プレ企画特別SS 第二弾!
こちらはTwitterでのプレゼント企画、【もふしらファンアートコンテスト】でのプレゼントとして書いたSSです!
当選者みなと様のご希望に沿って書かせていただきました!
これまた3000文字程度のつもりがずいぶん長くなっちゃいました……
皆様へも公開して下さるとのことで、皆様どうぞお楽しみ下さい~!!
※こちらは書籍17巻のIFストーリー『夢か現か』の続きという形になります。
薄い布団で寝返りをうつと、ことんと頭が落ちた。
頬に感じる畳の凹凸。少しばかりくたびれたチクチク感も懐かしい。
防犯など気にする必要もなく、広々と開け放っていた縁側から心地よい風が届いていた。
『まあねえ、ここに侵入する泥棒がいたら気の毒だわ』
渋い色味の室内で、桃色のふわふわがまっふまっふと揺れている。
日本家屋に桃色フラッフィースライムは随分不釣り合いだな、なんて考えながら目を瞬いた。
「……寝て、起きたはずなんだけど……」
どうして覚めてないんだろうか。
とても見覚えのある懐かしい、古家。
古民家というほど趣もなく、廃屋と言うほどボロくもなく。
人が住むギリギリくらいのラインを行く、オレが過ごした日本の我が家。
「ニリンソウが咲いてるから……春なのかな」
山奥でもないけれど、さすがに朝はTシャツ一枚だと寒いくらい。オレは起きようと考えはしたものの、冷気に負けてまた布団に潜り込んだ。
そこへ、ギシギシ板の間をならして軽い足音が近付いてくる。
もっとそっと歩いてくれないと、そのうち踏み抜くよ。
「なあなあ、もうカップメンねえの? 俺、あれが食いたい」
勢いよく畳に座り込んだタクトが、思い切り布団を引き剥がした。
「僕、サバカンとごはんがいいな~」
既に起きてあちこち探っていたらしい二人は、食料を見つけられなかったらしい。
「もうないよ……昨日あんなに食べたんだもん」
渋々布団を抜け出すと、とた、とた、と台所へ向かった。
着ているこれは、まるでワンピースのようだけど、彼シャツならぬ自分シャツ。
オレ、結構大きかったんだなと気分良く思ったところで、割と問題なく着こなしているラキが目に入ってしまう。
……ラキ、大きすぎやしないだろうか。
向こうの世界だと違和感なかったけれど、いやむしろオレの小ささに違和感があったけれど、こっちに来てみれば二人はデカい。
おかしいでしょ、小学4年生くらいだよ?! どうして160㎝くらいあるの!
そりゃ、中にはそんな子もいるだろうけども……!
ブツブツ言いながら台所へ立つと、まるで自分がこびとになったような気分だ。
キッチン台って、こんなに高かったのか……!
「夢なら夢で、もっと食材を取りそろえていてくれればいいのに……」
諦めきれずに冷蔵庫を開け、棚を開け、見事に乾物類やレトルトしか残ってないことにガッカリする。
頼みのカップ麺や缶詰は、昨日彼らがあらかた平らげてしまったし。
「肉がねえの? 俺、狩ってきてやろうか?」
「うん、やめておいて。下手すると警察が来ちゃう」
山中でナイフ片手にイノシシを捌くタクト。ダメダメ、この世界の人はそういう耐性ないからね?!
