メイ2
メイが口を噤む。
変わらずにロザンサがニヤニヤとしていると、メイが両手をぎゅっと握って吐露する。
「そうです……」
ロザンサが鼻を鳴らした。
「そうです! いけませんか? だって、憎まれるなら憎んだ方が楽ですもの! 殺されそうと感じて、無抵抗ではいられませんもの!」
「あ~、そうかい、そうかい。立派だねぇ」
「馬鹿にしていませんか?」
「おや、利口な子だこと。そうだねぇ、他力本願よりはいいかもしれないねぇ」
ぷぅ~っとメイの頬が膨らむ。
ロザンサは、それを見て盛大に笑った。
ロザンサとの生活は、メイにとっては刺激的なものばかりだった。
火は指先でつけるし、熱いものは浮かして運ぶ。薪を割るにも、斧が宙を舞う光景はマジックのようだった。
「本当に、『魔女』なのですね……」
そうして、メイは乞う。
「私にも、魔法を教えて下さい」
キラキラとした湖のようなメイの瞳に、ロザンサは微笑む。
「私はね、弟子は取らないよ」
えええええ~と露骨に落ち込むメイをよそに、ロザンサはポツリと言った。
「アンタはね、飴玉でも作れるようになれば充分なんだよ」
人間は魔法なんて使えない方がいいのさ──ロザンサはなぜかそんなことをポツリと言った。




