23.第二熱帯夜高等学校の夏の制服
23.第二熱帯夜高等学校の夏の制服
私と迅璃は、完成した服がマネキンに着せられた姿を見るため、そっと近づく。まるで自分たちの分身を眺めるような感覚で、その制服を見つめた。
それは見事な出来栄えだった。
第二熱帯夜高等学校の精神を体現するような、シンプルかつ洗練されたデザイン。東京風の落ち着いた色合いが、火星の暑さに耐えうる涼しげな印象を与えている。
「ありがとう」
私は礼を言う。
店員を見ると、彼女はまるでこの仕事で人生の目的を果たしたかのような、深い満足感に満ちた表情で静止していた。まるで長い充電に入る直前のヒューマノイドロボットのように。その至福の表情を見れば、報酬はすでに彼女の満足で支払われたと分かった。
横にいる迅璃も、制服の出来に心を奪われたのか、CPUが一瞬停止したような表情で立ち尽くす。私たちはこの感動をしばらく味わい、静かにマネキンから制服を取り外し、着用する。
制服の肌触りは驚くほど滑らかで、まるで第二の皮膚のように体に馴染む。いや、肌そのものよりも体の一部になったかのような一体感があった。私は夏のワイシャツのボタンを一つずつ、丁寧に留めていく。迅璃もまた、まるでこの瞬間を永遠に引き延ばしたいと願うように、ゆっくりとボタンを留める。
ようやく裸の状態から解放された私たちは、完全な存在になったような充足感に包まれる。静止した店員の頬に、感謝の意を込めて軽くキスを送り、部屋を後にした。
そして、まるでランウェイを歩くモデルのように軽快な足取りで、遺跡のホールを通り抜け、廊下を渡り、そのまま遺跡を後にした。
ジャングルの外は湿気がさらに増し、遺跡内の快適な空気とはまるで別世界だった。
制服の着心地は遺跡の中では心地よかったが、このトロピカル・ナイト・シティの熱気には敵わず、すぐに陽炎のような苛立ちがまとわりつく。
それでも、制服の完成度が放つ完全さのような感覚が、心を落ち着かせるのか、暑さも耐えられる気がしてきた。迅璃も同じようで、嫌な顔ひとつせず、この熱帯夜を平然と受け入れているようだった。
私たちは迷わず、遺跡の川辺で待っていたワニたちに近づく。
まるで予約していたタクシーのように、ワニたちは私たちをじっと待っていた。
私たちは何の躊躇もなくその背に乗り込む。
この制服――ジャングルの遺跡で生まれた名品とも呼べる宝物――をまとっているのだから、ワニたちもその価値を認めて噛みついたりしないだろうという、妙な確信があった。
実際に、100%安全だと感じられた。
ワニの背に揺られ、ジャングルの入り口までスムーズに進む。
降りる際、ワニの頭をポンポンと軽く撫でて感謝を伝える。「叩いた」というより「撫でた」がしっくりくる仕草だ。ワニたちを背に、私たちはジャングルを後にした。
店内に戻ると、強力なクーラーが効いた快適な空気が迎え入れ、制服のフィット感がさらに際立つ。
遺跡で制服を作り終え、まるで遺跡と一体化してしまったあの店員の代わりに、今度は別の美少女店員がレジに立っていた。彼女は私たちの制服を見るや否や、惚れ込んだような目つきでじっと見つめ、丁寧にお辞儀をして私たちを送り出す。
私たちはそのまま店を後にし、黒点百貨店を出ようとする。ジャングルでは踊る必要はなかったが、百貨店のホールでは依然としてワルツを踊らなければならないルールが生きている。
私たちは仕方なく、人混みの中をワルツのステップで進む。くるくると回りながら進むため、出口にたどり着くまで少し時間がかかった。途中でワルツの楽しさに飲み込まれそうになり、閉店まで踊り続けたくなる衝動を必死に抑え、ようやく出口に到達する。
ここまで来る間、私たちはまるで黒点百貨店のホールの主役のようにスポットライトを浴びていた。白熊の布で作られた、熟練の店員が心血を注いだ制服があまりにも輝かしく、ホールの視線を独占した。
私たちの踊りそのものよりも、制服が動く様が観客の目を奪い、まるでそれ自体がショーの主役のようだった。
出口のドアに手をかけた瞬間、ホール全体から拍手喝采が沸き起こる。
だが、その拍手は私や迅璃ではなく、第二熱帯夜高等学校の夏の制服に向けられたものだった。
私たちはまるでマネキンやハンガーのような存在に成り下がり、制服を引き立てるための道具でしかなかった。それでも、不思議と不満やネガティブな感情は湧かない。むしろ、この素晴らしい制服を着られたことへの感謝と感動が、胸いっぱいに広がっていた。
拍手喝采に浴しながら、私たちはドアを開け、黒点百貨店を後にした。
その瞬間、物語の主人公が私と迅璃から、この第二熱帯夜高等学校の夏の制服へと移り変わったのだった。




