1話 オリバー視点 「夜が好き」
夜は良い。
闇は見たくない物を覆い隠し、大事なものだけ見ていられる。
月明かりに照らされる庭をオーグと並んで歩く。
彼の手を握る。
遠征中、何度も星を見上げながら、オーグのことを思っていた。
今この瞬間、隣に彼がいる――それだけで、胸がじんわり熱くなる。
「星が、よく見えるな」
「ええ。雲もありませんし」
彼の声を聞きながら、私は心の中で小さく笑った。
歩幅を合わせてくれている、何気ない仕草も愛おしい。
――こんな時間を、どれだけ待っていたことか。
「遠征の間、空を見るたびに思っていました」
「?」
「今頃、同じ星を見ているだろうか、と」
「…私は、あまり見てなかった」
オーグのあまりにも胸を締め付けるような声に、そんな深刻な話じゃないと軽い返事を返せば。
「帰ってきて、こうして一緒に見られているなら、それでいい」
オーグの顔を見上げれば、その瞳はどこか安心したように潤んでいる。
ああ、私のそばにいるだけで、彼はこんなにも柔らかい表情になるのか。
心の奥まで満たされる温かさ。
この瞬間を、ずっと忘れたくない。
風に髪が乱されて押さえていると名を呼ばれて顔を上げる。
「また、帰ってくる」
それだけで、すべてが伝わる。
静かな夜、星を見上げる二人。
離れていた時間も、寂しさも、今はまるで遠い夢のようだ。




