イチャイチャの時間制限
「え〜と、今日はわたしの服選びを手伝ってくれて、その代わりとして飯は龍真が選ぶって事ね」
「まあお前の可愛い服たくさん見れるってなら、俺はいくらでもついて行くぜイェー」
「喜んでくれてるか最後に怪しくさせないで?」
俺の名前は龍真。さっきから話してるのは、俺の彼女の颯葉。まあそんなとこ。今日はデートである。
そんな事で、女性服専門店に来ている。それだからか、非常に可愛い服ばかりだ。
そして俺は今、ある服をじっと見つめている。どういう感情なのか、俺も分からない。俺はこれに対してどう思っているのだろうか。
「なんだこれは⁉︎ そう、正直普通に売ってるなんて思わなかった、メイド服である」
「何してるの?」
「菴墓腐縺雁燕縺後%縺薙↓竅会ク?」
「うっわ、すっごい声‼︎」
「この発言には驚くべき意味があるが、この時間では言い切れない」
「突然のフェルマーやめて?」
ド派手な夢はあるか? 多分ない。
それはそれとして、これだけ可愛い服があるとどれが似合うとか以上に金が足りるか心配になる。今回は颯葉が自分で払うって言ってたけど、なんか無理そう。
「こっちはチャイナ服……未だにチャイナ服ってなんやねんくらいに思ってるチャイナ服か」
何故俺は、ここまでチャイナ服に対する当たりがとても強いのだろうか。これが分からない。
さてと、今日はどんだけ持つか。
「服はなぁ、正直色々とあるらしいけど前まで興味なかったからよく知らないんだよなぁ」
最近は颯葉に着せたい服を考える為に色々と調べてみてるが、まるで結婚式のご祝儀事情のよう。
「それで、今日はどんな服を試着してほしい?」
「ん……くぅ……この服とあとそっちの服、あとこのドレスは奢るよ」
「ドレス? なんで?」
「それは後のまつ……お楽しみ」
試着室に入ってからの時間は少し退屈だったが、颯葉の可愛い服が見れるから苦ではなかった。むしろ楽しく感じるくらいだった。
「え〜と、不思議の国のアリスみたいな感じコ〜デ〜?」
「そこで疑問形なんかい……めちゃくちゃ綺麗だし、とっても美しいよ。颯葉」
「よくそんな恥ずかしい事言えるね‼︎」
颯葉の服は、まるで『不思議の国のアリス』の世界から飛び出してきたかのような水色と白の服だった。
メルヘンチックでちょっとむず痒いけど、本当に颯葉はなんでも似合う。まあそれだから俺の寿命はいつも縮んでばっかりだけど。
「今度は〜ででん‼︎ 対女性経験に乏しい男兵装〜‼︎」
なんか、なんというか、こう、とんでもねぇ、とてつもねぇ、あ、ちょっと死ぬ……かも。
「龍真ぁぁぁぁ⁉︎ ちょっと刺激が強すぎた?」
「いや、違う。これはどっちかというと、可愛さの上限を遥かに超えてる。いつもの颯葉がレベル99だとすると、これはレベル150くらいの感覚だ……」
「……今日は二時間くらいだったね」
「まだマシな方だろ」
俺は可愛いものが好きだが、接種しすぎると後々ぶっ倒れてそこからしばらく一人じゃ立てなくなってしまう。
俺達はこれを、『イチャイチャの時間制限』と呼んでいる。
その日の夜。
ドレスに着替えた颯葉と、まあなんかいつもと比べたら相対的にまともな服を着た俺は、ショッピングモールから一駅ある距離の高級レストランに来ていた。
「どうして僕達は、こんなところまで来てしまったのだろうか。これが分からない」
「って、龍真が予約したんじゃん。というか、ドレスってこういう事だったんだ……って結局わたし、龍真になんかしてもらってばっかりじゃん‼︎」
「いや、お前はあるがままでいるだけで俺の救いだから」
今回は何も言われなかったから自分で言うが、よくまあここまで恥ずかしいはずのセリフを軽々と言えるな。
嬉しすぎて、まるで酔ってるかのようだな。
「高いね」
「ああ、めっちゃ高い」
正直、俺は高級食材の何処が美味しいのかとか聞かれても何も理解してないから答えられない。だからまあ、こういうのは雰囲気だ雰囲気。
ビルの三十五階から見下ろす街は、颯葉と一緒に見ているからか今まで見た夜景よりも綺麗に見えた。
「ありがとう龍真。わたし……今、とっても幸せなんだと思う。こんな大切にしたいと思える時間に、出会えた事ないから」
「こっちもだよ。颯葉がいるから俺の世界に明るい色がついてるんだし、颯葉がいるから俺はここで生き続けてる」
「……こっちもそれなりに重いよ?」
「それで結構。そういうもんさ」
「そういうもの?」
「そういうもの」
高級レストランで快適な時を過ごして、そこのビルの屋上庭園で夜景を見ていた。
「やっぱり綺麗だ」
「綺麗だよね。やっぱり、彼氏と見てるからかな?」
……あ、また浄化されかけた。
「ま、一番綺麗なのは綺麗なものを見つめている颯葉の笑顔なんだけどな。それだけは譲れん」
「あ、ずるい‼︎ 私だって一番は龍真の笑顔だもん‼︎」
駄々捏ねてるのも可愛い……あ、やべぇまた浄化されかけた。仕方ないだろ‼︎ こんな可愛いんだから‼︎
だけどまあなんか、雰囲気を含めてとってもいい感じ。
「キス……する?」
実はというと俺達は未だに手を繋ぐのが限度で、それ以上にまでは至ってない。というか、しようとしたらいつも俺の時間制限が来る。
だけど今日は、今の所は耐えれてる……いけるか?
顔と顔を近づけて、見つめ合う。やはり可愛い。そして美しい。髪が、瞳が、口が、小さな耳が、ありとあらゆる造形が、彼女を彼女とさせている。
ゆっくりと顔を近づけて、目標を見失わないようにしっかりと捉える。にしても本当可愛い顔してる……ああ、本当あまりにとお……ガハァ‼︎
「あ、で、ら、るらっ、すとらっさ‼︎」
倒れるのに彼女を巻き込まないようにしようとしたら、いつも以上にとんでもない倒れ方をしてしまった。痛い。
「ざっけんなや……良いとこやろが、俺の馬鹿……‼︎」
まだまだ先は長そうだ。
何が言いたかったのかというと、対極主義って凄いんだなって事です。




