魔女ロザンサ2
ロザンサは、本当に冬眠したようだった。
ジョンが帰ってから起きなかったが、今までも昼食に起きないことがたまにあり、メイはさほど気にしなかった。
昼食は捨てるような野菜の切れ端でスープを作り、腹を満たす。
夜もロザンサは起きなかった。
今日は久し振りに朝食を作ったのだ。それも、半年振りくらいに。魔法を使ったのだって、そのくらい振りだった。
何時から起きていたかも知らない。
疲れ切って眠ってもおかしくないのかもしれない。そう、深い、深い眠りに。
メイは無理に起こさないことにした。
また野菜の捨てるような部分でスープを作り、腹を満たしてはやく寝る。ロザンサのとなりに体を横たえて。
明日ははやく起きよう、ロザンサよりもはやく。
そうして、おいしいものを作って一緒に食べよう。ロザンサとでなくてもいい。ロザリーとでもいいのだ。また一緒に、おいしいと笑って食べよう。
メイはそう思っていたかのように、いつもよりもうんとはやくに眠った。
日が昇るころにメイは目を覚ました。
ロザンサを起こさないように、そろりそろりとキッチンへ向かって、音をなるべく立てないように料理を始める。時間がはやいから、飴玉も作っておこうかと砂糖に目を配る。
用意が一通り終わって、メイは定位置に座って待った。ロザンサが、ロザリーが起きてくるのを。──けれど、どんなに日が高くなっても起きてくることはなく。
メイは、やっとロザンサが本当に本当に深い深い眠りについたのだと気づいた。
昼にジョンがやってきた。
「連絡をくれれば、もっとはやくに……」
首を横に振ったメイは、
「頭が回らなかったのよ。ジョン、今日も来てくれてありがとう」
と、気丈に笑う。
ふたりで食事をして、出会ったころの話をして、ロザンサのいいところも悪いところも言い合って──ロザンサを弔った。
「そういえば」
ロザンサが昔、おかしなことを言ったのよとメイが言う。
「人間は魔法なんて使えない方がいいのさ……なんて」
ふふふと笑い、メイはハッとする。
「もしかして、ロザンサには……私に魔法を教えたくなかった理由が別にあったんじゃないかしら」




