ロザリー1
ロザリーは魔女ロザンサと、何も変わらないように見えた。
声も同じで、話し方が同じ。だから、メイが同一人物のように接してもおかしくないだろう。
けれど、時間が経つにつれ──メイにはヒシヒシと別人だと感じたのかもしれない。メイは違和感を抱かずにはいられない出来事に遭遇していく。
ロザリーはメイと同じように火を扱う。指先から火を起こしはしない。
ロザリーはメイと同じようにオーブンミトンを使う。熱いものを運ぶからといって、その物を浮かすことはない。
それと、よく見れば燃えるような真っ赤な瞳は、ひまわりのようなオレンジ色に変わっていた。
薪割りは頼むと言われた。
「体があちこち痛いんだよ」
怠けたくて言っている様子はない。
メイは薪割りをしたことがない。
だから、四苦八苦して数本だけを割り、ジョンが来たら少しお願いすることにした。
魔法を使わない魔女はいない。目の前の人は魔女ではない。ロザリーなのだと、メイが受け入れるのにさほど時間は要らなかった。
夜、メイは飴玉を作ることにした。クツクツ煮込んでいると、ロザリーが近寄ってくる。
「何を作っているんだい?」
「飴玉です」
へぇ~、なんて物珍しそうにロザリーが言い、できたら一粒ほしいと恥ずかしそうにねだる。
メイはすこし頬がゆるんで、喜んでと返す。
器用に丸めて冷やし、星のような飴玉ができた。
「どうぞ」
「ありがとう」
ロザリーはおいしいと言って、にこにこと幸せそうに微笑む。
「誰に教わったんだい?」
メイは一瞬目を見開いて、すっと上品な笑顔を浮かべた。
「魔女に教わったんです。誰かを幸せにしたいときに作りなさいと」