合格通知
『始めっ!』
フランス魔法アカデミー146期生第4次選抜試験が始まった。
第4次試験というのは、1次2次と通過してきたわけではなく、今までの1次2次を通過してきた人が定員より少なかったため行われる補欠試験なのである。この試験の倍率は15倍、ちなみに今回が時間的に最終選抜になるのでこの中の15人に14人は浪人ということになる…。
エドワードはフランス・パリに住む中等魔術師である。中等魔術師とは中等義務魔法アカデミーの卒業資格を持つ魔術師のことを表す。中等魔術師は全体の魔術師の約半分を占めている。他の魔術師の資格としては高等魔術師、WM、BM(ブラックマジシャン、別名バットマジシャン)などがある。WMとはBMなどの悪の魔術師などをこの世から追放するためにある組織である。この組織は政府公認であるが、BMなどは一定の場合をのぞきみとめられていない。唯一BMが認められるのは、国民バッジにBMであることをあらわしてよいということである。国民バッジとは国民一人一人が全員胸に付けなければならない政府の称号である。称号は一人1つの永久版であるため、成人になるともぅ取り外すことができない。ただBMは良心を取り戻したと政府から認められた場合のみ一般の称号と取り替えることができる。
「はぁ……。また落ちたかな。今度こそおばさんに怒られるよ……。」
その時エドは部屋から隣の家を見てまた大きなため息をついた。
「あいつは何をしても特別な存在だから……」
隣に住んでいるアイツとはオーウェンというエドと幼馴染の少女であった。オーウェンは勉強しても魔術訓練をしてもサッカーをしたって雲の上の存在であった。オーウェンは25年ぶりに高等魔術アカデミーに一発で合格を決めており、近所でも有名人であった。そのような何をやっても完璧な彼女と同い年のエドはご近所さんからも比較されることが多く、正直イライラしていた。そのようなことが積み重なりおばさんとは一回目の合格通知が届いてから一言も話していない。
~一か月前~
「オーウェンは一回でしっかり合格したのにねぇ……」
とおばさんに言われたことに対して
「なんだよ。アイツはただのがり勉ちゃんで怪物じゃないか。みてみろよ。アイツいつまでたっても右目に眼帯しているぜ。女のくせに将来海賊にでもなるんじゃねぇ……」
そこでエドの口が止まった。
おばさんにぶたれたからであった。
「頑張っているオーウェンちゃんを侮辱するようなこと言ってはいけません。それに海賊だなんて…あなただって左目に眼帯…」
おばさんはそこで口を閉じキッチンへと走って行った…。
~現在~
エドは黙って2階へと上がった。試験の結果が発表されているはずだった。今年の受験から取り入れた全自動採点装置のおかげで試験結果は試験当日にとどくことになっているのだ。友人のジョージ達と打ち上げに行っていたため今は夜中の2時だった。エドがパソコンに手を伸ばす手が震えていた。今回受かっていなければ来年まで待たなくてはならない、1次2次3次試験の時とは違う緊張感がエドを襲う。
結果は簡単だった
“合格です”
と書いてあっただけだった。
エドはすぐにおばさんとオーウェンに知らせたくてたまらなくなった。しかし今おばさんは寝ているため知らせることができない。
エドはカーテンを開けた。
「よかった…」
オーウェンの部屋の明かりは点いていた。
エドはクローゼットから箒を取り出し窓から飛んだ。
「フゥ…」
夜中のホーキングは最高だった。たったの10メートルくらいであったが…。エドが窓をノックしようとした瞬間に向こうから窓があいた。
「何?」
まるであんたが来るなんて珍しいじゃないみたいな言い草だった。半年前までは二人の家の間でこうして話をしたいたのに…。
「いゃ…俺受かったぜ。4次試験!」
「あ…そぅ…」
会話はこれで終わった。
オーウェンが窓を閉めたと同時に2色の入り混じった流星が2つの家を横切った。