「とりあえず、おにぎりでも食べて町に行く?」
「「行く!!」」
よほど楽しかったらしい。オレは気疲れしたけれども。
ちょっと苦笑しつつ、今日はどこへ行こうかと考えを巡らせながら、パックご飯をレンジで温めた。
5パックセット全部ボウルに開けて、鰹節と顆粒だし、醤油を加えて混ぜ合わせる。あとは中央に種抜き梅干しを入れて握るだけ。
「えっ? 何それ~ごはんに果物入れるの~?」
「美味いのか……??」
ギョッとした二人を見て、にやりと笑みが浮かぶ。
「梅干しって言ってね、ちょっと酸味があるけど美味しいんだよ」
スッと差し出すと、勢いよくタクトが食いついた。
「――っ?! んっ?! んん~~っ?!」
食べ物は絶対吐き出さないタクトが、一瞬の空白の後、涙目で転げ回っている。
「え、え、何なに~? 辛いの?!」
戸惑うラキは、もう絶対梅干しを口にしようとしない。
「失礼な、美味しいんだよ。ほら、ちょっとずつごはんと一緒に食べてみて」
ぱくっとおにぎりを頬張ってみせれば、タクトも急いで口に入れた。
「は~~~まだ口ん中酸っぱい。酸っぱいのか? しょっぱいのか?? こんな果物があんのか! あ、でもこうして食うと普通に食える」
酸っぱさに慣れたタクトは普通に梅干しおにぎりを平らげて、次へ手を伸ばした。
「酸っぱいんだ~? え~レモンみたいな~? ご飯に合うの~?」
用心深く、ちびちび食べていたラキも、割とすぐ慣れたらしい。
そもそもこれ、蜂蜜梅干しだよ? 自家製だとすっごく酸っぱくなっちゃって。以降用心して蜂蜜梅干しにしてあるんだよね。
懐かしいな。
舌の奥がきゅんとなるような酸っぱさとしょっぱさ。
合わせたごはんがたまらなく甘くて、口いっぱいの唾液が溢れそう。
「おいし……」
高級品でもなく、お肉のようにワイルドに胃袋を掴みにかかるものでもなく。
素朴で、しみじみ、おいしい。
オレは二人にせっつかれるまで、じっくりゆっくり味わっておにぎりを食べたのだった。
「――すげー! 城よりデカいんじゃね?! この中全部店なのか! なんでこんな無駄に空間が広いんだ?! ドラゴンでも通るのか?」
「ちょっと待ってちょっと待って~! あれ何~? どういう素材で――」
多少目立つ二人がいても大丈夫なよう、都会の大型ショッピングモールへやってきたわけだけど。
やっぱり目立つ!! 見目の良い二人が奇行に走るから余計に目立つ!!
とにかくどこかの店に入ってしまえと二人を引っ張り込むと、店員さんが飛んできた。
「いらっしゃいませ~! どこかのモデルさんか何かですか? 私、ひと目でファンになっちゃいました!」
人が少なそうだと思って入ったのは、アパレルショップだったらしい。若い女性店員さんがリップサービスも露わに笑顔を振りまいている。
ふふ、モデルさんだって。そうかな? オレ、そういうの向いてたりするのかな。
「こっちの僕もすっごい美人! キッズモデルかな?!」
こっちの僕。店員さんが無邪気な笑みで視線を注いでいるのは、どう見てもオレ。
キッズモデル……まあ、それはそう……。
ひそかに凹んでいると、オレたちが著名人に違いないと勘違いした店員さんが次々服を合わせ始めた。
「こちらなんて、すらっと足の長い感じが強調されて――」
「うわ、何かスポーツしてるのかな? だったら敢えてピッタリよりもこっちの――」
やだもう、何着ても可愛いっ! いっそ、コンセプトを揃えちゃって……」
なんだろうな、日本にもエリーシャ様やマリーさんみたいな人がいるんだな。
あれよあれよと選ばれた服は、買わないと申し訳ないような気がして。
実際格好よかったのもあって。
「ああっ……!! 素敵! 雑誌の表紙!!」
ここで着替えて行きましょうと力説されたので、オレたちは散々賞賛されながら新たな服に着替え、逃げるように店を出た。
「買ってからも、たゆまぬサービス精神。すごいよねえ」
向こうの世界、割とぶっきらぼうだったり愛想が悪い店員さんもいるから。
『俺様、そうじゃないんじゃ? と思う!』
『そりゃあ、こんな飾り映えのする人たちが来れば興奮するわよね~!』
確かに、と見上げた二人は、本当に雑誌の表紙を飾っていそうなオーラがある。
何でだろうね、顔立ちはもちろん整っているけれど、それよりもこう、迫力と言うんだろうか。
幼い顔立ちながら、肝の据わった感じが漂うのが目を引くのかも。
だって二人は歴戦の戦士だからね!
