VSトスさん
「オラァ!」
戦いが開始するや否やトスさんは思い切り地を蹴り接近してきた。
「ふん!」
トスさんは剣を右から左にかけて切り上げてきた。
「ほっ!」
これはトスさんの得意な高速切り上げ!その攻撃を俺は刀で受ける、しかし。
「クソ!」
(この人、、やっぱり力強ぇぇ)
俺の方が振り下ろしてるから力を掛けやすい筈なのに何で競り負けんだよ!
「うおらぁ!」
刀は剣の勢いに負け弾かれてしまった。そして、無防備になった俺の腹部にはすぐさまトスさんの重い前蹴りがおもっきりかまされた。
「ごはぁ!」
蹴られた勢いにより俺は吹っ飛ばされ二メートルほど転げてしまう。
(人の蹴りの威力じゃねぇよ!)
分かってはいたがこの人に敵うビジョンがほぼ浮かばない。
「おいおいそんなもんか!お前の一年は!」
トスさんはゆっくりと俺に近づきながらそう問う。
(俺の一年……俺は……)
インキャな自分が最強を目指すなんて夢どころか元は戯言に等しかった。
(だけど……)
俺はこの一年死ぬ気で頑張った日々を思い出す。トスさんに急に筋トレ100セットを言い渡された事、森に刀一つだけ持たされて一日中アンデットを狩らされた事。
(うん、文字通り死にかけた事ばっかだな)
それをそんなもん?
「舐めんなよ!」
そう言いながら刀を地面に突き刺し立ち上がる。
「なら…もう一発行くぞ!」
そう言いながら、また地面を蹴り接近してくる。
「クソ!」
さっきよりも速くなってやがる!俺は刀を構えて応戦する。
「受けてみろ!」
(さっきと同じ右からの切り上げ!)
見えるのに、体が反応できない!
「うぉぉぉ!」
(このままだと、死ぬ!)
俺は気合いで剣を刀で受け止める事に成功する!!だけど。
「さっきよりも軽いぞ!」
今度は蹴る事すらなく吹き飛ばされてしまった。
「どうしろってんだよ!」
蹴られなかった事により今度は地面を少し削りながら着地することに成功した。
そこから間髪いれずにトスさんは乱撃を繰り出す俺もそれに対抗し乱擊を繰り出す。
(考えろ、、俺が剣を受けるとあの圧倒的力で弾かれるか蹴られる。だからといって避けようにもあの切り上げの速度より速く動くのは今の俺には不可能だ。できて剣の軌道が見えるくらい。)
俺は脳をフル回転させる。
(どうする?どうする?どうする?今の俺がトスさんが繰り出す最速の切り上げに勝つ方法)
その時だった。
「戦闘中に!」
トスさんの乱撃の威力が徐々に上がってくる。
(しまった!思考に意識を割きすぎた!)
「油断しすぎだ!」
俺は思い切り頭を剣の柄でぶん殴られた。
「うぐッ!?」
その衝撃により俺は倒れそうになるが何とか持ち堪える。
「なんだ、、これ!」
頭がチカチカする!?頭に砂嵐みてぇな映像が流れる!
(………はっ!)
その衝撃で俺は幼少期の過去を思い出す。それにより俺は思いついたのだ。あの切り上げを攻略する方法!
「チッ!思い出したくなかったぜこんなクソみたいな事!」
一か八かの一発勝負か、、
「なんか思いついたか?」
そう言うとトスさんは俺から少し距離をとる。
「あぁ、お前を一撃で打ち負かす方法がな!」
そう自信満々に宣言すると。
「ふっ、ならそろそろ決着としよう、小僧」
トスさんの手足に力が集約するのが分かる。剣を構えて突進の準備をしているのがわかる。
「あぁ、終わらせよう」
俺はそう言い身体を左に捩り左足を更に後ろに下げる。そして刀を鞘にしまった。
「おいおい何の真似だ?」
トスさんは困惑と少しの苛立ちを見せる。
「来いよ、俺が勝つ」
俺はそれだけ言う。
「死んでも、、文句言うなよ」
本気の目だ。互いの顔に汗が滲み緊張が野原を支配する。先程まで吹いていたそよ風すら今は止んでいる。
野原に一瞬突風が起こった。勝負は一瞬だった。
お互いが固まり数秒たった。
「ありがとう」
そう言い地面に倒れた。




