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宿下墨写録 ─墨と全知の巻物と路川街─  作者: ずー
二章:路川街警護官編
23/50

22.時を超えて



──巻物の力を使えば、すぐに欲しい情報を得られるのだろう。


しかし楓葉は、今回それをしなかった。

それはなぜなのか。


廉は手にした黒い箱を眺めながら、ふとそう思った。







「…たぶん、おそらくこれ」




白史家当主の部屋。

つまり父の部屋を漁っていた廉は、棚の奥から、いかにも高級そうな箱を見つけた。

黒光りするそれは、まるで廉に手招きをするように彼の視線を独り占めする。



廉は震える手で、箱の蓋をカタリと開けた。

中には、彼の予想通り数通の手紙が。

彼はその中の一通を手に取り、そして広げる。



「…墨で書かれている」



廉が手紙を広げたときの第一印象はそれだった。

古びたその紙は、一歩間違えれば破けてしまいそうだ。



「…えと」



廉の瞳は、一行ずつ文字を追う。





【親愛なる白史家当主殿。

この400年間、我が露華家は繁栄に繁栄を重ねてきた。

しかしながら、我が国は他国からの侵略と内部紛争の危機に晒されている。

我はとある神に尋ねた。

どうすればこの国を護ることができるのかと。

彼は答えた。

我の力を使え、と。

この国から、三つの貴族と四つの神里を滅ぼせば、この国はさらなる護りを得られると。

代償はそれらの命。


なあ白史家当主殿よ。

我は、その程度の命と引き換えに国が守れるのならば安いものだと思っている。


我の選択は間違っていないだろう?】





「なっ、なんだこれ…!」




廉はあまりの衝撃から、その手紙を箱ごと投げ捨てた。

彼の手には冷や汗がびっしりと光る。




「ろ、露華家…つ、つまり露華国皇帝から、な、なんで。か、かなり昔のものだけど…」




廉の唇も、そして手も足もカタカタと震える。

そして尻もちをついて、静かに後ずさった。



「…し、師匠の故郷を滅ぼしたのは現皇帝だって、し、知ってた。

で、でも!この感じだと、ここ160年以上の長い期間でお、同じようなことが行われていたということじゃないか…」



楓葉が巻物を使って見たのは、「露華暦550年 寒月10日」…今からおよそ10年前の皇帝の密書。

つまり露華暦400年とは、約160年前に当たるのだ。


廉がふと自分の腕を見てみると、そこには気持ち悪い程の鳥肌が立っていた。


彼は膝立ちで前に進む。

そして投げ捨てた手紙を再び拾い上げた。



「つ、次はこれ」



彼は床に舞い落ちた、2通目の手紙を開く。

始めは季節の挨拶。

何気ない内容。

しかし三行目の内容から、廉はその目を疑う。



「…な、なんだこれ」



彼はしばらく呆然とすることしかできなかった。




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