ちょっぴり得意になってくすくす笑っていると、ふいにラキの姿が消えた。
「あっ? ちょっとタクト! ちゃんと捕まえておかないと!」
「あ~、こういう店もあんのか……」
幸い、居場所はすぐに知れた。
なぜなら近くにあったのは、大型のホームセンター。
作務衣のオジさんたちに混じって、一人だけスポットライトを浴びたように場違いな人が居る。
「もうラキ! 一人でうろうろしないで!」
「僕、ウロウロしてないけど~? 一直線にここに来たよ~?」
視線は数々のヤスリや金具に向いたまま、上の空で返答が返ってきた。
「あー、どうしよ。これは……」
「だな。これは長いな」
タクトと二人して顔を見合わせ、ため息を吐いた。
「じゃ、オレたちはオヤツでも食べよっか!」
「おう! ラキはそこにいろよ?!」
聞こえたんだか聞こえてないんだか、生返事をもらってその場を離れると、手近なカフェでおやつタイムを楽しむことにした。
展示サンプルに興味津々なタクトを引っ張って店内に入ると、オレは早々にメニュー表を最後までめくった。だって、飲み物くらいしか無理だろう。何か食べたら昼食が食べられないだろうし。
「うわ、すげえな! さっき店の前にあったのと同じだ! シャシン、すげえ!」
妙な所に感動しているタクトに、念のために伝えておく。
「これは実物写真だけど、店の前にあったのはサンプルだからね? 食べられないからね?」
「どういうことだ? 腐ってんのか?」
「食べものじゃないの! 触ったら固いよ?」
驚愕の表情で席を立とうとするタクトを押しとどめ、メニュー表を押しつける。
「何か食べたいんじゃないの?! ちゃんとお昼ご飯のこと考えて頼んでね!」
「何で今から昼のことを考える必要があるんだよ?」
心底不思議そうな顔に腹が立つ。
ひとまず、テーブル山盛りに頼まれるのはご免なので、飲み物以外の注文は1品に限定しておく。
「1品?! そんな、そんな……」
悲壮な顔でメニューとにらめっこしていたタクトだけど、案外早く注文を決めたよう。
「決まった? じゃあ――すみません、オレはこの蜂蜜オレンジティーで!」
ちょうど通りかかった店員さんに指し示すと、タクトが満面の笑みでメニューを指さした。
「俺はこれ! 店の前にあったやつだよな?」
「えっ、あ、はい……メガスモウパフェですね??」
「えっ?? ちょ、ちょっと?! 6~7人向けって書いてあるじゃない!」
そんなもの、そもそも視界に入ってなかったよ! こんなタクト向けのものがカフェにあったなんて……!!
「さすがに多すぎるでしょ?!」
「そうか? じゃあお前も食えばいいんじゃねえ?」
「オレ、オレは――」
思わぬ提案に、言葉に詰まってメガスモウパフェを見つめた。
憧れのメガスモウパフェ。
蘇る過去の記憶……若かりし頃には高額で、成人してからは頼みづらい究極の1品。
今は、今なら……!!
「それでお願いします!!」
オレは、欲求のままに力強く頷いたのだった。
……凄かった。
想像よりもきらびやかで、美しくて、そしてボリューム感。
そして、美味しかった。アイスやクリームもさることながら、フルーツの甘さにシビれた。
向こうの薄味果物に慣れた口には、まるで妖精界や聖域の果物のよう。
日本にいた頃には考えていなかったな……こんなに、甘くて美味しいフルーツは普通じゃないってこと。
美味い美味いとみるみる減っていくパフェに慌て、負けじと頬張ったのが悪かった。
すっかり冷え切った身体がカタカタ震え、タクトに抱えられていてもまだ寒い。
「さ、寒い……早く外に行こう!」
空調の利いた店内よりも、外の日だまりの方が暖かいに違いない。
「いいけど、ラキは? つうか、腹に手ぇ入れんな、冷てえわ!」
そうだった! 二人してさっきのホームセンターへ戻ったものの、彫像と化していると思われたラキがいない。
「あれ? どこ行ったんだろ」
店内をぐるっと見て回ったはずなのに、見当たらない。
そんな活発に動き回るとも思えないのだけど。
「まさか、攫われ――はしないか」
「お前じゃあるまいし。そもそも攫ったヤツが気の毒だわ」
タクトが大笑いしているけど、どこからも狙撃されないということは、近くに居ないんだろう。
「うーん、騒ぎになりそうだから早く見つけたいんだけど」
――ラピス、探してあげるの!
