ロザンサ2
「はぁ?」
メイはロザンサがまだ怒っていて、嫌味を言ったと解釈したのか。何を言っているのかと、食材をキッチンに置いた。
「ロザンサ、私、さっき謝ったわよね? まだ怒っているの?」
「何のことだい?」
メイの眉間に皺が寄る。
「で、誰なんだい、アンタは」
きょとんとしているロザンサに、メイの眉間の皺が消える。
嘘を言っているようには見えないのだ。
「え……、本気で仰っています?」
「もちろん」
「魔女、ロザンサ?」
「誰が魔女だい」
え? とメイは驚きを隠しきれずにこぼす。
「私はロザリオだよ。まったく失礼な娘だね」
勝手に人の家に上がりこんでおいて──なんて、まるで突然来た親族に言うかのように、実に呑気なことを言う。
一方のメイは目が白黒した。ロザンサが、あの魔女ロザンサが『魔女ではない』と言い、別の名前を名乗ったと。
メイは必死に頭を回転させたのだろう。
うろたえていた顔をきゅっと整え、片手を胸に置きロザリオと向き合う。
「し、失礼をしました。私はメアリーと申します。メイとお呼び下さい。ここで住み込みを……させて頂くことになりまして、その、勝手にお邪魔して申し訳ございません」
ふ~ん、とロザリオはメイを上から下まで視線を這わす。
「そうかい……じゃあ、私のことはロザリーかローザと呼んでおくれ」
「か、かしこまりました! ロザリー、よろしくお願いいたします!」
メイは混乱しながらも頭を下げる。すると、ロザリーから魔女と同じ声で、メイの長年願っていた音が魔法のように降ってきた。
「よろしく頼むね、メイ」