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もふもふを知らなかったら人生の半分は無駄にしていた 【閑話・小話集】  作者: ひつじのはね


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限定公開小話集④

カクヨムさんのサポーターさん向け限定公開SS、リクエスト小話分4話溜まりましたのでTwitterアンケートの上、選ばれた一つを全体公開!


今回はこちら!

Twitterのちょっとしたアンケートから誕生したSSです!

『タクトにラキのことをインタビュー!SS』


授業が終わった途端に教室を飛び出したタクトは、名を呼ばれた気がして振り返った。

「あ、あの! 待って!」

やはり、呼ばれていたらしい。同学年と思しき少女が、髪を左右に揺らしながら駆けてくる。

意を決したような表情、そして紅潮した頬を認めて、ははあ、とピンときたタクトがやっと足を止めた。

「タクト、くん!」

「おう」

追いついたことに安堵した様子で、少女は息を弾ませタクトを見上げた。

「その……今、いいかな?」

「いいぜ。……まあ、どっちのことかによるけど」

少女はぼそりと呟かれた後半に首を傾げ、歩き出したタクトを慌てて追った。


そのまま教室に戻ったタクトは、興味深そうに教室を眺める少女に、自分の前の席を勧めた。

「で? 何を聞きてえの?」

跨るように座ったタクトは、椅子の背に腕を組んで顎を乗せた。

机をひとつ挟み、どぎまぎしながら椅子に掛けた少女が、きょとんとする。

「え、えーと?」

「俺、仲いいけどさ、ユータのことは話さねえよ? ラキならいいぜ!」

にやっと笑うと、つられるように少女の頬が染まる。

「う、うん! じゃあ、ラキくんのこと教えてほしい!」

「おう、できれば弱みとか一緒に探ろうぜ! 何聞きてえ?」


「えっと、ラキくんと一緒の部屋だよね! いつも何してるの?」

「ラキは部屋にいりゃずーーーっと加工してるぞ。あれがそのまま金になるってズルくねえ? 俺だってずっと鍛錬してるけどさあ、全然金にならねえのに!」

「ふふっ、やっぱりそうなんだ。じゃあ、好きなものとか嫌いな物とか、そういうのは? 同室だと、そういう好みなんかもやっぱり似るのかな?」

言われたタクトが盛大に顔をしかめた。

「似るかよ! 言っとくけどユータだって一緒なんだからな、俺ら別に似てねえだろ。ラキの好きなもんなんて、そりゃ加工だし、素材だし、全然違ーよ! 俺は金使うのもほぼ食いモンだし。あいつなんてさ、素材買いすぎて昼飯抜いたりするんだぜ、信じらんねえ!」


そこでふと真面目な顔をして、じっと少女を見つめた。

「なあ、嫌いなモンって何だと思う?」

「――あ、え……っと。勉強、でしょ?」

「それ、俺の嫌いなモンだろ! 俺が聞いてどうすんだよ! ラキのだっつうの!!」

赤面する少女に呆れた視線を寄越し、何か情報はないかと催促する。

「ど、どうかな? ラキくんって涼しい顔して結構何でもできるし、あんまり苦手なものってなさそう……あ」

何か思い当たった顔をした少女に、タクトが目を輝かせて身を乗り出した。

「う、ううん、しつこいと嫌われてたなあと思っただけ。女の子の話!」

「あー、あいつモテるし。お前も、あんま追い回さねえほうがいいと思うぜ」

「そ、そうだね! だけどタクトくんだってそうだよね?」

「何が?」

「タクトくんだってカッコいいしモテるし、追い回されたくないよねってこと!」

一息で言い切った少女は、ちらりとタクトを窺った。


「は? そんなの言われたことねえわ。俺、追い回されたことねえしな」

タクトはむすっと唇を尖らせて、不服そうな顔をする。

「……それは、その、傍らから感じる視線が怖いっていうかなんて言うか」

「どういうことだよ」

「ううん……そうだ、タクトくんとラキくんって大体一緒にいるよね! ユータくんはあんまり学校で見られないんだけど」

「そうか? 別に一緒にいるつもりはねえけど、パーティメンバーだしな」

「ずっといるよ! だったら、一緒にいない時間ってある? 帰りはすぐいなくなっちゃうし」


そうだったろうか。

言われてみれば、タクトが授業が終わる頃にふらっとラキが現れて、一緒にいることが多い気がする。ユータがいればユータのところへ集合するし、それはもう、何となくの習性だ。