「う、うん。でも隠密を忘れないでね! それ以外の魔法は絶対使っちゃダメだよ?!」
下手したらテロと思われて国際問題に……!
もしくは姿を見られれば、動くぬいぐるみスクープになっちゃう。
『ぼくが出られたら早いのにね』
シロが残念そうにオレの中で項垂れている。
さすがにこのサイズの大型犬が歩いていたら、警察沙汰になっちゃうかもだからね。
「山に戻ったら、いっぱい遊んでいいからね!」
『うん! ぼく、今なら悪い鹿さんと豚さんやっつけられるよ!』
途端に元気になったシロが、得意げにしっぽを振っているのが分かる。
悪い鹿と豚……ああ、畑を荒らす鹿とイノシシには悩まされていたから。
シロ、子犬だったもんねえ。
まだまだ幼さの残っていたシロを思い浮かべ、ほっこり頬を緩めた。
――ユータ、いたの。外で人に捕まってるみたいだから、ラピス倒してあげてもいいの。
そんなほっこり感をぶち壊すラピス報告に、慌てて首を振った。
「待って待って! 大丈夫、この世界でラキが危ないことってそうそうないから!」
むしろ相手は危ない。それはもう、非常に危ない。
傷害事件が発生する前に、とオレたちは息せき切って現場へと駆けつけたのだった。
「――またまたぁ、実際何歳なの? どこ住み? 芸能人?」
瞳を輝かせた女の子が、ぐいっと身を乗り出した。
「ふふ、じゃあ、君は何歳~? 僕はハイカリクっていうずーっと遠い場所に住んでるよ~」
「わ! やっぱり外国なんだ! 日本語すっごい上手だね?! 私、私はぁ……まあ、君より年上かなって思うけど、いいじゃん、そんなこと! で、いくつなの?」
「う~ん、いくつに見える~?」
「はいはい! 私14歳くらいだと思う! 弟の身長がこのくらいだし」
「え、中学生? 身長的にはそうかもだけど……でも、弟くん、こんな感じじゃないでしょ?」
「それはそう! もしかして君って背が低め? あ、ごめんね! 中高生だったらこれから伸びるし、全然気にする所じゃないから!」
「うそ、だったら案外年が近かったりしてー?!」
きゃあっと華やかな声が上がった。
「…………」
オレとタクトは、無言で顔を見合わせる。
何やってんだろう。
確かに、捕まってはいるけれども。
取り囲む女の子たちに文字通り服の裾を掴まれて、逃れられずに困惑しているよう。
ひとまず、ある意味騒ぎにはなっているけど、これなら大丈夫。
頭の良いラキは返答が上手だ。少しずつこの世界の常識を探りながら、不自然でない回答を選んでいるのが分かる。
「すげえな、ラキを捕まえるとか」
「怖い物知らずって中々無謀なことをするよね」
日本において、美少年に絡んで危険な目に遭うという認識は欠片もないのだろう。
それも、彼女らは好意的に絡んでいるようだし。
案の定彼女らの会話から大体の年齢を察したらしいラキが、穏やかな仮面の下で驚愕しているのが分かる。
そうだろうな。クラスメイトと同じくらいだと思っていただろうから。
あのね、その人たちきっと高校生だから。日本だとみんなそんな感じだから。
ふいに、ラキの視線がこちらを捉えた。
「じゃあ、仲間が来たから~」
さりげなく彼女らの手を振りほどいて、ラキがスタスタこちらへやってくる。
「え……え、どこ行くの? ちょっと待っ――」
「あっ見て?! ほら、やっぱり何かのグループなんだよ!」
「仲間って言ったもん! ねえ、ねえ待ってよ!」
やってくるのはいいんだけど……彼女らも慌てて駆け寄ってくるんだけど。
そして、オレたちを視界に入れた瞳は、さらに興奮してギラついている。
「ええ?! この子は日本人よね? 可愛いぃ!」
「ねえそれ、地毛? 君も外国から来たの? タイプが違うけど格好いいね!」
オレたちへ伸ばされる手に逃げようか、どうしようか、と戸惑った時、スッと目の前に壁ができた。
