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2.食事は大事

月明かりは、随分と遠くへ行ってしまった気がする。

空が薄っすらと白み始めた頃。


墨と虎雅は未だ狭い部屋で向かい合っていた。



「なるほど。つまり君は自分の実家を滅ぼした相手に復讐するために僕の巻物が欲しいと」



どこか眠たそうな様子の墨。

欠伸で潤んだ目を、服の袖で力強く擦っている。


虎雅は変わらず胡座のまま、深く頷いた。

彼は拳に力を込めると、無数の傷が付いている床板をバンッと力強く殴り付けた。

じわりとした痛みが、虎雅の拳を包み込む。



「俺はガキの頃に家族を失ってから、裏社会に身を置いて、どんな汚いこともやりながら生きてきた!

貴族出身の、何も自分でできねぇクソガキがだ!


それもこれも、家族を殺したヤツをぶっ殺すため!

そのためには、てめぇの持つ巻物が必要なんだよ!


それには、この世界のどんなことも書いてあんだろ!?


そうだろ!?

このインチキ占い師野郎!」



虎雅は激しく叫んだ。

まるで部屋全体が揺れるのではと思う程の大声である。


墨はわざとらしく両耳を手で覆うと、くすりと笑った。

そして彼は虎雅に笑顔を向ける。



「…ちょーっと間違ってるよ、君の認識。あと僕はインチキ占い師じゃない。もく、だ。覚えておくれよ」



虎雅は意図しない墨の発言に目を丸くした。

墨は彼の反応を見て、満足そうに笑う。



「はははっ。君は本当に素直な子なんだねぇ。

まあ今は真夜中だ。

…明日、とある人物を紹介するよ。彼から話を聞いてみてから、自分の進退を決めるといい」

「はっ、ど、どういう…!」

「てことでもう限界。おやすみ〜」



墨は虎雅の反論に耳を貸さず、そのまま布団に入った。


すぐに聞こえてくる墨の寝息。

虎雅は思わず呆気に取られてしまう。



「…な、なんだコイツ」



彼はしばらく、墨の寝息を聞いていることしかできなかった。





*




「おはよーって、おはよー!」




数時間後。

虎雅は、自身に纏わりつく重い空気と、やたらと賑やかな墨の声で目を覚ました。



「…ちっ」



いつの間にか眠ってしまっていた彼は、思わず自分自身に苛立ちを見せる。

ふと彼が墨の方に視線を移すと、そこには朝食をとる墨の姿があった。


焼き魚と、穀物を炊いた白い飯。

そして路川街名産の黄色の果実。

しばらく食事という食事をとっていない虎雅の腹は、情けなく音を立てる。



「あら、お腹すいてんの?一緒に食べるかい?」

「ふざけんな!」

「怒るなって。我慢は禁物だよ。

ここの女将さんは太っ腹なんだ。

なんたって、ツケで1ヶ月も泊まらせてくれるんだよ!」



墨の瞳がキラリと輝いた。

虎雅はそれを見て、顔を引き攣らせる。



「い、1ヶ月…」

「なんだい、悪かったね。貧乏で」

「そんなに不思議な巻物を持っているくせに」

「それとこれとは別だ。どうやら僕はインチキ占い師だと思われているようだからね、世間一般には」



墨は魚を頬張りながら、虎雅を睨み付けた。

バリバリと骨が砕ける音がする。

虎雅は唾をゴクンと飲み込んだ。



「ったく、面倒くさい子どもだね。大丈夫、そろそろ持ってきてくれると思うよ」

「はっ!?」

「君が朝食を拒否するなんて想定済み。駄目だよ、子どもはちゃんと食べなきゃね」



墨はそう言って、片目を閉じて見せた。


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