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宿下墨写録 ─墨と全知の巻物と路川街─  作者: ずー
二章:路川街警護官編
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20.楓葉からの依頼




「それでお話とは?」



昼食後、紙で口を拭きながら廉はそう尋ねた。

本日のメニューは、焼いた豚肉と野菜の炒め物。そして、とろりとした餡掛けが特徴的な焼き飯。

その2つは、廉の口周りを光らせるのに十分であった。



「ああ、うん。実は虎雅くんのことなんだけど」

「なんですって?」



楓葉の口から虎雅の名前が出た途端、廉の眉間に深いシワが寄った。

楓葉はそれを見て、思わず苦笑を漏らす。



「おいおい、やけにあからさまではないか」

「だっ、だって…!」

「だって、なんだい?」

「…い、いえ。何でもありません」



廉は楓葉の表情を見て、その後の言葉を紡ぐのを止めた。

楓葉の口元には笑みが浮かんでいるものの、その目はまるで笑っていなかったからだ。


廉は楓葉の笑顔にも弱いが、この真顔に近い笑顔にはもっと弱い。

廉はごほん、と咳払いをし楓葉を見つめた。



「師匠。場合によっては、僕はいくら師匠のお話だとしても最後まで聞けないかもしれません」

「おや、それは困る。私には、君の力がどうしても必要なのだから」

「僕の力?」



廉の耳がピクリと動く。

手応えを感じた楓葉は、そのまま言葉を続けた。



「大きな声では言えないのだが…。最近、貴族宅で盗難事件が相次いでいるんだ」

「…は?」

「その反応は、君も知らないようだね。…そして、その犯人は恐らく虎雅くんなんだ。

これは師匠…墨の巻物が写し出した、紛れも無い事実。だから間違いは無いと思う」

「な、あのバカ。な、何を」

「ふふっ、やっぱり心配かい?」



楓葉は机の上で手を組み、その上に顎を乗せた。

余裕たっぷりの彼の表情。

楓葉のペースに乗せられた、と気付いた廉は深く溜息をつく。



「…で?師匠は僕に何をおっしゃりたいのでしょうか」

「おやおや、やけにツンケンしているじゃないか。

…まあいい。僕から君に言いたいことはただ一つ。

君の実家から、ここ十年、十五年程度の皇帝との手紙を取ってきて欲しい」

「えっ、はっ」



突然の楓葉の発言に、廉は目を丸くした。

それと同時に彼の身体はガタガタと震え始める。

冷や汗が、たらりと廉の頬を伝った。



「…ぼ、僕はあの家ではいないも同然の存在なんですよ。そんな僕が、そんな大切なものの在り処を知るはずが…」

「だが、君は白史家の次男だ」

「で、ですが…」



廉は瞳を伏せた。

そして震える声で、言葉を紡ぐ。



「し、師匠は僕に死ねと言っているのですか?」

「まさか。廉にならできる。そう信じているんだよ」



彼らの他に、食堂には誰もいない。

ただどこか冷たい風だけが、廉の背筋をふいに撫でた。





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