「触らないでくれる~? これ、僕の仲間だから~」
ひやり、と漂った刹那の気配。
え、と戸惑った彼女らの手が止まった。
「何……? なんか、今……。あの、別に何も悪いことしないよ? そんなガードしなくても!」
「も、もしかしてさ、ヤキモチとか?! 大丈夫だってば、私ら君狙いだし!」
「てかさ、私らの方が年上でしょ? その態度はいただけないよ~?」
誤魔化すように大仰に笑った声が、上擦っている。一瞬でも、年下の少年に恐怖を感じたことが納得いかないのだろうか。
「そうそう! だからさ、一緒に写真撮ろ? それで許してあげちゃう!」
何かを振り切るように明るい声を上げ、彼女らが『それはいい』とばかりにオレたちへ近付いた。
「触るな、って言ったよね~?」
きっと、いつもの笑みを浮かべている。
誰がどう見ても優しげで、穏やかそうな笑み。
だけど、誰がどう見ても、ぞわりと肌の粟立つ微笑み。
ひゅっと息を呑み、彼女らの顔から表情が消えた。
「なのにその態度、いただけないな~? まあ……今すぐここから立ち去るなら、許してあげてもいいよ~?」
……大丈夫だろうか。失神しやしないだろうか。
とは言え、オレもどうすることもできない。ラキが禁止したことを、もう一度目の前でやろうとするなんて……タクトでもあんまりしないことを……。
はあ、とラキのため息が聞こえたと同時、ハッとした彼女らは互いを引っ張り合うように、一塊になって通りの向こうへ消えていった。
それを見るでもなくさっさと踵を返し、ラキはオレたちをぐいぐい押してその場を離れたのだった。
「……おいおい、なんであんな態度取ったんだよ。怖がってたじゃねえか、可哀想だろ」
再びショッピングモールへ戻ったオレたちは、またもやカフェに居座る羽目になった。
眉根を寄せるタクトに、ラキが肩をすくめる。
「タクト、あの子たちいくつだと思う?」
「そりゃ、俺らと同じくらいじゃねえの?」
うん、やっぱりそういう認識になるよね。
「僕もそう思った~。むしろ言動が幼いから、もしかしたら見た目は大きいけど、もっと小さい子かもしれないと思ったわけ~」
あ、だから大人しく捕まえられていたのか。ラキにしては珍しいなと思ったんだ。
こっちの世界だと、人間の大きさにそんなにバリエーションないから。
あと、日常に生死がかかってないから、みんなのんびり大きくなるんだよ。
むしろ、向こうの世界の子どもたちが精神的に大人すぎるんだよ。
「――は?! 17歳くらい? 嘘だろ?! それ大人じゃねえ?!」
「でしょ~、ビックリしたよね~」
彼女らの年齢を聞いたタクトも、仰天してのけ反っている。
「で、でも! メリーメリー先生みたいな人だっているじゃない」
何となく、日本人代表として反論せねばならない気がしてそう言うと、ぬるい視線が返ってきた。
「だからさ、先生って大人か? そういうことだと思うぜ?」
「僕らがお世話してるとこあるよね~?」
そ、それは……間違いなくそう。
うん、オレはああはならないように気をつけよう。
ちなみに、ラキが失踪したのは向こうの通りに手芸店が見えたせいらしい。
「色々な道具がありそうだったのに~」
ちょうど店へ入る前に捕まったらしいので、ある意味女子高生たちグッジョブだ。
まさか、手芸店まで守備範囲内だと思わなかった。
「この国はいいね~。色々な店が系統だてて細かく分かれてる~」
ほう、と吐息を漏らしたラキは、まだまだこの世界を満喫したいらしい。
「俺も、ここ美味いもんいっぱいあるからな! まだまだ帰る方法なくていい!」
「そ、そう……?」
気に入ってくれるのは、嬉しいけれど。
だけど、もしかして二人がここを気に入っているから、夢が覚めないのかもしれない、なんて思った。
そして、オレは羨ましがったラキのせいで、本日二回目のメガスモウパフェを食べる羽目になったのだった。




