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もふもふを知らなかったら人生の半分は無駄にしていた 【閑話・小話集】  作者: ひつじのはね


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節分

2021/2/2 節分閑話


ハイカリクにいる頃の設定です

「ユータ、これをやろう。たくさんもらったから、お裾分けだ」

ムゥちゃんのお水やりをしていたら、大きな手がのしっと頭に乗った。振り返るとテンチョーさんが何かの詰まった袋を差し出している。

「ありがとう! これ、なあに?」

「これは乾燥豆だな。依頼料とは別に持たせてくれたんだよ」

受け取った袋は、乾燥している割にずっしりとしている。こんなにたくさん、もらっちゃっていいんだろうか。

「乾燥豆はなあ……ありがたくはあるんだが、外での依頼ではよく食ってるからこんなにあっても……な」

苦笑したテンチョーさんに、飽きちゃったんだねと笑った。乾燥豆は日持ちがするから便利なんだけど、もどすのが少し手間なので、料理などしない冒険者の人たちはもっぱら炒るだけのようだ。

炒っても美味しいけど……毎度それじゃ、飽きるよね。

「こっちもいるか? 面倒なんで一度にたくさん炒ったのが失敗でな、まだこんなにある」

麻袋みたいな小袋の中には、まだ豆まき2回分くらいの炒り豆が入っていた。ほら、と差し出されるままにぱくっと口へ入れると、カリリとした固い食感と、懐かしい香ばしさが広がった。

そっか、節分かぁ……。

「おいしいよ!」

「マズくはないが……こんなにはいらんなあ」

「炒ってあるならお料理に使えるよ?」

乾燥豆よりは使いやすいと思うんだ。スープや豆ごはんなら、テンチョーさんやアレックスさんでも難しくないんじゃないかな。

「助かる、アレックスに伝えておくよ」

どうやらお料理担当はアレックスさんらしい。お豆をいただいたし、今度調味料とか分けてあげようかな。


「……節分。この世界にいる鬼ってどんなのだろうね」

いかにも和風なあの行事がとても懐かしく感じた。この世界ではいつが節分なのかも分からないけど……。

――ユータ、寂しいの?

心配気に覗き込む群青の瞳に、オレはぼうっと考えを巡らせていた視線を戻して首を振った。

「ううん! 違うよ、いつが節分か分からないんだし、厄払いと幸運を呼ぶ行事なんだったら、いつやってもいいよね!」

だから、今日やってもいいよね! オレはにっこり笑って両手でラピスを包んだ。

「みんなでやろっか、豆まき!」

平たくなっていたラピスの大きな耳がぴょんと立ち上がった。

「きゅ!」

豆まきが何かも分かっていないけれど、くるくると喜んで舞う姿にくすっと笑う。

『豆まき、ぼく大好きだよ!』

じっとオレを見つめていた水色の瞳が、ぱっと笑顔になった。

大丈夫だよ、だって豆まきをしたい人たちはこっちと、あとはオレの中にいるんだもの。


「ただいまー! あ、ユータやっぱりこっちにいたな!」

「これ、何の匂い~?」

秘密基地は、ただいまの場所なんだね。オレは賑やかに帰ってきた2人を振り返って、おかえり、と言った。

「何つくっ………豆?」

うきうきとオレの手元を覗き込んだタクトが、あからさまにガッカリしている。ピンと立っていた耳とぶんぶん振られていたしっぽがすうっと垂れる……そんな幻覚が見えた。

「ふふっ! 豆だよ。だけどね、これは豆まきするためなんだよ」

「「豆まき~?」」

不思議そうな2人に、オレは豆まきについて説明した。懐かしく感じる伝統の行事。まさか、よその世界で豆を蒔くことがあるなんて。神妙な顔で聞いていた2人の目が輝いていて、オレもふわっと微笑んだ。


――ラピス部隊! これは重要任務なの! 飛び交う豆を集める……これは我らにしかできない特殊任務なの! ……ちなみに、食べても許されるの! やっとくなの!

「「「「きゅーーっ!!」」」」

役得、と言いたいらしい。全ラピス部隊の瞳が輝いた。重要任務に胸躍らせているようだ。

それにしてもこれだけ管狐が揃うと壮観だね。一面のもふもふしっぽが揺れ動く様は、見ているだけで心地良い。本当はお外でやりたいけど、みんなが一緒に参加するなら屋内の方がいいだろう。なので、秘密基地の特訓に使っている広場に集まった。

