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魔女ロザンサ  作者: 呂兎来 弥欷助


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12/14

魔女ロザンサ1

 あるあたたかい日のこと、いつものように起きたメイは目を見開いた。


 目の前を──鍋が浮遊している。


「ロ、ロザンサ?」


 もう半年は口にしていなかったであろう名前をメイは呼んだ。あたふたとしていると、すっと光が一筋通ったように、声が聞こえる。


「なんだい、そんなに驚いて」

 ケケケと皮肉な笑いを浮かべたロザンサは、寝室から死角になる椅子に座っていた。

 漂白剤につけたように真っ白になった白髪は、なぜか森林を思わせる深い緑色だ。


 そうして、メイをじっと見る。

「アンタがよ~く眠っていたから、今日は私が朝食を作ってやったのさ」

 命が燃えるように、真っ赤な瞳にメイは釘付けだ。

「なのに、なんだい。狐につままれたような顔して」

 目を細くし横目でメイを見る()()()()

 メイは体をわなわなと震わせ──子どものように抱きつく。


「ロザンサ!」


「わわわ! あ~、もう、なんだい。本当にどうしたんだかね、この子は……」

 呆れ声だが、メイは歓喜の声を上げる。

「いいわ! 何とでも仰って下さいな!」

 ロザンサはわけがわからないと言いたげな表情を浮かべて、ため息をつく。

「いい加減、離れてくれないかい。料理はね、作り立てが一番おいしいんだよ」

 はあ~と長いため息をロザンサが吐いた直後、メイはパッと離れる。

「はい!」

 目元を拭い、定位置に向かうメイにロザンサは首を傾げる。


「ロザンサ! ロザンサ! さあ、頂きましょう!」

 椅子に座るなり、先ほどよりも生き生きと笑うメイ。

「忙しい子だね……」

 いつまで経ってもアンタはうるさいね──とロザンサが言えば、メイはまたうれしそうに笑った。




 昼になり、ジョンが配達にやってきた。

 メイはウキウキと今朝の出来事を話す。そして、どうせ聞いているのでしょう? と、ロザンサを呼ぶ。


 けれど、返事はない。

 また眠ってしまったかとメイがしょげると、

「会えてよかったね」

 と、ジョンが言った。

 そして、

「もし、何かがあったら連絡して」

 と、ちいさい紙をメイに渡す。


「え?」

「よい夜を」

 ジョンは次の配達に急ぐからと、早々に山を下りていった。

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