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悪役令嬢ですが、断罪される前に寝落ちしました

作者: 月白ふゆ
掲載日:2026/02/04

※本作は

『悪役令嬢と呼ばれた私も、断罪された宰相も、何もしていない』

を、全力で崩したコメディ短編です。


重いテーマ?

国家崩壊?

制度と空気の恐怖?


全部あります。

ただし、悪役令嬢は寝ます。

宰相は胃薬を飲みます。


深く考えず、

「断罪って雑だなあ」と笑ってもらえたら勝ちです。


本編を読んだ方は答え合わせに、

未読の方は勢いで、

どうぞお気軽に。

その日、王城の大広間はざわついていた。

理由は簡単で、断罪の日だったからだ。


私は玉座の前に立たされていた。

公爵令嬢、王太子の婚約者、そして――悪役令嬢、らしい。


「これより、悪役令嬢アリシア・フォン・なんとかを断罪する!」


王太子が叫ぶ。

叫ぶ必要はないと思う。距離、近い。


私は欠伸を噛み殺した。昨夜、なぜか猫と遊んでしまって寝不足だったのだ。断罪って、もっと短く終わらないだろうか。


「お前は聖女を虐げ!」 「王太子殿下を惑わし!」 「民の心を踏みにじった!」


踏みにじってない。

そもそも民とそんなに話したことがない。


「なにか弁明はあるか!」


あるにはある。

が、その前にまぶたが重い。


(……あとでいいか)


私はそのまま、立ったまま、寝た。


「おい! 寝るな!」 「断罪中だぞ!」 「起きろ悪役令嬢!」


起きない。

なぜなら眠いからだ。


ざわざわする大広間。

貴族が困惑し、騎士がざわつき、聖女が「えっ……?」と小さく声を漏らす。


「こ、これは新しい挑発か!」 「さすが悪役令嬢……!」


違う。普通に寝ているだけだ。


王太子が顔を真っ赤にして叫ぶ。


「よし! ならば断罪はこのまま進める! えーと……宰相!」


呼ばれた宰相は一歩前に出た。三十代、胃が弱そうな顔をしている。


「……はい」


「この悪役令嬢について、何か言うことは!」


宰相は一瞬、寝ている私を見た。

そして、少し考えた後、正直に言った。


「……特にありません」


「は?」


「記録上、彼女は何もしていません。強いて言えば、昼寝が多いくらいで」


「昼寝は罪だろう!」


「それは国法にはありません」


宰相は淡々としている。

胃薬の匂いがした。


「くっ……ならば! この宰相も同罪だ! 悪役令嬢を庇った!」


「えっ」


宰相の人生が一瞬で転んだ。


「宰相を罷免! 爵位剥奪! 国外追放!」


「えっ」


二回目。


その時、私は目を覚ました。


「……あれ? もう終わりました?」


「終わっていない!」 「今まさにだ!」


私は状況を把握した。

どうやら私は寝ている間に、宰相ごと追放されることになったらしい。


「まあ、いいか」


よくないが、まあいい。


───


数日後。

私と元宰相は馬車に揺られていた。


「すみません……」


宰相が小さく言う。


「私がもう少し上手く立ち回れていれば……」


「大丈夫ですよ」


私は干し肉を齧りながら答える。


「私、あの国、あんまり好きじゃなかったので」


「……そうですか」


「朝早いし、夜遅いし、謎のパーティ多いし」


宰相は何も言えなかった。


隣国に着くと、宰相はなぜか即就職した。

帳簿を見せたら、周囲がひれ伏したらしい。


「数字が……美しい……」 「神か……?」


私は市場でパンを売ることにした。

理由は簡単で、焼きたてが食べられるからだ。


───


五年後。


私は二児の母になっていた。

なぜそうなったかは、あまり覚えていない。たぶん流れ。


宰相――元宰相は、相変わらず帳簿を見ている。


「この国、最近すごく豊かですね」


私が言うと、彼は頷いた。


「制度を整えただけです」


「へえ」


子どもが走り回り、パンの匂いがして、昼寝には最高の環境だった。


そこへ、旧王国の噂が届く。


「断罪しすぎて人がいなくなったらしい」 「次は誰を断罪するかで揉めてるとか」


私はパンを齧りながら言った。


「断罪、便利ですもんね」


「便利すぎると、国が壊れます」


宰相が真面目に言う。


「まあ」


私は欠伸をした。


「寝てる間に壊れる国なら、起きてても無理ですよ」


宰相は一瞬黙り、そして苦笑した。


「……確かに」


私は子どもと一緒にごろりと横になる。


悪役令嬢だった気もするし、違った気もする。

でも今はただ、眠い。


「お昼寝します?」


「……私も」


二人で並んで寝転んだ。


断罪?

王国崩壊?


それより大事なことがある。



今は、昼寝の時間だ。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


本作は

『悪役令嬢と呼ばれた私も、断罪された宰相も、何もしていない』

を、深く考えずに崩したコメディ版です。


本編では「空気で国が壊れる怖さ」を真面目に描きましたが、

こちらでは「そもそも断罪って雑じゃない?」という方向に全振りしました。

寝ている間に追放されるし、胃薬を飲んでいる間に人生が転ぶし、

でも案外それで何とかなってしまう、という話です。


重たい断罪も、国家崩壊も、

見方を変えると「真面目にやりすぎた結果の事故」だったりします。

なので今回は、あえて真面目にふざけました。


本編を読んだ方には、

「同じ骨組みでも、こんなに軽くなるのか」と笑ってもらえたら嬉しいですし、

こちらが先だった方は、

「なんか裏に重そうな話があるな?」と思っていただけたら成功です。


断罪より大事なものは、たぶん昼寝です。

それでは、また別の世界線で。

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― 新着の感想 ―
爆笑しました。 > 「これより、悪役令嬢アリシア・フォン・なんとかを断罪する!」 「なんとか」が家名なのかもしれませんが、ここだけひらがなとなっているので 「王太子が自分の婚約者の実家の公爵家の名前…
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