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慟哭  作者: Ashley
序章
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第0話

 To live is to suffer, to survive is to find some meaning in the suffering.


 生きることは苦しむことであり、人生を生き抜くことは苦しみの中に何らかの意味を見出すことである。


 ー フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ




 幾許(いくばく)(とき)が経ったであろう、、、。


 度重なる無情な拷問。


 己だけではない、愛する家族が目の前で、じっくりと、そして残酷に、確実に命の灯火()を消していく。




 一体、私たちが何をしたというのだ?


 ―罪状は[第二級背反(はいはん)罪]


 公家(くげ)に反く事は、どんな事情があろうとも許されない。


 重税に重税を課した上、払えぬからと、代わりに奪って行った米を、今日食べる物さえままならぬからと、どうかそれだけはと、(こうべ)を垂れた罪か。


 はたまた、床に伏している母を、死の間際の顔が見たいと、幼い息子にその吐息が途絶えるまで殴らせ、私は縛られ、怒り、泣き叫ぶことしか出来なかった己への罰か。


 一日と経たぬうちに、壮絶な拷問に糞尿を撒き散らし、泣き喚き、気を失えば目覚めさせられ(おこされ)、無意識の内に私の首は縦に振られていた。


 数刻後、刑場は正に阿鼻叫喚と化す。


 辺りを見廻す。


 幼い息子は項垂(うなだ)れ、動かなくなっていた。


 娘の(まなこ)から一切の光が消えて尚、(はずかし)めを続ける男達。


 妻は既にその人間の姿形を残していない。直前まで座らされていた刑罰用の椅子に、頭部のみで、何とも表現し難い形相で私を見ている。


 微かに残っていた思考が停止する。


 もう、痛みも何も感じなかった。


「早く逝きたい…。…家族の下へ逢いに行きたい。」


 彼には永遠とも思える時間が過ぎていく。


 そして、最期(そのとき)が近づく。


「………やっと逝けるのか。子供達に、妻に逢えるのか…。」


 彼は薄れゆく意識の中、家族を想う。


 そして、深淵の覗き口、何かを見た気がした。


 いや、確実に何かを感じた。

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