ロザリー2
日に日にロザリーは、目に見えるほど衰えていった。
森林のような緑の髪の毛はドンドン色素が消えていき、白くなっていく。
体の動きが鈍くなった。うわごとのように独り言を呟く。
そうして、寝たきりが増えた。
昼になり、ジョンが来た。
「お願いがあるの」
そう言い、メイは家の外へとジョンを連れ出す。
ぐるりと壁に沿って歩き、室内がよく見える窓の前で立ち止まる。メイはジョンに薪割りをお願いできないだろうかと依頼する。ほんの数本で構わないからと加えて。
ジョンは明らかに驚いた。だが、ジョンがもっと驚いたのは、続いたメイの言葉だ。
「魔女ロザンサは、もういないのよ……」
え? え? と狼狽し、窓越しに眠る魔女を見る。
「あそこで眠っているのは……」
「ロザリーよ」
ジョンはもっと混乱しただろう。
メイはどんどん悲し気な表情になっていく。
「ロザリーは魔法を使えないの。魔女ではないんですって。でもね、ありがとうと言うし、おいしいとも笑うし、私のことを……『メイ』と、呼んでくれるのよ……」
メイの涙を見て、ジョンは理解したようだ。おもむろに割る木を切り株の上に置き、斧を手を取る。
パキン、パキンと薪の割れる音が、軽快に響く。
「ロザンサも、メイがいてくれて……よかったですね」
「どうかしら……」
パキン、パキンとリズムよく鳴る音は、メイの声を届きにくいものにした。
数本でいいと言ったのに、ジョンはメイが泣きやむまでの間に何日か分の薪を割っていた。
「ありがとう」
メイが多めに配達料を渡そうとすると、ジョンは断る。
「ロザンサのために僕が何かするのは、僕のためでもあるから」
窓から室内を眺めてジョンは、ポツリと言う。
「もう……話しても許してくれますかね、ロザンサは」
「え?」
「以前、僕が助けてもらった話です」




