23.黄史家
【黄史家滅亡。
その次男、黄史虎雅逃亡。
ただし、まだ5歳の子ども。
身内無し、親なし、生き残ることは困難。
脅威ではない。
仮に見つけたら、すぐに殺すこと。
これにて二つ目の貴族、滅亡。
これも貴公と朱史家の協力あってのこと。
あなたたちには感謝してもしきれません。
私の代で裏京里という神里一つと、黄史家という貴族を滅ぼせたこと、非常に誇りに思います。
露華暦550年 陽月3日 旺雪】
比較的新しい紙。
それに並べられた細く形の整った美しい文字。
しかし書かれている内容は、あまりにも残酷だった。
「アイツ…黄史家出身だったのか…」
廉の震える唇が、そっと言葉を紡ぐ。
しかし、彼がそのような反応を示すのも無理はない。
──黄史家。
それは白史家と敵対する貴族家である。
露華国には、三大貴族の下に100以上もの貴族が存在する。
しかしそれらは「形」だけの下級貴族。
政治や軍事などには関わらせて貰えない。
黄史家も、そのうちの一つであった。
ほぼ全ての下級貴族たちは、庶民と変わらない生活を送っていた。
高い年貢を納め、そして日々労働。
名ばかりの貴族は、庶民の下で働くこともあった。
下手をしたら、庶民と同様に行き倒れてしまうことも。
事実、ここ最近の国内での死亡理由は、ほとんどが飢餓と流行病なのだ。
こうした荒れ果てた国の中で異議を唱えたのが、虎雅の父親だった。
彼は貧しい生活の中でも、決して子どもたちにそれを悟らせなかった。
黄史氏の口癖は「幸せは身内から」だったと、廉は何かの文献で読んだことがある。
「黄史家。それは、白史家が唯一、宰相の地位を取られた相手。
黒史家当主、黒史策によって」
廉はふらふらと立ち上がり、父の部屋をさらに物色する。
「…僕の記憶が正しければ、ここに黒史家との通信記録が…あ、あった」
廉の手は、一冊の分厚い書物を探り当てた。




