示していたんだ。

 そう、マイフィールドの境界にあった『霧』の消失、そして。


『おう、夜光か!? 急ぎ頼みたいことが出来た。事が済んだら急ぎこっちに戻ってきてくれ! ウチの周辺がとんでもないことになってやがる! 何でウチの商店街の周辺にサボテンが生えた荒野が広がってやがるんだ!?」


 それらマイフィールドが、どこかの見知らぬ土地で実体化したのだと。


 これを受けて、僕らと皇王ヒュペリオンとの交渉は中断を余儀なくされた。

 何しろ、僕等の同盟は急ぎ各々のマイフィールドを確認しないといけなくなったし、皇王側も僕らを抑えられるはずの『プレイヤー』が軒並み自身の領域に退いた中で無理は出来ない。

 なら、折を見て交渉を再開する方向で、一旦中止となったのだった。

 そしてその後、恐るべき事実が判った。


「やっく~ん! わたしんちの周り湖なの~! 素敵よね~」

「俺んところは初めに言ったとおり、周囲がサボテンくらいしか生えてない荒野だぜ。たまにタンブルウィードが転がりもしやがって……昔の西部劇かよ」

「俺んところはマイルームだけど、何かでっかいマンションの部屋にされてるらしいんだ! ヴァレアスが言うには、すごく高い塔なんじゃないかって」

「オレッちのラボは、何か大草原のど真ん中にあるっぽいんだが……どうせなら山地で発掘させてくれよ。鉱物アイテム不足が深刻なんだよ」


 それぞれの領域は、『外』において『門』の距離が近い者ばかりであった。

 しかし、境界が消え去った今、それぞれの領域が位置している場所、そこが判明したのだ。



 僕は、七対の神魔が揃った会議室で、もう一度窓の外の北西の方角を見る。

 水平線の向こうの遥か彼方を。

 その方向にあるのは、巨大な陸地。


「新大陸、かぁ……」


 そう、まだ未探索の場所は多いけれど、大陸と言っていいとおもう。

 皇国が存在する大陸を欧州とするならば、海を渡った西、北米に該当する位置に広がった、広大な大地。

 この世界にやって来た『プレイヤー』、その全てのマイフィールド、マイルームがその地で実体化していたんだ。

 そして僕のマイフィールドたるアクバーラ島、そこはその新大陸の南東、北米に対してキューバなどの島々が浮かぶ海域に位置していた。

 奇しくも、北米大陸再発見の舞台となった島々の位置。


 霧が晴れたタイミングで、東からの船がやってくると言う奇妙な合致に、僕は奇妙な胸騒ぎを覚えるのだった。

書籍1巻の入荷情報があちこちから聞こえて、緊張する日々です。

手に取っていただけるか、何というか不安になりますね……。

不安を振り払えるように更新を続けていきます。

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