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第1話 始まりの日

「すごいねえ、2人とも将来は立派な軍人さんだねえ」


ノアとヒロ。

目をキラキラと輝かせた少年で、年は10と一つか二つ。村一番の元気っ子で、2人はよく川のほとりに出向いては、剣を模した木の棒で才を磨いた。猫泥棒もお構いなし。村で何か事件があれば、直ぐに駆けつけては悪者を退治していた。大人にも負けることは無かった。


ヒロは既に炎魔法を発現しており、拳に纏っては威力を底上げした殴打で攻撃したり、鉄のナイフに宿しては切れ味を増した刃で切れない物は無かった。


自分はまだ及ばない才能に、子供ながら少々妬いた。


それはさておき、子供とは純粋無垢なモノで、言葉そのままに受け取る生き物である。

自分たちには才能があると思い込んでいたし、将来は村を代表する立派な軍人に成長し、天使と悪魔から人類を守るヒーローになると、信じて疑わなかった。


そんな姿を夢見る。

それ故に、希望に満ち溢れ無垢な瞳はキラキラと輝いていた。


「なぁ、ヒロ。俺はお前を超えて、将来は誰にも負けない立派な戦士になる!」


「あぁ、そうだなノア。俺も立派な戦士になって村をもっと豊かにしたいんだ。ただ、ノアには負けないぞ!」


「よし、特訓だ!」


夕焼けした沈んでいく太陽を尻目に、2人はまた木刀を構え直した。

雲一つ無いオレンジの空。

平和な日常は、永遠に訪れるものだと思っていた。そう、永遠に・・・




その時。

耳をつん裂く怒号のような地響きと同時に、森からカラスが一斉に泣き叫びながら飛び出した。それと同時に、サイレンがこだまする。


・・・村の方からだ。


初めての経験だが、子供ながら嫌な予感がした。汗が手の甲を伝う。


「ヒロ。村の方から聞こえる。様子を見に行ってみよう」


「あぁ・・・そうだな」


2人は足早に川辺を後にした。







村に戻ってくると、夕日が沈む前とはまるで違う風景がそこには広がっていた。

嵐のような地響きと共に砂埃が舞い、業火が燃え盛る家屋は見る見るうちに倒壊していく。夕暮れのはずなのに、昼間のように明るかった。


「逃げろぉ!悪魔の襲来だ!足が動くやつは子供を連れて出来るだけ遠くに逃げろ!」


泣き叫びながら右往左往する人々。

地獄絵図のような光景が目の前に広がっていた。


「お前らも逃げろ!」


通りかかった屈強な男にノアとヒロは抱き抱えられた。


「嫌だ!」


しかし、2人同時にその手を振り叩く。小さな体躯で、屈強な男をもろともしない力強さ。男は少し目を丸くしながら、知らねえぞと一言吐き捨て、その場を去っていく。


「ヒロ!この日が来たんだ!俺らで悪魔を退治しよう!」


「あぁ!こんなのは許せない・・・、やってやろうぜ!ノア!」


2人は倒壊する家屋の側に落ちていた鉄の剣を、持った。木刀には無い、ずっしりとした重みが手のひらから感じ取れる。ヒロは剣に炎を宿す。

辺りで燃え盛る業火に負けない程の炎が、剣の上でユラユラと踊る。


ノアとヒロは一度目を見合わせ、ゆっくりと頷いた後、逃げ惑う人々と逆方向に足を進めた。

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