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もふもふを知らなかったら人生の半分は無駄にしていた 【閑話・小話集】  作者: ひつじのはね


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恋愛対象?! アンケートお礼SS

Twitterでのアンケート『もふしら大人男性シングル組で「恋愛対象」として選ぶなら誰ですか?年齢は各自お好みに合わせ調整可! 』にて、選ばれたのは……?!

私はめちゃくちゃ意外でしたよ!

オレはばーんと部屋のドアを開け放って、素早く左右に視線を走らせる。

……いない。

気配を探りながら廊下を走っていると、階段を駆け下りようとしたところで、階下の扉を開けた執事さんを見つけた。

「あ! 執事さん!!」

「ユータ様――っ? 危ないですから、飛び降りてはいけませんと言ったでしょう。どうされました?」

危なくないよ、執事さんのところへ飛び降りたんだし。そもそもオレ、このくらいの高さなら平気だと思うけど。


しっかり抱きとめてくれた腕の中から、にんまり笑みを浮かべてしがみつく。

「あのね! いいこと聞いちゃったから、教えてあげようと思って!」

「いいこと、ですか?」

不思議そうな銀灰色の瞳が、ぱちりと瞬いた。

「うん、いいこと! ここでは何だから……」

くふふっと声を潜め、さあ執事さんのお部屋へ行こうと急かす。

「ここで構いませんが……」

「だめ! 内緒の話なの! オレの部屋でもいいよ!」

執事さんが、どうやってオレを下ろそうか逡巡している気がする。

いやいや、下りないよ! せっかく捕まえたんだから。


結局折れた執事さんが、オレを抱っこしたままお部屋まで連れて来てくれた。

ここまで来れば大丈夫。するりと滑り降りたオレは、急いで扉を閉めた。

「ユータ様、私は逃げませんよ」

椅子か何かを置いて塞ごうかと思案していると、執事さんがそんなことを言って苦笑する。

それはどうだか。執事さん、割とすぐ逃げると思うんだけど。

胡乱な視線を感じ取ったか、執事さんは眉尻を下げて小首を傾げた。

「……では、私も休憩にしましょう。せっかくですからお茶でも入れましょうか」

「うん! そうしよう! オレ、クッキーなら持ってるよ」

いそいそ小テーブルを引っ張ってくると、二人で座る場所がないのでベッドに腰かけた。


改めて見回すと、執事さんの部屋はとても小さい。オレの部屋の4分の1以下だろう。

「どうして小さいお部屋にしたの? もう少し広くてもいいと思うんだけど」

執事さんを隅に追いやれる人などいないので、これは多分彼が好んでこの部屋を選んだのだろう。

「広さはいりませんよ、寝るだけですから」

そうなんだろうな、と納得するしかないどシンプルな内装。ベッド、サイドテーブル、クローゼットと机の必要最低限の家具。

戸棚があるのだけが、特徴かもしれない。


執事さんの部屋は、当たり前だけど執事さんの匂いがする。少しウッディーな深い香り。

すん、と鼻を鳴らすと、ジャケットを脱いだ執事さんが振り返った。

「すみません、人を入れることがないもので……何か臭いますか?」

申し訳なさそうな執事さんに、慌てて首を振る。

「そんなことない! いい香りがするよ!」

軽く吹き出した執事さんが、素早く口元を押さえて笑みを隠した。

「……いい香りはしませんよ? 男一人の部屋ですから」

「するよ? 男の人もいい匂いするよ! 執事さんは森みたいで、カロルス様はお日様みたいな匂い! セデス兄さんはお布団みたいかな!」

「ふふ、そうですか? ありがとうございます――なるほど、ユータ様もいい香りがします」

すっと身をかがめた執事さんが、オレの髪をすくって顔を寄せた。


スマートだ。何ともスマートな仕草。

カロルス様もセデス兄さんも、オレのお腹に顔を突っ込んで匂いを嗅ぐのに。主におやつを作った後。

何ならエリーシャ様は何も作ってない時でもそうする。

「本当? オレ、今日は何も作ってないけど……」

「そういう香りではないですよ、柔らかくて、温かい香りです……少し、罪悪感が湧くような」

なぜ罪悪感? 小さな呟きを拾って、ちょっと首を傾げた。

「ああ、ユータ様ここにはお砂糖がないのですが……」

「大丈夫! お砂糖もはちみつもいっぱい持ってるよ!」

「そうですか、それなら大丈夫ですね」


そう言いながら戸棚からティーポットとカップを取り出して、机に置いた。戸棚を覗き込むと、他にはグラスやお酒だろう小瓶がたくさん並んでいる。執事さんは、部屋でお酒を飲むのか。