『落ちた分は任せてちょうだい! 集めはしないけどね!』

『全部俺様のものだー! 食べ放題!』

『いっぱいたえうのー!』

チュー助たちやモモも食う気十分で待機している。ただ、きっと踏まれるからモモと行動を共にしてもらおうかな! ひとまず、無駄になる豆はなさそうだ。

『ぼくもいっぱい食べる! ぼく鬼! 鬼になるからいっぱい投げてー!』

シロは効率よくたくさん食べる方法を思いついたようだ。鬼役を買って出てくれたので、お手製の鬼面を取り付けた。

一生懸命豆を一列に並べている蘇芳は、見なかったことにしよう。


「じゃあみんな、用意はいい? いくよー!」

「「「鬼はー外! 福はー内」」」

蒔かれた豆と同時に管狐が飛び交い、飛んでくる豆を全部食べようと鬼が踊り狂った。

「あいてっ! ユータ、俺狙っただろ!」

「狙ってな……うわっ!」

タクトの力で投げられた豆なんて、おふざけだって受けたくない! ひょいと避けた豆が、スコンとラキの後頭部を直撃した。

「いっっったぁ~~~!! 」

あ、やべえ。あからさまにそんな顔をしたタクトが、一目散に距離を取った。

「逃がさないから~~!」

ラキの鋭い瞳がタクトを追う。豆をピンッと指で真上へ弾くと、射撃手の顔になって目を細めた。

パシュッ!

「いってーー!! ずるい! お前、それずるいー!!」

遠くでタクトの悲鳴が上がった。風の射撃魔法を使った豆射撃……無駄に……本当に無駄に器用だ。豆を潰さず高威力で遠方まで届ける――ああ、こんなに無駄な才能の使い方があるだろうか。

「お返しだー!!」

懲りないタクトが、こっちは純粋なパワーでもって散弾を放った……オレも当たるんですけど!!

『ユータ、今日はここに――ぎゃーーー?!』

流れ弾を避けようとした時、目の前に光球が浮かんだ。

「あ……チル爺!」

ぼぼっ! とヒゲを貫いた豆が飛んでいく。チル爺、おひげでもっふりしているけど、本体は小さいんだ! 当たらなくて良かったね……。


ぺちっぺちぺちっ!

「な、な、な、何事?!」

今度は下方から飛んで来た豆がチル爺に当たった。軽い衝撃に、チル爺がきょろきょろしている。

蘇芳、光って目立つからって妖精さんに豆を投げちゃいけません……。

淡々とマイペースに豆を撒いている蘇芳を抱き上げ、オレは段々激しくなる豆まき(?)から避難した。


タクトの散弾とラキの精密射撃が飛び交い、それを追う管狐弾が高速で通り過ぎる。どうやら参加したくなったらしい管狐たちがしっぽで豆を弾いて打ち返し、訓練場内はありとあらゆる角度から豆が襲う戦場になっていた。

――いい訓練なの! これはいいの! 一発も受けずに躱しきるの!

鬼軍曹は不敵な笑みを浮かべて戦場を華麗に舞っているし――

『うふふふ、食べ放題ねぇ。たまにはこういうのもいいわ』

『アゲハ! そっち行ったぞ! 俺様今もうお手々いっぱい!』

「おやぶ、みてー! あえは、とったぁ!」

食べ専門のちびっ子組は平和な食べ放題をしている。

『ちょっと! 鬼はぼくだよ! もっとぼくに投げて!』

そして、余所へ飛んでいく豆まで追いかける鬼が、風のように走り抜けていた。

「ピッ!」

ティアはこの騒動にも我関せずと、満足そうにオレの手から豆をついばんでいる。


『たのしそうー』

『でも、あぶないねー』

『おいしー』

いつの間にかオレの側にいた妖精トリオが、両手で豆を掴んでポリポリと囓っていた。

なんだか、ちょっと思ってたのと違う豆まきになっちゃったけど、これはこれで厄払いになりそうだ。そろそろ豆も尽きる頃だろう。

全力で豆まきを楽しむみんなに、オレはくすっと笑って再び駆けだした。きっと、これなら幸運もいっぱいだ。


『ちょーーっ! 誰か! わしに状況を説明してくれんかのーっ?!』

わたわたと戦場で右往左往するチル爺に、蘇芳の投げた豆がまたぺちっと当たった。





豆まきの豆、残ったらごはんと炊いたりすると案外おいしいですよ。


バレンタインのバーチャルチョコ、たくさんありがとうございました!

びっくりするぐらいいろんなキャラにばらついていて、マイナーキャラも愛されているんだなあと感動しました!

Twitterの方で各キャラからのお返事は「#chocobox_sheepswing」で見られます!

文字数制限がきついのと慌てて返しているので文章がちょっとな部分もありますが…

あと、バレンタインまでまだまだ受付中~!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新、お疲れ様ですm(_ _)m チル爺、安定の放置ですねd(*´ェ`*)
[一言] 毎年行っていた豆まき行事がコロナで中止になりつまらなかったのですが ユウタちゃん達が代わりにしてくれて 自分も参加したつもりで楽しめました ありがとう(^人^)
[一言] お疲れ様ですm(*_ _)m ちる爺かわいそう… 蘇芳ちゃん、やめたげて?
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