メイ1
「アンタの背じゃ、そこは届かないよ」
一言目はこれで。
「アンタの体で運ぶのは、見ているコッチが怖いんだ」
二言目がこれで。
「あ~、もう! 私がやるから、アンタは座っておきなさい!」
三言目にはこれだった。
「まったく、アンタは口が達者だから錯覚したけどね、四、五歳だろう?」
メイが暮らすようになってから数日。珍しくロザンサは四言目を発する。
ロザンサが言うように、メイの身長は一メートルもない。極端に言えば、ロザンサの半分ほどだ。
言いくるめられてから家事を任せると言ったものの、メイの背丈にキッチンは合わず、洗濯物は干せず、何かを運ぼうとするものならば、見ている方が危うさを感じる足取りなのだ。
メイは華奢だ。よく言えば。
悪く言えば、これまでまともな食事をしたことがないのかもしれない。
「お役に立てず、すみません……」
けれど、利口なのだ。
ロザンサは短い息を吐く。
「まぁ、そのうちできるようになるさ」
拾っちまったもんは仕方ないしね、とロザンサは笑う。
「魔女ロザンサは、おやさしいのですね……」
しんみりとしたメイに、ロザンサは横目を向ける。
「仰った通りです。……帰れる場所がないのです。母に……いいえ、義母に、その……」
「なんだい、そのよく聞くような身の上話」
メイが顔を上げると、ロザンサはニイっと笑う。
「人に話をするのなら、もっと楽しい話はできないのかい? それとも、虐められ役で有名な物語のお姫様と重ねて、悲劇のヒロインにでもなりたいのかい?」
「違いますっ! そんなわけでは……」
「そうだろう? 義母に虐められて殺されるくらいなら、魔女になって見返してやろうとでも思ったんじゃないのかい?」