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瘴気の沙汰も浄化次第  作者: 石動なつめ
エピローグ

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あっと言う間の一ヶ月



 魔術具の事件からしばらく経ち、まもなく精霊の月も終わるという頃。

 ヴェルデ領の浄化も最後の一か所が終わりました。

 

 途中で何度か新たな地点で発生が見られましたが、それらの浄化も問題なく進み、後は月末――もう明日ですね。

 後一日、領内の様子を見守るばかりです。

 

 長いようであっと言う間の一ヶ月でした。エマさんやソイルさん達の件、ネイサンさんやパメラさんの件などなど、色々あったからかもしれませんね。

 たまにキルシュお兄様やダリアお姉様が様子を見に来てくれたんですが、


「普通はそんなに騒動は起こらないよ?」


 と呆れ顔で言われてしまいました。

 おかしい……普通に浄化していただけなのに……。


「ミモザ様、どうしましたか?」


 そんな事を考えていたら、どうやら表情に出たようでリーフさんから尋ねられました。

 はっとして顔を上げ「いえいえ、何でもないですよ」と首を横に振ります。


「もう一ヶ月経つのだなと、ちょっとだけセンチメンタルになっていただけです」

「そうですね。あっと言う間の一ヶ月でした」


 どうやらリーフさんも私と同じように感じていたようです。

 彼は浄化の仕事に同行してくれていますし、起きた出来事すべてに関係がありましたからね。私以上に大変だったと思います。


「色々ありましたからねぇ」

「本当に。……ですが、おかげで悩みの種が減りました」

「あ、セッピア領とジャッロ領?」

「はい」


 リーフさんは頷きます。


 ネイサンさんとパメラさんの件の後、二つの領地からの圧力や嫌がらせは、ぱったりと止まったそうです。

 ジャッロ領に関しては、それはそうだろうなと思いますが、セッピア領は意外でした。

 ネイサンさんが働きかけたのか、それとも王族が派遣された理由について知ったのか、その辺りは分かりませんが、悪意を向けられなくなったのなら何よりです。


「このまま続いてくれれば良いですねぇ」

「はい。そこからは私達の仕事でもあります」

「んっふふ。頑張ってくださいね」

「はい!」


 大変そうではありますが、彼には家族や心強い味方がいますから、きっと大丈夫でしょう。

 本当はここで「私も力になりますよ」なんて言えたら良いのですが、公平性を考えてさすがにそれは難しいですから。


 ……あ、でも、忠誠を誓っていただいたので、ちょっとくらいはありなのかしら?

 後でお兄様達に聞いてみましょう。


「ミモザ様は明後日お帰りになるのですね」

「そうですねぇ。なかなか名残惜しいですが」


 一ヶ月もいると、離れ難い気持ちになってしまいますねぇ。何よりもヴェルデ領は、雰囲気や居心地がとても良かったですから。

 また四年後、希望してくれるかは分かりませんが、来る事が出来たらいいなと思います。


「……寂しいです」

「?」

「とても寂しいです」


 そう思っていたら、リーフさんがそんな事を言いました。

 真っ直ぐに目を見て言われると、何だかちょっと照れくさくなります。


「んふふ。ありがとうございます。私もね、寂しいですよ。ここが好きなので」


 正直にそう言うとリーフさんはふわっと、嬉しそうな笑顔を浮かべました。


「ミモザ様。ヴェルデ領では収穫祭や、季節の祭りが幾つかあります。なので――その、ご招待をさせていただいても良いでしょうか?」

「あら、素敵! いいですね、ぜひ!」


 そんなお誘いをいただいたのは初めてだったので、私も嬉しくなって笑顔で頷きます。


「リーフさんからは、たくさんの初めてをいただきますねぇ。私も何かお返しを考えますね」

「……っ! こ……光栄です……」


 するとリーフさんはとたんに真っ赤になってしまいました。

 もごもごと口籠るリーフさんに私が首を傾げていると、


「おやおや、うちの子……」

「あらあら、真っ赤……」

「いやいや、春だねぇ……」


 廊下の向こうから囁くような話声と視線を感じました。

 聞き覚えのあるお声、と思って顔を向けようとした時、


「っ!」


 それよりも早く、リーフさんがとんでもない速さでそちらへと跳躍しました。

 えっ、すごい。あの距離を一気に詰めた!?


「いつから見ていましたか!」


 驚く私をよそに、リーフさんは声の主達――領主ご夫妻とソイルさんでした――に向かって怒っています。三人は「いやぁ、ごめんごめん」と楽しそうに笑っていました。

 相変わらず仲が良いようで何よりです。


 んふふ、と笑みを零しながら、私は窓の外へ目を向けます。

 綺麗な夕焼け。その端が、夜の色へと染まり始めていました。


「本当に、名残惜しいですねぇ」


 リーフさん達の賑やかな声を聞きながら、私はぽつりとそう呟いたのでした。


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