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瘴気の沙汰も浄化次第  作者: 石動なつめ
第二章 浄化の力を持つ兄妹

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二人の使う力の正体


 それからしばらくして私達は森の中心部――瘴気の発生地点と思わしき場所へと到着しました。

 その辺りになると、エマさんとローウェルさんが浄化をしても、直ぐに元に戻ってしまうくらい濃度が濃くなっています。

 

「はぁ、はぁ……」

「ひぃ、ひぃ……」


 ついでにエマさんとローウェルさんの疲労もだいぶ濃くなっていました。

 何度も何度も連続で力を使ったせいでしょう。


 一応、途中で代わりますよと声をかけたのですが、ローウェルさんにお断りされてしまったんですよね。

 エマさんは絶望的な顔をしていましたが、お兄さんに促されて浄化を続けていました。


「……ん?」


 大丈夫かなぁと二人の様子を見ていたら、ふと、二人の着ている上着のポケットが妙に膨らんでいる事に気が付きました。

 最初に見た時は特に違和感を覚えなかったので、あんな風にはなってはいなかった気がするのですが……。


「リーフさん、二人のポケットって最初あんなでした?」

「いえ、ああいう風にはなっていなかったと思います」

「あ、やっぱり?」


 どうやら私の勘違いというわけでもなさそうですね。

 なら、あれは何を詰め込んだものでしょう?

 歩いている最中に、何かを拾っている素振りは見られませんでしたし。


「エマさん、ローウェルさん。ありがとうございました」

「いえ……はぁ、これで僕達の力が証明、はぁ、出来たでしょう?」

「そうですね。お見事でした。ところで、そのポケットの膨らみは何ですか?」

「えっ」


 私が訊くと二人は、はっとした顔になって、手で膨らんだポケットを隠しました。

 それを見て、リーフさんの目が細くなります。


「隠すと言う事は、後ろ暗いものが入っているという事か?」

「ち、違いますよ! これは、えっと……」

「お、お兄ちゃん、やっぱり無理だよ……」

「黙っているんだ! これは、ええと……ど、ドングリ……です」


 とてもファンシーな答えが返ってきました。

 エマさんが「あああ……」と悲し気に呟き、両手で顔を覆っています。


「この森にドングリが生る木はない」


 リーフさんが淡々とそう言います。

 あ、それは確かに……。

 足元を見てもドングリは落ちていませんし、そもそも実が生るのは秋頃です。

 するとローウェルさんが視線を彷徨わせ始めます。


「いや、ええっと、ですね……」


 狼狽えて、一歩後ろへ下がった時、ころんっと彼のポケットから何かが落ちました。

 紫色のガラス玉のような石です。


「あっ」


 ローウェルさんがそれを拾おうとしゃがんだ時、さらにポケットからころころと石が落ちます。


「ずいぶん植物っぽくないドングリですね?」

「い、いや、その……こ、これはですね……」

「も、もう止めようよ、お兄ちゃん……!」


 もごもごと口籠るローウェルさんを見て、エマさんがそう言いました。


「ば、馬鹿な事を言うな! このままだとリーフ様が騙されてしまったままだろうっ?」

「でも、騙されているようには私は見えないよ! お兄ちゃんにはそう見えるの?」

「それは……だが……!」


 何やら言い争いが始まりました。

 うーん、どうにも話の内容が見えてきませんね?

 リーフさんが騙されていると言っていましたが――先ほどのローウェルさんに言われた言葉から考えると、もしかして私が彼を騙していると思われているのでは?

 

「お前達、一体何を言っているんだ?」


 リーフさんも少し困惑した様子でそう尋ねます。


 ――その時です。


 地面に転がった石達に、ピシッ、とヒビが入りました。


「あっ!」

「まずい!」


 エマさんとローウェルさんの顔色がサッと変わります。 

 それとほぼ同時に石は真っ二つに割れ、そこから紫色の煙――瘴気(・・)が吹き上がりました。


「うわあっ!?」

「やだぁっ!」

「リーフさん、二人をそこから引き離してください!」


 私は叫ぶように言うと、指先に浄化の力を纏わせました。

 そしてそのまま浄化を始めようと、瘴気の()を探します。


 しかし――。


 何故か瘴気の()が見当たりません。

 目を凝らして探しますが、瘴気の状態が複雑になっていて見つける事が出来ません。


 いえ、これは――もしかして発生場所の違う瘴気(・・・・・・・・・)が混ざっているのではないでしょうか?

 ならば、もしかして先ほどの紫色の石は……。


 ある可能性が頭に過った私は二人の方へ顔を向けます。

 リーフさんによって瘴気の薄い場所へ避難した二人は、目が合うとびくっと肩を跳ねさせました。


「エマさん、ローウェルさん。あなた達の力はもしかして、瘴気を閉じ込めるものではないですか?」

「……っ」

「そうです! ごめんなさい! ごめんなさい、ミモザ様、リーフ様……!」

「エマ!」

「もう無理だって言ったじゃない! こんな事になっちゃってるのに、黙っていられないよ!」

「それ、は……」


 エマさんの泣きそうな声と、ローウェルさんは苦しそうな声が聞こえてきます。

 二人の事情は分かりませんが、事態は理解しました。


 ――これはまずい。


「リーフさん。お二人を森の外へ避難させてください。私は浄化を始めます」

「ですがこのような状況で、ミモザ様お一人を置いては行けません!」

「んっふふ。ありがとうございます。でもね、優先順位が違いますよ、リーフさん」

「優先順位?」

「王族は最後です。行ってください」

 

 緊急事態に直面した際に、まず守るべきは国民。

 これは強がりでも何でもなくコローレ王家の常識です。

 王位を継承する一番上のお兄様は例外ですが、それ以外の王族には漏れなくこれが適応されます。

 

「あと瘴気の被害が増えると厄介なので、森へ入ろうとしている人達を止めておいていただけると助かります!」


 私がそう頼むと、リーフさんはぐっと歯を噛みしめた後、


「承知いたしました。直ぐに戻ります!」


 そう言ってエマさんとローウェルさんを引っ張って走り出しました。 

 それを確認してから、私は目の前の瘴気に意識を戻します。


「だいぶしんどそうですけど……やるしかないですね!」


 よしっと気合いを入れて、私は瘴気の浄化を始めました。


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