ちなみにここにキッチンはないから、執事さんは魔法で紅茶を入れてくれている。さすが、Aランク。

「それで、私にお話というのは?」

きょろきょろしていると、ことん、とサイドテーブルに紅茶が置かれた。

鼻先をふわりといい香りが掠める。

「そう! あのね、執事さんもここ座って!」

まあ、これオレのベッドじゃないけども。

ぽんぽんと隣を叩くと、苦笑して腰を下ろしてくれた。


オレはうきうきとその穏やかな顔を見上げ、声を潜めてとっておきの話を口にする。

「あのね! 今日学校でそういう話をしているのを聞いて! あの、えっと、誰がカッコイイと思うかっていうような……そ、それでね! じゃあロクサレンだったら誰を恋人にしたいって聞いてみたんだよ! だけどカロルス様はエリーシャ様がいるでしょう? だから、カロルス様以外で!」

「……なるほど」

あ、執事さんの笑みが限りなく興味ゼロになってしまった。

「子どもばっかりじゃないよ! 先生もいたし、オレ他の大人にも聞いたんだから!」

「それはそれは」

気のない相槌にムッとしつつ、ぐいと身を乗り出した。


「それでね、誰だと思う? 一番になったの!」

「カロルス様以外ですか。ではセデス様とか?」

オレは得意満面で首を振った。

「それがね――執事さんなんだよ!!」

やっと言えた秘密に、ぱあっと笑みを浮かべる。

だけど、一方の執事さんは一瞬真顔になって、次に困惑を浮かべた。


「それは……なぜそんなことに」

「なぜって、執事さんがカッコイイからでしょう」

ふう、と溜息まで吐かれて、オレの方が困惑だ。

「ユータ様に取り入ろうとするにも、私を選ぶのは不自然ですし……ロクサレンでの仕事斡旋が狙いとか?」

なんで素直に受け取ってくれないの!


「執事さん、カッコイイんだから! そりゃあモテて当然じゃない?」

ぶつぶつ見当違いのことを言っている執事さんに唇を尖らせると、銀灰色がこちらを向いた。

「ユータ様は価値がありますし、ロクサレンにもあります。そういったとんでもない話を吹き込む輩は、用心した方が――」

「だから! 聞いたのはオレだし答えたのは色んな人! どうして疑うの?」

「いえ、まあ……この年ですからね。さすがにそういった返答にはならないかと」

苦笑した執事さんが、ひとくち紅茶をすすってティーカップを置いた。

と、唐突に部屋が冷えた気がしてオレもカップを置いた。


内緒話をするようにぐっとオレをのぞき込んだ執事さんが、視界いっぱいに映り込む。

「……それに。私は、怖いですから――ね?」

銀灰色の瞳が細くなり、薄い唇がさっきまでの微苦笑とは違う笑みを形作った。

人差し指の背が、ゆっくりオレの頬を撫で上げる。

漂うのは、ぞくりとするような冷たい炎の気配。

「ユータ様も、どうぞお忘れなく」

酷薄な笑みの中に少しだけ混じる温度は、なぜかオレの胸を締め付ける。


オレは離れていこうとする手を両手でつかんで頬に押し付けた。

「うん! 大丈夫、こっちのカッコイイ執事さんもちゃんと覚えてるよ。きっとみんなも、このカッコよさが好きなんだよ!」

かさついた冷たい手に、オレの頬の温度が移っていく。

瞳の氷が、ゆるりと溶けた気がした。

「……怖がってもらおうと、思ったのですが」

今度はオレが、乗り上げるようにして目いっぱいその瞳に映り込む。


小さな両手で冷えた両頬を包み込み、狼狽えて逸らされようとする視線を縫い留める。

「だったら、ごめんね。オレ、執事さん好きだから、怖くないよ」

「怖ければ、好きではなくなるでしょう?」

「ううん。逃げられそうで、追いかけなきゃって思うかな」

――絶句。うん、執事さん絶句している。

珍しいね、そんな顔。

思わずくすくす笑うと、ハッとした執事さんが手元にあった枕を盾にして顔を隠してしまった。


両手に伝わる体温が、じわじわ温かい。

枕の向こう側からは、『ユータ様の方が、怖いです』なんて、小さい声が聞こえたのだった。


アンケート結果は、

1執事さん

2ルー

3アッゼ

4キース

でした! こういうアンケートして!とかあったらお知らせくださいね!

とっても楽しかったです!

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― 新着の感想 ―
[一言] 有難う御座います(*´꒳`*) コレ、カロルス様から話されたら 絶対零度の対応でしたよね(爆笑) グレイさんの…テレ…(*⁰▿⁰*)キチョー! ユータ…恐ろしい子(o^^o)
[一言] ユータに対する甘さ優しさと 逆に厳しいとき敵対者に対する冷たさの ギャップが良いのかと ギャップ萌えですよww
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