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第5話 舞踏会 

夜の舞踏会は、煌びやかな燭台とシャンデリアに照らされ、華やかな衣装が舞う、大広間で行われていた。


私は一歩離れた場所から、会場を見回し、あのオリバーの姿を探す。


近衛隊の制服に身を包み、髪を後ろに流した別人の姿。


どうやったらあの温もりのある穏やかな顔が、舞台に出てくる騎士みたいな顔になるのだろう?








オリバーは冷静に、華麗にステップを踏む。


彼の国は武の国。その動きは舞踊ではなく体術に近い。


旋回、跳躍。相手との絶妙なタイミングでの接触。


踊りの難易度は高く、周囲は驚嘆していた。




私は胸の奥がざわつくのを感じる。


あの人は――私のオリバーなのに…無言の嫉妬が私の胸を締め付ける。





オリバーは微笑む。


優雅で、誰にでも礼を欠かさず。


しかしそれが私の心を深く揺さぶる。




「…ずるい」


小さく呟き、目を逸らす。


(私のオリバーなのにっ)




知らず握りしめた爪の痛みにハッとして手を開く。


姫の手が、オリバーの胸板に触れた。


オリバーの手がその腕を掴んで引き寄せ抱きしめた。


そこでこの舞は終わり。


愛する女に愛を乞い、手に入れる男の舞だそうだ。


万雷の拍手を受けてオリバーと姫は武国の礼をして来賓席へ戻っていく。


私は耐えきれずバルコニーに逃げた。


(あんなに体捌きが出来るなんて知らない!


彼が素晴らしい人なのは私は最初から知っているのに!


彼が愛を乞うのは私なのに!)


頭の中がぐちゃぐちゃだ。


「…気分でも悪いのか?」 


「っ!」


聞き間違える筈の無い声、だけど知らない人の様な気配がする声色。


振り向いた先には近衛の服を纏う男。


知っているのに、知らない姿に胸が苦しくなる。


硬質な足音が近づいてくる。


いつもより高い視線の位置に仕込み靴だ、とまとまらない思考で考える。


いつもの優しい眼差しは、涼やか、いや、冷淡な眼差しに変わっていて知らず息を詰めていた。


「顔色がよろしくない。少し休まれた方が良いのではないか?」


そう言って背中に触れる手は優しい。


頭が、いや、心が混乱してなんの反応も出来ない。


目の前の彼は少し俯き周囲を伺うように視線を巡らす。


「…オーグ?早く休んでください。貴方が気になりすぎて、仕事になりません…」


囁かれたのはいつものオーグの声色。


それだけでホッとして肩の力が抜けた。


「オ…んっ」


名を呼ぼうとしたら唇を指先で押さえられた。


「ダメ、です。【私】は【僕】じゃない。」


「…ん。」


「…ハア、不毛な事はしたくないですけど…」


「?」


「貴方が僕だと認識して可愛い反応してくれてるのは分かるんです。それでも、違う奴に見せている気がして嫉妬してるんですよ。」


「んん?」


「貴方の瞳に映る自分の姿が他人なモノで。」


「ッ!」


「ああ、もう!この任務が終わったらすぐに愛でに行きますから!覚悟しといてください!」


そう言い残して踵を返して広間に戻る背を見送り、頭を抱えてしゃがみ込んだ。








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