表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/50

幕間-8 廉と虎雅の買い物③



どこか近くなった距離感。

きっとこれから、もっと分かり合える。

それこそ友人と呼べる程に。




──二人は、そう信じて疑わなかった。




*



「なあ、変じゃねぇか」



まず最初にその異変に気付いたのは虎雅だった。

廉は、虎雅が言っていることの意味が分からずに思わず首を傾げる。



「変?どういうことだ」

「いや、なんか。うまく言えねぇんだけど」



虎雅は片眉を下げながら、自身の頭を掻いた。

その態度を見て、廉の眉も先程より吊り上がる。



「意味が分からない」

「それは俺も」

「はあ?」



廉は虎雅の隣に進み出た。

そして彼が見つめる方向…つまり、路川街の中心街を眺める。

──そして息を飲み込んだ。



「変だ」

「だろ?」

「ああ。何故人が誰もいないんだ。あり得ない」



廉と虎雅は思わず顔を見合わせた。

意見は一致。

彼らは、何も考えずに墨や策のいる宿屋へと走り出す。



「な、なんだこれ!」

「分からない!でも、普通ではない何かが起きていることだけは確かだ!」

「普通でないことって何だよ!妖怪か!?」

「妖怪!?そんなわけ…!」



廉はそこまで言いかけて、突然口を噤んだ。

そしてその場でピタリと立ち止まる。



「…もしかして」

「んだよ、心当たりがあんのかよ!」

「…分からない、合っているかは。でも、それしか考えられない」



廉の美しい灰色の瞳がキラリと輝く。

そして虎雅の肩をガシッと掴んだ。



「いて!」

「虎雅!」

「な、何だよ」



突然の廉の勢いに、虎雅はたじろぐ。

しかし廉はそんな彼の反応など気にしない。否、気にしていられない。



「…恐らく、犯人の狙いの一つは君だ。君の命だ」

「…は?」

「痺れを切らし、路川街ごと消してしまおうと思ったんではないだろうか」

「街ごと消す!?戦ってことか!?」

「違う!恐らく、皇帝関連だ!」

「な、何だと!?」



今度は虎雅が目を見開く番だった。

しかしそれと同時に思い出す。

白史家から盗んだ、手紙の内容を。



「ま、まさか。神サマ関連の…!」

「ああ。だとしたら、この状況を作っているのは、呪具の付喪神だ。

あくまで推測にしか過ぎないが…」



廉の手にはさらに力が籠る。

彼はさらに続けた。



「きっと呪具の付喪神は、自らが歩いた場所に何らかの術をかけたんだろう。

…見つかったら危険だ。虎雅、逃げるんだ」

「お、おい」

「何だ」

「お、お前は?」

「二人で逃げたら、二人とも行方不明になって、墨や黒史様に心配を掛けてしまうだろう。それに僕は路川街の警護官だ」



廉は、虎雅だけが逃げることを、さも当たり前かのように言ってのけた。

虎雅は口をぱくぱくさせるが、うまい返しが思い付かない。



「…に、逃げるったってどこへ」

「師匠がいる」

「は」

「裏京里…まあ、今は違う名前らしいが、そこに楓葉師匠がいる」

「……!」



廉は虎雅の反応を見て、にやりと笑った。

楓葉は虎雅にとって、数少ない信頼できる大人だ。

彼の気持ちが揺らぐことは分かっていた。



「君が死んだら、呪具の付喪神や皇帝たちの思い通りだ。本当に黄史家が滅んでしまうのだから」

「……」

「だから逃げろ。大丈夫、こっちには黒史様も墨もいるから」



…廉は、二人が無事かは分からないが、という言葉は敢えて飲み込んだ。

その意図が虎雅に伝わったかは分からない。

しかし虎雅は大きく頷いた。



「…分かった」

「本当か」

「ああ。裏京里?に行ってみるわ」

「そうか。ならこれを」

「これは」

「裏京里への地図だ。この度、師匠が里帰りされる際に渡されたんだ。何かあった時のために、と。今がその時だろう?」



虎雅は、廉から渡された小さな紙を胸元へと仕舞った。

そしてその顔に笑顔を浮かべる。



「分かった。行くわ、俺」

「ああ。頼んだぞ」



廉と虎雅は頷き合い、お互いに別々の方向へと走り出した。

また再会できることを、心の奥底で願い合いながら。












評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