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地球防衛協会での話

作者: 土井留ポウ

 今思うと、本当に馬鹿馬鹿しいことなんですけどね。なんであんなにあんなところで頑張ろうと思ったんかって思いますよ。いや、全体が悪いんではないとは思いますけど、たまたまだとは思うんですけどね。運が悪かったというか、そういうのに当たったというか、情けない話で、ほんま、でもまあ、もう終わったことやし、ええんですけど。


 正直、試験に受かった時はめちゃ嬉しかったですよ。いや、言うても地方勤ですから、それほど試験自体は難しくないんです、でもそれでも一年近くは学校行きましたよ。もう僕も二十五やったし、バイトばっかりやったし、そろそろ身を固めていかなあかんな思てましたから、後三年ぐらいかかりそうや、って周りにも言うてたし、ほんま嬉しかったんですよ。まあ、彼女はいませんでしたけど、親も喜んでくれたし、安定してるし、それに実際それほど危なくないじゃないですか。ほら、言うても最終的にはどこからともなくあのヒーローが来てくれるし。


 あの田比田とかいうふざけたやつ、ほんま切れそうやったんすわ。あの変なやつとかどうやって試験受かってん、ほんまあいつと同レベルやと思うと、ほんま、むかついてくるっすわ。自分に対して。まあ、もう、ええんっすけど。


 配属されたんが河内田中という大阪でも辺境のところなんで、僕合わして三人っすよ。初っぱなからビックリしてもうて、張り切って挨拶したのに、いきなり何言うてきたと思いますあいつ、「別にここ、この子いらんやん」っすよ。あいつっすわ、田比田、もう一人のやつはまだ何か、アレやったけど。あいつ、田比田、あいつがねえ。こっちが張り切ってこれから頑張るぞ、って気持ちで行ってんのに、そんなん言うか、外やったら普通にしばいっとし。あいつやったら絶対、僕負けませんわ。まあ、もう、ええんっすけどね。


 もう一人の人は、日ヶ丘さんって言う人で結構、この人は良いんですよ、まだ。なんでも河内田中の基地で、四十年ぐらいおる人で、喋ったら全然良い人なんですけど、この人もちょっと。一応、主任みたいな立場なんですけど、仕事となるとちょっとなあ、ってなるし。あんま言いたくはないんですけど、ずっと寝てるんですよ。確かにね、あの仕事って怪獣出てこんと、何もすることなかったりってのはあるんですけど、ちゅうか田比田のこと甘やかし過ぎやねん、あいつレーダーしたいだけやし。


 僕も勉強してるから知ってるんすよ。でもなんかあいつ、「素人にはまかせられへんから」とか言って、そればっかりずっとやってるんですよ。一応、レーダー画面見とかなあかんし、たまにザコとか現れるから、それをビームで打ったりするんですけど、ほとんどあの辺、何も来うへん。日ヶ丘さんも、四十年やってて、十年に一回ぐらいしか怪獣出て来うへん言うてたし。それもマッピーとかオッピーとかのしょぼい奴らしか来えへん。ドゥラペラーとかゾイオスとか強い系は一回も来たことがないって。ほいで、レーダーぐらいしかやることないから、あいつ僕にレーダー取られたくないだけやねん、あいつ、田比田。


 それに、田比田、ほんまはレーダー下手くそなんですよ。レバー持つ手もなんか震えてるし、ボタン押すのも何か遅いんですよ。そもそもからしてあいつはレーダー向いてないんですけど、二年近く河内田中の基地におったからって先輩風ふかしたいだけ、仕事とられることばっかり考えてるだけなんですよ、なんやねんそれ、めっちゃ腹立つでしょ。日ヶ丘さんも何も言えへん、というか、ずっと寝てるんですよ。もう定年間近みたいやし、いらんことせんとこってのがバレバレなんですよね、そもそもからしてあの人、中卒やし、最初期からおった人やけど、多分レーダーなんかもよう使われへんねん、田比田もレーダー下手くそやし、機能してないんですよあそこ、あんま言いたないけど、河内田中の基地の基地自体がいらんねん。でも、誰も言う人おらんねん。