「んーユータは大体いねえからいいとして、今週だとラキの加工関連の授業が――」

「なるほど、その時間帯は一人ってことね!」

「多分な」

メモまで取っている少女に感心していると、顔を上げた少女がひと際真剣な顔をした。

「好きな女の子のタイプとか……」

「知るわけねえだろ!」

「だよね! だから参考までにタクトくんが思う、好きになりそうな女の子像を教えて! あくまでタクトくんの個人的主観でいいの!! 参考までに!!」


ぎらつく瞳に気圧されつつ、タクトは真面目に考えた。

「って言われてもな……。あいつがそんな話してんの聞いたことねえし。あ、髪は綺麗な方がいいんじゃねえ? よくユータの髪を触るから、好きなんじゃね? 髪。あと頬も触るけど……あれはもっちもちで気持ちいいから俺もやる」

「タクトくんも肌が綺麗なのが好きってこと? 髪も?」

「ユータの頬はすげーよ、今度お前も触ってみろよ。髪もあいつのはさらっさらで柔らかくて……あ、女の子の場合? う……そりゃ、そういうの、いいかもしれねえけど。俺、あんまそういうの、普段考えてねえっつうか」

ぶわっと赤面したタクトを真正面から見つめ、少女は瞬き一つせずに慈母のような微笑みを浮かべた。


「んふふふ……つまりタクトくんは……じゃなくてラキくんとタクトくんは、今のところ気になる女の子はいなくって、理想像もあんまりないってことよね?」

ずい、と身を乗り出した少女に戸惑って、タクトが少し身を引いた。なぜだろう、捕食者に狙われているような、そんな気がして。

「そ、うなんじゃね? だけど、あいつ秘密主義だから俺分かんねえ。あいつの好みとか、聞いてみてやろうか?」

「ううん、いいの。私はタクトくんの――」

ふいに途切れた言葉にタクトが首を傾げた時、ふっとタクトの上に影が落ちた。


二人が向かい合った机に、年齢のわりに長い指がしなやかに着地して、両手のひらを落ち着けた。

背中に圧迫感を感じつつ、タクトが真上を見上げる。

「お、おー……いいところに……?」

タクトに覆いかぶさるように、長い腕を見せつけるかのように机に手をついたラキが、にっこり微笑んだ。

「何の話してるの~?」

「べ、別に、マズイこと言ってねえ! 普通の! 普通の話!!」

「ふうん? 僕の好みとか~?」

聞こえてんじゃねえか、と内心毒づきながら、タクトは前で固まっている少女に助太刀してやろうと意気込んだ。


「ま、まあな! コイバナのひとつやふたつ、するだろ! 実際お前はさ、どんな子好きなんだよ?!」

言った途端、タクトは思った。マズい、と。

何がマズかったのか分からないけれど、野生の本能が警鐘を鳴らしている。危機察知能力が今すぐ逃げろと訴えている。

だけど、悲しいかな、タクトは既にラキのカゴの中に囚われていた。

「僕の好み、そうだね~。ユータみたいな髪、いいよね~あのさらもちほっぺも、好きだよ~」

そこも聞いてたのかよ、と密かに怯えつつ、マズいことを言ってなかったか必死に記憶を手繰る。

「だけど、おかしいな~? それだと僕、タクトの髪も触るから~、タクトの髪も好きってことになるね~? あれ~言われてみればその寝癖みたいな髪も、暑苦しい色も、夏場は寄りたくない感じも、好きってことなのかもね~?」

「悪口じゃねえか!」

するり、とわざとらしく撫でる手を払って睨み上げる。


「そんなことないよ~? 勝手に僕のスケジュールを教えたり、好みを教えようとしたりする迂闊なところとか――」

……怒ってる。これは、怒ってる。

にっこり微笑む優し気な顔から、冷や冷やする気配が漂ってくる。

「あー、その、そんなマズイこと言ってねえから……! な、なあ、そうだろ――あれ?!」

視線をやったタクトは、そこにいたはずの少女が影も形もなくなっていることに唖然とした。どうしたことだ、せっかく想い人が現れたというのに。

「……お前、そんな態度見せるから嫌われたんじゃね? せっかくさあ……」

「いいよ。まったく、油断も隙も無いんだから~」

「だから、大したことしゃべってねえっての!」

「うん、まあ、そっちじゃないけど~。帰ろうか~」


やっと体を引いたラキから冷えた気配が遠ざかったことに安堵して、タクトも立ち上がって伸びをした。

「おう。なんか、考えたら俺損な役回りじゃねえ? お前らの間に挟まった被害者じゃねえか!」

「……ふふ。そうかもね~」

言いながら、ラキは考えていた。今週の授業は変更しておかないとな、なんて。

おかしいな、もっとインタビュー風にしようと思ったのに。

そして、全然ラキのこと聞き出せなかった……。

ラキはまだまだ、3人の間に誰も入れたくないようで。


良かったら小話リクエスト下さいね~!

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― 新着の感想 ―
[良い点] ラキくんが可愛すぎる〜!!! [一言] いつも更新楽しみにしています! ユータが男から告白されて、デートするっていう話も読んでみたいです! ユータは、勇気出してくれたし、一回ぐらいはって…
[一言] タクトー! 春はまだ遠いね(^_^;
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