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瘴気の沙汰も浄化次第  作者: 石動なつめ
第二章 浄化の力を持つ兄妹
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浄化の力、らしきもの


 農場一帯の浄化は一時間半ほどで完了しました。

 分かってはいましたが、長い時間ずっと浄化の力を使い続けるのはなかなか大変ですね。

 なので一度ヴェルデ領の領都――領主の屋敷がある街の事です――へ戻り休憩する事になりました。

 再び騎竜の背に乗って移動を開始すると、


「とても素晴らしかったです、ミモザ様! 星の源泉の時も思いましたが、本当に美しい光景でした……!」

「あ、ありがとうございます」


 リーフさんが興奮気味に感想を伝えてくれます。

 最初の頃は落ち着いた人だと思っていたのですが、思ったよりもテンションが高めなのかもしれません。


 そんな話をしながら私達は領都へとやって来ました。

 ヴェルデ領で一番賑やかな街。白い壁に緑の屋根が特徴の建物が並ぶ広い街です。

 あちこちに植物や季節の花が咲いています。パステルカラーがとても綺麗。

 

「ミモザ様は甘いものはお好きですか?」

「はい、とっても!」

「では、あちらのカフェなどどうでしょう? 今の時期ですと苺を使ったパンケーキがおすすめですよ」

「いいですね!」


 苺のパンケーキ、素晴らしい。

 見た目も鮮やかで味も素敵という美味の宝石箱みたいなイメージのスイーツ。大好きです。

 ウキウキしながらカフェに向かって歩き出した時、


「…………ん?」


 不意にリーフさんが怪訝な顔をして足を止めました。


「どうしました?」

「あ、いえ、あちらに人だかりが」


 そう言ってリーフさんは左の方へ手を向けました。

 そちらを見ると確かに人が集まっていますね。何でしょう。

 反応を見ると、そんなに悪いものでもなさそうですけれど。


「先に様子を見に行ってみましょうか」

「はい」


 提案をするとリーフさんは頷きました。

 

「何かイベントでもやっています?」

「どうでしょう。うちで耳の早い使用人は特に何も言っていませんでしたので」

「一緒に遊びに行ったり?」

「……たまに」

「んっふふ」


 ちょっと照れた様子のリーフさん。仲が良くて何よりです。

 そんな話をしている内に人だかりが出来ている場所へ到着しました。

 わいわい、というよりは、ざわざわって感じですね。

 集まっているのは老若男女問わず。特定の年齢層をターゲットにしたものではなさそう。

 

「皆、どうしたんだ?」

「リーフ様! 実は……」


 リーフさんが声をかけると、数人がこちらへ顔を向けました。

 そして()が見えるように少し身体をずらしてくれます。

 するとそこには……。


「これが僕達の浄化の力です! どうですか、嘘じゃないでしょうっ?」

「ひいっ、お兄ちゃん! ダメだって、お兄ちゃん!」


 そう叫ぶ良く似た顔立ちの男女がいました。

 二人共、私と同じくらいの年齢に見えます。


「何があった?」

「実は先ほど、突然街中に瘴気が現れて」

「……! 皆、無事か?」

「はい、具合が悪くなっている奴は誰もいません。皆が驚いていたら、あの二人の手がピカッと光って瘴気を浄化してくれたから……」


 その方は戸惑いながらも、そう教えてくれました。


 なるほど、手がピカッと。

 実際に見たわけではないのではっきりとした事は言えませんが、聞いた限りではコローレの王族が使っているものと似ているかもしれませんね。

 ふむふむと私が思っていると、


「あの二人か……」


 とリーフさんが少し苦い顔になりました。


「お知り合いですか?」

「少し。……二週間ほど前から、自分達には浄化の力があると言ってヴェルデ領のあちこちで瘴気を浄化している兄妹です。まぁ、そう言っているのは兄の方ですが……」

「あら、それはありがたいですねぇ」

「いえ、そうでもないのです。確認すると確かに瘴気は消えているのですが、少しすると再び出始めて……」

「なるほど」

 

 そうなると……どうでしょ。発生地点そのものの浄化が出来ていなかったか、もしくは浄化の力自体が少し違うものなのかも。

 あの子達がどの地点を浄化したとのか、後でリーフさんに場所を確認しておきましょう。


「それと……大変失礼なお話になってしまうのですが」

「構いませんよ、どうぞ」

「これも兄の方ですが、自分達はうっすらとコローレ王家の血を引いていると風潮しているのです。そのため危険人物として監視をつけております」

「ははーん、そう来ましたか」


 浄化の力自体は世界各地で形こそ違えど似たものはあります。

 なので浄化の力を持っているのは珍しい事ではありますが――王族の血をという部分は眉唾ですね。 

 割とあるんですよ、こういう話。王族が使える力があるとか、王族と同じ特徴の容姿を持っているとか、理由付けは違いますけれどね。

 

 今回の場合は浄化の力ですね。しかも王家の血を「うっすらと」というのがなかなか上手い言い方です。

 王家の血とは言いますが、人間というものがこの世に誕生してとんでもなく長い時間が経っています。誰しもがどこかで繋がっている可能性はあるんですよ。


「血筋かどうかはともかく、浄化の力を使うところを一度見てみたいですね。大丈夫そうなら協力した方が瘴気の浄化を早く進められますし」


 私がそう言うとリーフさんは意外そうな顔をしました。


「よろしいのですか?」

「重要なのはヴェルデ領の瘴気を完全に浄化する事ですからね。使えるものは使います」

 

 時間がかかればかかるほど農作物等の収穫量に影響が出ます。

 ヴェルデ領の主産業は農業や酪農ですので、出来るだけ早く終わらせたいんですよねぇ。

 なので、あの二人が浄化の力を使えて、自主的にそれを行っているのであれば、協力し合えたら良いな、というのが私の考えです。


 ……という事を説明したら、


「ミモザ様、そこまでヴェルデ領の事を……!」


 と、リーフさんからキラキラした目を向けられてしまいました。

 彼は少々私の発言に対して判定がゆるめな気がします。

 何を言っても喜ばれているような……。


「ま、まぁ、そんな感じなので、あの二人から話を聞きましょう」

「承知いたしました。……ですが警戒はしてください。どういう意図があって、あのような発言をしているかは分かりませんから」


 リーフさんはスッと表情を戻してそう言いました。

 オンとオフの切り替えも早いですね、この人。

 

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