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第10話  ⭐︎夜

*オーグ視点



夜は、静かに訪れた。


屋敷の灯りが一つ、また一つと落ちていく中、私たちは並んで部屋にいた。

窓の外では、虫の声がかすかに響く。昼の庭で溢れた感情が、まだ胸の奥で燻っていた。


オリバーは椅子に腰掛けたまま、珍しく黙っている。

沈黙が長くなる前に、彼が口を開いた。


「…今日は」

視線を落としたまま、指先を組む。

「…すみませんでした」

「何がだ」

「庭で…抑えきれなかったことです」


自嘲気味な笑み。

私は首を振る。


「私は、嫌じゃなかった」


その言葉に、オリバーの肩がわずかに震えた。

「…それが、いちばん困るんですよ」

小さく息を吐く。


「貴方がそう言うから、僕は…」

言葉を切り、私を見る。

昼とは違う、静かな夜の目。


「…もっと欲しくなる」


その正直さに、胸が熱くなる。


「今日は…一緒にいる約束だろう」


私はそっと彼の手を取った。

オリバーは少しだけ目を見開き、それからゆっくり頷いた。


「…ええ」


指先が触れ合うだけなのに、それだけで心臓がうるさい。

灯りを落とし、並んで寝台に腰掛ける。

触れ合う肩の温もりが、現実だと教えてくれる。


「…オーグ」

その声は、もう揺れていなかった。

「愛してます」


オリバーの指先が頬から顎へと流れ、止まる。

初めての口付け。

軽く重ねるだけのそれに、喜びしかなかった。


額をくっつけたまま目が合う。

「…大丈夫ですか?」

一々確認してくれるのが嬉しいけれど、少し恥ずかしい。


「分からん。…もう一度してくれ」


目を逸らして呟けば、息を飲む音がした。


「…もう、本当に、止まりませんよ?」


覗き込まれる視線が熱く、強い。

頬が熱を持つ。きっと耳まで真っ赤だ。

目を閉じて頷きで返すと、唇を重ねられる。

何度も角度を変えて…。


気づけば寝台に押し倒されていた。

瞼を開けば、潤んだ視界の中に、余裕のない顔で息を荒げるオリバーがいる。


(私は、彼にこんな顔を、させられるのか…)

それが酷く甘く心を酔わせた。


そっと彼の首に腕を回すと、少し驚いた目が見つめてくる。

私は笑いながら囁く。


「私だって…君を愛してる…」


オリバーの瞳が甘く溶けて、幸せなのに泣きそうな不思議な笑みになった。


「あぁ、もう。オーグには、敵いな…」

困ったような声色なのに顔は嬉しそうな笑み。


そこにいるのは、事務官でも近衛兵でもなんでもない、仮面を外した、ただの男。

「愛してます。僕の可愛い、僕だけのオーグ…」

甘くて熱くて少しだけ昏い瞳に、ゾクリと甘く痺れた。





夜は、まだ長い。


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