今年の魔物パーティ
2020/10/29 ハッピーハロウィン!
もふしら記憶力テスト!!みたいな側面が(笑)人物表は本編の方にありますよ!
「悩ましい……どうしようかしら。困ったわ……」
「もう日が迫ってますし、本当に困りましたね……」
何やら深刻な表情でエリーシャ様とマリーさんが額を付き合わせている。この二人がこんなに悩んでいるなんて珍しい。
「どうしたの?」
ことりと首を傾げて見上げると、ごく自然に抱き上げてぎゅうっとされる。オレ、そろそろ大きくなってきたと思うんだけど、豪腕の細腕には関係ないらしい。
「ん~~満たされるわぁ。それがね、次の仮装が決まらなくて……それで悩んでいたのよ」
……仮装? ちょっぴり嫌な予感が胸を掠めつつ、一応聞いてみた。
「仮装ってなんの……?」
「決まってるじゃない、今度の魔物パーティに着ていくユータちゃんの衣装よ!」
やっぱり-! 魔物パーティは楽しいけれど、衣装はソフトなものでお願いしたい。まるでハロウィンのような仮装パーティは、魔物への鎮魂祭が起源となっているそうだ。毎年エリーシャ様たちの気合いの入れようがすごい……普通、そんなに頻繁に衣装変える物じゃないって言ってたよ?
「去年と同じで……」
「「却下」」
ですよね……。でも早めに良い案を出しておかないと、最悪妖精さんなんかにされる恐れがあるんだ。ひらひらミニドレスなんて断固拒否だ!
「白い布かぶってゴーストとか……」
「「却下。ユータちゃんが見えないじゃない」」
別に見えなくていいと思ったんだけど、これはきっと頭にかぶり物をする案も却下だな……。
「もうゾンビとかゴブリンとかでいいんじゃない?」
「「却下!!!」」
二人の強い視線にたじたじする。いいじゃない、ゾンビもゴブリンも簡単だよ……?
何か二人が納得しつつ、オレに被害が少ない衣装がないものかと頭を悩ませる。エリーシャ様たちは毎年同じ衣装なのに、どうしてオレとセデス兄さんだけ……
「そうだ! じゃあカロルス様のやつ! あれがいい!」
狼男みたいな、野性的でカッコイイ衣装。あれならいい! すごく格好良かったもの。
「うーん、そうねぇ……あのままだと肌の露出があるからダメだけど……」
「お揃い……親子狼……素敵です、大きいのが傍らにいるからこそ引き立つ子狼の存在!! いい、いいと思います!!」
マリーさんの台詞にエリーシャ様も瞳を輝かせ、オレはほっと胸をなで下ろした。
ところで、セデス兄さんの衣装はもう決まったんだろうか。
「きゃーーー! こっち向いてぇ! あぁ~~!!」
悶えるエリーシャ様たちに、ちょっぴり笑顔も引きつった。もうそろそろいいでしょう?
「俺と揃いの衣装か! いいじゃねえか」
オレを抱えたカロルス様も、顔いっぱいで笑った。
カロルス様の狼男衣装は上半身ほぼ裸体だけど、オレはダメらしい。そっちの方がカッコイイんじゃないかと思ったけれど、子どもは肌を晒すものじゃないそうだ。
「ぬいぐるみみたいだな。いいじゃねえか、これ」
晒された肌にふわふわ毛皮が心地良いらしい。ぎゅっと両腕でオレを抱え込むと、ぐりぐりと顔をすりつけた。
オレはほとんど着ぐるみ状態で、確かにほとんどぬいぐるみ……正直あんまり格好良くないんじゃないかと思うけど、カロルス様と一緒に居たら、ちょっとはマシに見えるんじゃないだろうか。
「僕も抱っこしたい! ユータこっちおいで!」
「いいの? オレ、狼なんだから、セデス兄さん食べられちゃうよ! ラビーってかわいいんだね!」
きゃっきゃと笑いながらセデス兄さんの腕へ抱えられると、頭の上で揺れる長い耳に手を伸ばした。
「――言わないで……ねえユータ、今度は一緒にお揃いの衣装にしよっか?」
「ううん!」
今年のセデス兄さんの衣装はバニーガー……ううん、ラビーっていううさぎに似た幻獣らしい。長い耳と、まあるいしっぽがかわいい。セデス兄さんは子どもじゃないから肌の露出もOKらしく、毎年割と露出の多い衣装が選ばれているようだ……ただし、結構な確率で女性向けの気が……。
笑顔ですっぱり拒否したオレに、セデス兄さんはがっくりと項垂れた。面倒がって衣装選びをお任せにするからだよ。でも、さすがと言うべきか、エリーシャ様たちの目は確かだ。セデス兄さんはどの衣装もとても美しく着こなしていて、村の人からも大変な人気だ。格好良くはないけど。
「えええ~~!! かわいいっ! なにこれ、かわいいっ!!」
「うわぁ! トトにも着せてみた~い!」
「なんだそれ、犬のぬいぐるみ?」
村の広場でばったり会ったリリアたち3人組は、興味津々でオレの衣装をなで回した。すっかり大きくなった3人は、割と顎を上げて見上げなくてはいけない身長差がついてしまった。
「これ、持って帰りたい!! おこづかいで買ってもいいから~!」
残念ながら、ユータ狼は販売しておりません。ぎゅうぎゅうと抱きしめるリリアに苦笑して、将来エリーシャ様みたいにならないだろうかと不安になった。
「カロルス様とお揃い~? すっごくかわいい!」
オレたちが騒いでいるのを見つけ、エリちゃんが駆けてきた。その手に引かれているのは、アンヌちゃんだろうか。
「うわあ、二人もかわいいね!」
どうやらここもお揃いらしく、白い三角のお耳とふんわり尻尾が愛らしい。アンヌちゃんなんか、連れて帰りたいくらいだ。にこにこするオレに、エリちゃんがうふっと笑った。
「これね、ユータちゃんの以前の衣装を真似っこしたのよ! とってもかわいかったから!」
――じゃあ、ラピスなの! ラピスとお揃いなの!
喜んだラピスがくるくると舞った。
「あのね、カロルスさまね、かっこよかったの! アンヌ、カロルスさますきー!」
どうやらロクサレン家の面々を見に行っていたらしい。二人のほんのり上気した頬は、決してセデス兄さんの影響ではないだろう。
「格好良かったでしょう! オレもカロルス様好きだよ! ほら、お揃い!」
アンヌちゃんはじっとオレを見て、ふわっと首を傾げた。
「おんなじ……? うーんと、ゆーたはかわいいよ!」
ちょっぴり困った顔で言われ若干傷ついたけれど、かわいいからまあいいか。
『かわいいって、あなたとそんなに変わらないでしょ?』
モモの呆れた呟きに、オレの方がお兄さんだよと頬を膨らませた。
「なあ、俺のもいいだろ?」
エリちゃんに衣装を見せびらかしているルッカスは、黒っぽい衣装に白い髪のかつら姿だ。お気に入りのドラゴン衣装は別の兄弟に渡ったのだろうか。
「ヴァンパイア? いいと思うわよ」
さらっと受け流せるエリちゃんが大人対応だ。ヴァンパイア衣装もありなんだったら、来年はそれを提案してみようかな。
「エルベル様のところは、こういうパーティないのかな」
『あっちはあっちで人族の仮装とかやるのかしら?』
それは面白そうだ。あとでお菓子を持って押しかけようと、オレはひそかに笑った。
以前の書籍SS『魔物パーティ』今年も開催されたようです。
ユータはどんな衣装が似合うかな?