 でも結構、住民の人からは、河内田中の基地やし、って何か通ってる部分があって、ある種の安心感もあるらしくて、いらんのにずっとあるという部分もあったりして。その点は僕も分からんことはないけど、田比田がなあ。一回ね、あいつがトイレ行ってるすきにレーダー席をとったんですよ。あいつ茹で蛸のように膨れ上がってね、僕のこと押し倒してきたんですよ。「阿呆か!お前なんかにこれ出来るか!」、って叫んでるんですよ。「出来てたやんけ」、言うたったんですけど、「出来てないわ、阿呆」、とかなんか必死やし、よく見たらちょっと涙目なんですよ。なんやんねん、こいつ、思ってもうて僕、もうええわ思て、屋上で煙草吸ってたんですよ。ぼうっと町並みを見てたら、生駒の山から誰か覗いてたんですよ。顔自体はあんま怖くないんですけど、角のあるオッピー2000なんですよ。オッピーも2000なってから結構強くなり出して、あの生駒山から顔を出してきたということは、その裏側にある奈良が結構被害を受けていることは確実なんですよ。僕、急いで下に降りて、田比田に言うたんですよ、「お前、怪獣来てるやんけ!」、そうしたらあいつ何言うた思います、「え、嘘」、言いおったんですわ。何でお前が知らんねん、今まで何しててん。緊急事態やから、僕も勢い込んで「戦闘機は何処やねん!」、ってあいつに聞いても、「ここはレーダーしかないねん」、とか言いよるし、あかんでしょ、あそこ。


 ほんで責任者でもある日ヶ丘さんを探したんですよ僕。指示を仰がなあかんでしょ、でもな、おれへんねん、多分何処かで寝てるんやろう、思ったんですけど、何処にもおれへん。何でおらんねん、こんな時に、後で分かったんですけど基地抜け出して酒飲んでたらしいすっわ。マッピー2000が生駒山から下りてきてるんっすよ。ああ、もうどうしようもないわ、と思てたら、何処からともなく来てくれましたわ、海辺の戦士、シーサイドマン。シーサイドマンも最初のやつは何か別の仕事で違うところに行ったりして、結構代わりが来てくるでしょ。今は、シーサイドマン・サンセットらしいですけど、この河内田中に来てくれたんが、結構前のやつなんですよ。シーサイドマン・NAGISAなんですよ。シーサイドマン・NAGISAとか言ったら僕らの生まれる前のやつでしょ。今まで何処おってん、思ったんですけど、何か久しぶりにそれを身にまとったみたいに埃だらけなんですよ。色も何か変色してるし、動きもノロいんですけど、来てくれただけも有り難い思わなあかんとは思うんでけど。ノロいんすよ。もたもたしてるんですよ。まあ、来てくれるだけでも有り難いから、僕も窓から応援してたんですけど、田比田のやつ、応援もせんとパン食べてるんですよ。田比田、ほんまむかつくっすわ。冷蔵庫も田比田の買ってきたパンとかジュースしかないし、僕の買ってきたお弁当の入れる隙間もないぐらいなんですよ。パンも生地に味付けのされた甘いキャラメルのやつばっかりで、あの臭いで、田比田思いだして、嫌になるっすわ。ジュースもでかいペットボトルの黄色いエネルギーの出るやつばっかり飲んでるんですけど、お前、エネルギーとか使わんやろ、思て。まあ、いいんっすけどね。怪獣もシーサイドマン・NAGISAがモタモタしつつも一応勝ったし、平和が訪れたわけですけどね。次は、多分、十年ぐらいは大丈夫やと思うて、何か夕方ぐらいになって帰ってきた日ヶ丘さんも酒臭い息で言うてたわ。何処行っててん、何で酒飲んでねん、ほんま、あかんでしょ、あそこ。


 まあ、僕もあのゴミみたいなところから離れて、今週からこの地球防衛倶楽部での新生活が始まりますから、まあ、いいんっすけど。規模的にもこっちの方がでかいし、見学に行かしてもらった時もみんな良い人そうやったし、絶対こっちの方がいいっしょ。まあ、もう終わったことっすわ。

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