冒険8 旅に出る幼なじみとついでに俺
後半は少しシリアスに挑戦してみました!!
あの練兵場事件(俺が勝手に名付けた)から一月がたった。
今では伊織は剣の腕はそこらのごろつき程度なら一撃で倒せるようになったし、魔術は暴走するようなことはなくなった。
そして、今俺達は女王に呼ばれ謁見の間に行くところだ。
「いったい何だろうね?駆」
「俺に尋ねられてもわかんねぇよ。それに俺は最近、ギルドや酒場にばっか行ってるからなおさらな」
「そうだね、最近君は私のことは放っておいているもんね」
フフフフフ、と不気味な笑い声をだす伊織。
正直怖い、てか拗ねてんのか?
「別に拗ねてなんかいないよ、フフフフフ」
「悪い悪い、でも俺にも色々あったんだって」
魔王の情報調査とか、魔法陣調べたりとか。
まったく分からなかったけどね!!
「むう、色々と言ってもたまにはこっちの様子を見るぐらいしてもいいと思うけどね」
「ん?様子はいつも見てたよ?伊織が気付かなかっただけじゃない?」
まあ、あえて見えないところから見てたんだけど。
「そうなのかい?それじゃあ私の訓練はどうだった?」
う〜ん、そうだな…
「まずは武器に振り回されすぎだな。もう少し力を付けないと。魔術に関して言えば魔力の練りが甘い。魔力コントロールもまだまだだな」
「そ、そうか。まだまだか…」
シュン、という擬音が聞こえるくらいに肩をおとす。
「だけど、この一ヶ月、よく頑張ったな。撫でてやろう」
ナデナデ
「へう〜///」
気持ち良さそうに目を細める。
だてに十七年間幼なじみをやってたわけじゃないぜ!!
俺の"撫でスキル"はもはや神の領域!!
とまあ、こんな話をしていると謁見の間の前までたどり着いた。
伊織が一歩前に出て
「"勇者"火元 伊織、参りました」
「同じく"魔術師"水元 駆、参りました」
作法はリインに叩きこまれた。
半端ないくらいスパルタで最後伊織なんか半泣きだったし…
おっと、この話は置いとこう。
「ウム、入れ」
女王から許可がでる。
テメエが呼んだんだろうが、とは口にださない。
入ってみると、玉座に女王が座っている。
周りには騎士の奴らや、宰相、大臣と城の重要人物がほぼ全員揃っていた。
もちろんリインも。
「勇者よ、今回汝を呼んだのは他でもない魔王のことじゃ」
「!!」
きたか。
「ついに魔王が動きだした。」
「ど、どういうことですか!?魔王はまだ動く気配はないとおっしゃっていたではないですか!!」
「ああ、そのことについて説明しよう。まずこの大陸がこの王国も含めた五大国で成り立っていることは知っているな?他には小さな村、ちょっとした町しかない」
「はい、その通りです。この大陸内には五大国とその属国しかありません」
「そして昨夜、五大国の一つマグダライト王国が………壊滅した」
「「「「!!」」」」
これには周りにいた人達も一部を除いて驚いている。
もちろん俺もだ。
「それも一夜にしてマグダライト王国は敗北したのだ」
「「「「………」」」」
これには声も出ないらしい。
それもそうだろう。俺もこの王国にきて一月になるがだいたいの戦力はわかってきた。
とてもじゃないが一日で壊滅させるなんて不可能だ。
よほど兵力差があるのか、あるいは魔王が強すぎたのか…
おそらく両方だろう。
だがいくら魔王が強かろうが、兵力があろうが、魔法使い級が一人では不可能。
俺の最大広域殲滅魔法でも大半の魔力を使い、国の十分の一を破壊がいいとこだ。
ならすくなくとも魔法使い級が四人、五人ほど…
まず勝てないだろう。
「これを見てくれ」
重苦しい雰囲気のなか女王が声をだす。
その手にあるのは水晶、映像を記録、投影する魔術具だろう。
そして話の流れからして恐らく…
俺の予想通りそれは映し出された。
昨夜の映像、おそらく兵士か誰かが写したのだろう。
赤、赤、赤、一面火の海となった街。
逃げ惑う人々は魔物に殺されていく。
そこらかしこに騎士達の亡きがらが転がっている、そしてその物体を食す魔物。
地獄絵図、そんな言葉がよくにあう。
「………うぇ」
誰かが嘔吐する。
それも仕方ないほどの光景。
ふと横を見ると伊織は泣いていた。泣きながら、しかし目は映像に向いたまま。覚悟を決めるかのように、拳を握りしめていた。
映像が終わる、記録していた人が死んだのだろう。
誰も喋らない、そんな中女王が口を開く。
「いまからそなた達には魔王退治の旅にでてもらう」
やっぱりか、もう、伊織にしか賭けるものがないってか、ふざけやがって…
だけどこの幼なじみは
「…わかりました。私達はいまこれより魔王退治の旅に行きましょう」
絶対に見捨てない。
一度でも知り合った、拘わり合った、そんな人達をコイツが見捨てるわけがない。
「…いいのか?」
遠回しに死ぬかもしれないぞと言っているのだろう。
それだけ今代の魔王が強いのだろう。
それだけ恐怖を与えているのだろう。
いまの映像を見たら当然だ。だけど伊織は
「はい、"私"が必ず魔王を倒すことを誓いましょう。貴方はここで、ドッシリと構えていてください」
怖いくせに、足が震えるほどに。
それでも伊織は倒すと言った。
なら、俺のやるべきことはただ一つ。
「違うだろ、伊織。"私達"だろ」
笑顔で伊織を支えてやる
それが俺に出来ること
この力で伊織を守る
それが俺がすべきこと
「………いいの?」
聞いてくる。覚悟を。
「ああ」
迷いはない。伊織は俺が守る。
魔王だかなんだか知らないが、俺の幼なじみは殺させない。
それが俺の覚悟。
それが俺の誓い
こうして俺達は旅にでた。
ようやく旅に出せました…
無理矢理すぎたかな